とある講演先でこんな質問を受けました。
「壁にぶつかったとき、どのようにそれを乗り越えられましたか?」
質問コーナーを設けると、かなり高い確率でこの質問が挙がります。私なりに経験を思い出しながら、そのときどんな考えを持って行動したのかを率直にお話をしています。もちろん、私の話が皆さんにとって、100%当てはまるものではないとも思いますが、ただ、行き詰っているときの考え方の転換になったり、迷っているときの決断の後押しになったり、全て話をそのまま実行するのではなくご自身の中で使える話、使えない話を選んで頂けたらいいなという考えのもと、お話をしています。人の数だけ壁の乗り越え方はあると思います。諦めずに乗り越える努力をするか、乗り越えなくてもいいと判断して回避するかの選択は自由です。しかし、取った方法や選択が、後に後悔を生んだりするからいつもこのテーマで人は悩むのでしょう。「一番正しい壁の乗り越え方とは?」なんて考えているうちに時間が過ぎて、また次の壁に出くわし、常にこれを繰り返しています。だからこの質問はいつの時代も、どんな立場の人でも、どの性別でも、どの年齢でも、出てくるものなのではないでしょうか。
私の持論としては壁にぶつかったときに頑張るのをやめて『回避』という選択をしたとしたら、一度回避したところで壁はまた現れるのですから、初めは苦しくても面と向かって乗り超えていった方がいいと思っています。乗り越えるための方法を、頭を使って考える分経験値がグンっと上がり、自力と自信が身につくからです。次の壁が来れば身についた経験を生かせますし、経験をベースにさらなる応用も利きます。だから私はこれまで『回避』より『越える』方を選択することを心がけてきました。
しかし、壁はそう簡単に越えさせてくれません。私自身、自分の能力に見切りをつけて全てを投げ出して何もしたくないと考えたことも何度もありました。そのとき私はいつもしぶとく心の中に問いかけます。1日で答えは見つからないので、何日も何日も同じことを問いかけます。「自分は本当に100%でぶつかったと言い切れるか?」と。毎日問いかけているうちにある変化が起きてくるのです。とにかく悩み続けて考えるのを止めないことが大事だと思います。
人間は毎日体調が変わり、例えば目覚めがいい朝もあれば、一日中何をしていてもだるい日があります。だるいと感じる日に物事を考えると、どんどんネガティブな方向に考えが引きずられてしまいますが、なんだか脳がすっきりしていて体も軽い日に物事を考えると、重たくのしかかっていた問題が案外簡単に片づけられるかもしれないと、考えまでもが軽くなる感じがするのです。そして数日が経って、何度目かの体が元気な日に吹っ切れるときがやってくるものです。
『心と体はつながっている』とこの連載でも幾度となくお話をしていると思いますが、私自身、切羽詰まった状況におかれてより一層その意味が実感できました。毎日人間は体調も心の動きも変化していて、それを感じ取りながら、同じ考えを繰り返してみる。絶対違う閃きがあります。一つ壁を越えないで逃げてしまうと、逃げる癖がついて、諦めの人生になってしまいます。「自分はまだできるはずだ」と自分を過大評価して、少しだけ自分を信じてみると意外に解決の糸口が見つかることがあります。
先ほども言いましたが、大切なことは考えをやめないこと。
いろんな感覚に敏感であること。
自分の人生を後悔ではなく、やり切ること。
このお話が、皆様のアンテナにピンと引っかかるものがあれば、それを是非行動に移してもらって頑張って頂けたらいいなと願っております。壁は何歳になってもくるぞ。
武田美保たけだみほ
アテネ五輪 シンクロナイズドスイミング 銀メダリスト
アテネ五輪で、立花美哉さんとのデュエットで銀メダルを獲得。また、2001年の世界選手権では金メダルを獲得し、世界の頂点に。オリンピック三大会連続出場し、5つのメダルを獲得。夏季五輪において日本女子歴代…
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