力士だった私は、近頃気がかりな事がある。アマチュア相撲の登録選手が激減している事だ。大相撲界に入門してくる若者の数が減っているのはニュースや新聞等でも報道されているが、アマチュア相撲の登録選手も激減しているのには驚きを隠せなかった。
日本相撲連盟(アマチュア相撲の団体)の競技者登録数は平成10年に7684人だったが、平成20年には4715人。この10年間で、約4割近くも減少した事になる。理由として考えられることは、少子化・他種目への移行等スポーツや趣味の多様化で選択肢が多くなった事などあると思う。
相撲に限らず競技者が減っている種目も沢山ある。アイスホッケーやバレーボールの実業団チームがファンに惜しまれながら消滅した。この十数年のスポーツ界は経済不況等の影響で企業スポーツの根底を揺るがす出来事が多々あり、何度と無く岐路に立たされている。
当然アマチュア相撲の大会も運営が厳しく、中止になる大会も多く深刻な状況だ。アマチュア相撲は各都市で毎月大会があるのだが、大会が開かれたとしても、観客は数十人で他は関係者か家族しかいない状態。選手や関係者も遠くまで行って試合をする費用対効果を考えれば、大会への足は遠のく一方だ。プロ・アマ双方とも減少する力士・選手に頭を悩ませている。
そんな時、相撲関係者の意見はどうだろうか。
先ずプロである大相撲関係者は「(アマで)相撲を取る若者が増えてくれれば、入門者が増えるのに…」と嘆く。一方、アマチュア相撲の関係者は「プロがもっと盛り上がってくれないと相撲をやる子供が増えない」と言う。
これではいつまで経っても他者に依存する形で、歩み寄りも出来ないし、具体的な対策がなされているとは言い難い。平行線のまま先細りが進むばかりだ。
ではどうすれば状況を打開できるのだろうか?
ここは先ず、「憧れの存在」である大相撲力士のアマチュア界での活躍を期待したい。大相撲界は競技者の底辺拡大と最終的な大相撲発展のために、ボランティア、社会貢献を含めて協力して欲しい。そうする事によりアマチュアの選手の増加、大会の観客数も入場料も増し、運営にも光が差してくるのではないだろうか。又、プロ側も底辺拡大が「新弟子増」となるのだから、ここは親方衆も日本全体の相撲文化の為に「一肌脱ぐ」決意をして欲しい。
具体的には、国内の各学校で相撲部が減ってきている現状から、日本相撲協会発で相撲クラブを各地に発足させる事は出来ないだろうか。または、部活動への支援体制を構築するなど、プロ側が「スポンサー」になって先行投資的な感覚でアマチュア支援をしてもらう事は出来ないのだろうか。
日本相撲協会は財団法人として「相撲を広く普及していく」と言う大義名分がある。一言で簡単にすむ問題ではない事は理解しているつもりだ。これには長い年月と粘り強い努力、そして揺ぎ無い信念が必要だろう。大変な事だと痛感する。しかし、後世に相撲文化を継承しなければならない協会としての義務もあるだろう。
21世紀になり変化していくものが多い中で、相撲文化は数々の苦難を乗り越えて歴史、伝統をつないできた。先人の偉大な足跡に私も感謝し、敬服する。だからこそ、もう「プロだ、アマだ」と言っている時代ではないとも思う。同じ「相撲道」発展を目指す仲間ではないか。プライドはかなぐり捨てて、大人の決断を望みたい。
舞の海秀平まいのうみしゅうへい
元力士
1968年2月17日生まれ。日大相撲部にて活躍。山形県の高校教師の内定が決まっていたにもかかわらず、周囲の反対を押し切って、夢であった大相撲入りを決意。新弟子検査基準(当時)の身長に足りなかったため、…
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