私が神戸製鋼でキャプテンに選ばれたのは、入社3年目の時であった。
先輩たちには日本代表がずらりと並び、それも歴代の代表選手の中でも歴史に名を残す方々ばかり。そんな中キャプテンとしてリーダーシップを発揮するために、私は様々なやり方を3年間実践し続けてきたが、最終的にリーダーに一番必要なものは案外シンプルなものであった。
それは、「誰よりも勝つためにラグビーを考えること」、「誰よりも自らが行動で示すこと」であった。考えたことが合っているか、間違っているか、それは問題ではない。個性が強くそれぞれに我流がある人たちが集まると、その方針や考えは一つに纏まることはない。そんな一人一人の個性をどこまで理解し、つなぎ合わせ、最も合理的に目標に近づくかを考えに考え、貫くのである。
一つ何かを伝えると、3つも4つも重ねてそれは違うとなる。そういった時、考え尽くさぬ者はすぐにしどろもどろになるが、その問答の先を100も200も考えておくと、回答には時間を要さずテンポよく理にかなった回答ができるようになる。百戦錬磨の猛者たちのオリジナリティーは、いずれにしても交わることのない個性である。だがそのベテランたちも、私がそこまで考えているのなら一度やってみてやるかとなるのである。
結果を変えるには行動を変えるしかない、目的を達成したということは正しい行動を行ってきたとも言える。しかし達成した目標は勝ち取った時点でまた新しいものに変化する。一つの戦略で勝つと追随するチームはそれを超えるものを開発する、均衡するベスト4のチームがそれぞれに思考を練ると、そのパターンは莫大なものになる。具体的にかつ確信を得るには、そのすべての戦略を考えに考えつくし、その上を行くものを開発し続けなければならないのである。神戸製鋼は7連覇しながらも個々の衰えや世代交代を繰り返し、その王座を守り続けてきた。そこには常に自分たちの実力を数値化し、他のチームを抽象評価するやり方を行ってきたのである。
では我々は勝つために様々な分野において他を圧倒する努力をなぜ継続することができたのか、それは第一に情熱、自覚、そして共感があげられ、その3つのベースがあってこそ誠実さや謙虚さの必要性が見えてくる。そのころから考えに考え貫く習慣が芽生え、確信を持つことができるようになり、適応力や決断力が自然と身についてくるのである。その過程における根幹には強靭な肉体と精神があってこそ全体のバランスを保てるのだと私は経験によって学ぶことができた。
前にも触れたが肉体を鍛える先には必ず、精神や感情の乱れがある。精神や感情にぶれがあるとき怪我や病気に陥ったりする。そんな経験はスポーツをしない皆さんにとっても多少は自覚するところがあると思う。何事においてもうまくいかないときや、限界を感じることがある。それは、それまで経験していない新しいレベルへの挑戦であり、成長の機会である。その難しい状況こそが自分が望んできた一番楽しいことでもあるのだ。成長はオーバーワークとアンダーワークの間の、質と量のバランスが取れた良いトレーニングを行い、良い回復、つまりしっかりとした食事を取り、しっかりとした睡眠を取ることによって生まれるのである。
厳しい状況の時こそ、自分自身の健康を第一に、精神や感情のバランスが整っているかを見つめなおすのである。そして何かが崩れそうになっていることに気づいたら、チャンスが巡ってきたとにんまりと微笑むのである。
大西一平おおにしかずひら
プロラグビーコーチ
1964年生まれ。 大阪工大高で花園優勝。高校卒業後1年間ニュージーランドへラグビー留学。明治大学時代には3年時全国大学選手権ベスト4、4年時にはキャプテンを務め全国大学選手権ベスト8に導く。その後…
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