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2008年10月20日

コーチという中間管理職の心構え

第6回の続きで、今回は中畑コーチの例を紹介をします。
あくまでも私から見た考えです。

私の一番身近で元チームメイトであった中畑さんはずいぶん参考になり、
私にとっては良い意味での反面教師。

中畑さんは、現ヤンキースの松井選手が巨人軍に入団した時の打撃コーチでした。
あまりにも松井選手にべったりで「松井選手担当」みたいでしたが、
肩書きは巨人軍打撃コーチ。

中畑さんは、自宅にて食事を招待したり、スーツまでプレゼント。
あげくのはてには、
それが美談としてスポーツ新聞にでかでかと掲載されています。

個人的には中畑コーチは「面倒見がよく、太っ腹、豪快、さすがだ」
とは思っていましたが、コーチという立場から見たらどうでしょうか?
少し疑問を持ちます。

よくよく考えると、中畑さんは松井選手ひとりのコーチではありません。
「他の選手の気持ちはどうだろうか?」
そう考えると決して良いわけではないと私は思います。

実は、私は現役時代にある事件をきっかけに
同じような気持ちになったことがあるのです。
江川投手が入団してきた時です。
今でもハッキリと覚えています。

球団代表が言った『君達の力で、彼をエースにしてやってくれ!』という言葉。
私を含む他の選手は『え~!』ですよ。
自分達が入団した時は『自分で這い上がってこい!』だったのに。
どうして、ライバルである人を・・・。とジェラシーを焼いたものでした。
そういった経験から、中畑選手の面倒見の良さというのは
肩書きから見たらまずいのではないかと感じたのです。

投手陣は一年で11~13名です。
全員戦力です。この選手達は平等に扱わなければいけません。

エースという立場の人は当然、
それなりの成績を残してもらわないと困りますが、
他の選手にも、自分の役割があります。
各自がキチンと結果を出してもらわないと、優勝はできないのです。

私はコーチ時代ある選手に言った事があります。
『野球は団体競技。あなたのチームではないです。
あなたはチームの一員なんです。』と。

選手に対する行動として、実際に行った例をひとつあげますと、
選手に対して同じトーンで挨拶をすることです。
ひとりにしたら、必ず全員に同じようにする。

ささいな事ですが、選手はみな敏感です。
自分が現役時代に嫌だった事はやめようと私はコーチになる時に決めました。

私に、憧れのコーチはいるかと聞かれたら、正直いません。
というのも、私自身が理想とするコーチ像そのものがないのです。
誰しも一長一短がありますし、よく考えればそれが個性でもあります。
つまり、「完璧なコーチ」はいるわけが無いと考えています。

監督側に立てば、監督と折り合いがつかなくなります。
本当に「中間管理職」なんだと実感しました。
私なりに出した答えは
『チームが勝つ為には投手コーチとしてどうあるべきか?』
いつもこれを頭に入れコーチ業に専念することが大事だという事です。

次回は、実力・成績というのが当然違う選手達への接し方をご紹介します。
お楽しみに。

角盈男

角盈男

角盈男すみみつお

タレント

1977年、長嶋監督率いる読売ジャイアンツに入団後、新人王、最優秀救援投手に輝く。1989年、日本ハムに移籍。さらに、平成4年にヤクルトへ移籍。野村監督のもと、リーグ優勝で有終の美を飾る。その後、元祖…

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