今シーズンもトーナメントで負けたチームが、新しいキャプテンを選出し、初々しいリーダー達がたくさん生まれている頃だろう。チームによってリーダーの選出方法は異なる。引退する上級生が推薦をする場合や残った次の上級生が決める場合、監督の独断で気に入った選手を人選する場合など。ただ自らが立候補をするというやり方は、ラグビーの場合はほとんど見当たらない。
ラグビーは自我を強く出すと、すぐにその行き過ぎた態度に他の選手たちからの反応がプレーで現れ、自分自身が痛い目に合うこととなる。15人、いやチーム全員のバランスの中に尊敬をもって謙虚に存在してこそ初めて、一体感の中でプレーできる権利を得るのである。ましてやキャプテンになろうともなる人格者は、自ら名乗り出てリーダーになりたいということはまずない。
私も大学、社会人と4年間キャプテンをさせてもらってきた。(この場合も「キャプテンをやった」とは書かない)。明治大学時代はほぼ全寮制というシステムの中でのキャプテンを務め、私生活からグランドまで一日中のすべてのリーダーとなる。12の部屋に8人ずつ、総勢96名ほどの全国から集まった荒くれ者たちで溢れていた。我々のころは上下関係も厳しく、理不尽ないじめやいじりも当たり前であったが、縦社会も厳しさばかりではなく利点も多かった。
縦社会を経験し身に着き役立ったことは、仕事を選ばず役割分担に忠実になること、高効率とリスクを把握しなければ仕事が進まないこと、協調性と調和を保たなければ周りが協力をしないこと、極端ではあるが一人では生きていけない理念を把握できることなどである。すべての常識と基準は自らにあらず規範や気遣い、礼儀作法の基本熟知がこの集団生活の中における上下関係の大切さでもあった。
グランドを離れ各部屋の日常生活はそれぞれに部屋長を作り、その責任を預ける。いくつかの作業を預け、リーダーの資質を読み取り上級生の中から部屋長を決める。リーダーにはサブリーダーを発掘し育成させることも役割の一つとなっていて、先に書いた将来につながる理念を持った上下関係を部屋ごとに遂行していくのである。全員を洞察し、それぞれの個性を把握し、全体の関係性をマッピングし部屋の構成を決める。そんな仕事も私にはチームを推進するにあたり大きな学びとなる一面であった。
私はリーダーを選べと言われると、常に先頭に立って自主性が高く、周りへの気遣いと配慮が行き届き、そして自己犠牲芯が強い人を探す。完ぺきではなくともそのどれかに当てはまる人材が現れたら、リーダーの仕事の一部を任せてみたり、短い時間でよいので発言をさせたりすることで真意を探る。徐々にその候補たちに役割を与えていくことで、組織の中の利害が必然的に構築されることも利点である。
リーダーは自然にできていく場合もあれば、意図的に育成する場合もある。リーダーに求められることは、チームづくりの継続に対する信念を強く持ち、行動を起こせる人材であることは間違いない。生まれた時からのリーダーなど存在はしない、先駆者たちをよく見てその苦労を知り、チームに求められる結果にすべてをささげる覚悟を持たなければならない。リーダーになる前に、リーダーをうまくアシストすること、リーダーを成功させることこそが、リーダーの最初の資質の表れなのかもしれない。
大西一平おおにしかずひら
プロラグビーコーチ
1964年生まれ。 大阪工大高で花園優勝。高校卒業後1年間ニュージーランドへラグビー留学。明治大学時代には3年時全国大学選手権ベスト4、4年時にはキャプテンを務め全国大学選手権ベスト8に導く。その後…
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