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2006年11月01日

自分らしさの追求

自分らしく生きる…理想として思うところではありますが、なかなか一筋縄ではいかないものです。ともすれば自己流を貫くあまり、人からは疎ましがられたり、自分勝手だと揶揄されたりすることもあるでしょう。また逆に、自分の個性が何であるのかに気づかず、出し方がわからない、あるいは本来あるべき姿ではない自分に無理をしてなろうとして疲れてしまうこともあるでしょう。私自身も、理想を追おうとすると、「こんなにも辛くてしがらみがあるものなのか」と思うときがあります。

ではしかし、人間はなぜ理想を追うのでしょうか?自分らしくあることを理想とするのでしょうか?

私は子供の頃、自分らしさとは?なんていう小難しいことを考えたことがありませんでした。小学2年生でシンクロという競技に出会い、そして夢中になり、先輩方のように上手くなりたくて、どうしたら早くそのような動きができるのかとそればかりを考えていました。寝ても醒めてもそれ。でもよかったのです。上手くなりたいという一心であれやこれやと考えてそれを実験してみることが面白くてしょうがなかった。そんな感じでした。

そして、あるときふと気づきます。「真似は嫌だな。違うな。」と。身長も柔軟性も手足の形も人それぞれ違うのに、誰かの真似をしてもその人以上にはなりません。もっと上手くなりたいならば、自分という人間の持っている特長や持ち味を最大限に理解してそれを生かせなければ、それ以上のものは望めないのです。

シンクロはもう一つの大きな特徴がありました。採点競技であるが故に、選手の達成感とは別に、
人が演技を観てその技術や表現をどのように評価するかが重要になってきます。コーチからの第三者的な観点での指導が必要不可欠でした。つまり、この段階で2つのことが求められる訳です。徹底した自己分析の基、自分の特長を、指導の上で求められる第三者のイメージ映像に合致させながら身体で表すことなのです。

今振り返れば、幼いながらにとても貴重と言える学びをさせて頂いたと思います。社会人になってまさに求められることのそのものずばりを、小学生のころから反復してきたことが現在の自分にとっての強みになりました。はじめからうまく物事が運ぶことはなかなかありません。社会から求められているものが何なのか、捉えることも難しいです。でも、毎日何かしらの変化がある自分を客観的に見つめて、ありのままの自分を出せるよう心の準備をしておきます。

ここでいう準備とは、いつでも心を「開放」できる用意を整えるということです。これまでに私が育ってきた環境や学んで身についたことを、言葉や身体を使って力まず自然に自分の外側に出すという感覚。これが一番自分らしい。作りこんで「これはどうだ!」と頑張るより、瞬間的に求められていることをキャッチできたときに、それに合ったテンションで心の「開放」ボタンを押すみたいにすれば、それはそれはとても個性や思想が凝縮された表現になっている気がします。開放したときのテンションを間違えると、少しイタいですけどね(笑)。そうならないために、毎日少しずつでも「これは自分にとってプラスだ。」と思える感覚をしっかり記憶して引き出しを増やしておくと、どんなテンションのオーダーがあっても対応可能ということです。

自分らしく生きる…答えは私も見つけられずにいますが、今のところ私が試してみてとても心地よい達成感と充実感を感じる「らしさ」を出した生き方は、これまでの自分が信じることができた思いが、絶妙のタイミングに心の扉が開いて、自分の中から形を変えずに外に飛び出してくるような感覚になったときに「ああ。今自分らしく生きてるかも…」なんて思います。そして「生きててよかった!」と喜びを噛み締める。きっと人はそういう刹那的に起こる”生きている実感”を確かめたくて、また確かめないと不安なんでしょうね。辛かったり痛みを伴ったりする”生きている実感”より、幸福を感じる生きている実感の方がやはりいいから、人は理想を求めるのでしょう。その方が前向きでいいと思います。

武田美保

武田美保

武田美保たけだみほ

アテネ五輪 シンクロナイズドスイミング 銀メダリスト

アテネ五輪で、立花美哉さんとのデュエットで銀メダルを獲得。また、2001年の世界選手権では金メダルを獲得し、世界の頂点に。オリンピック三大会連続出場し、5つのメダルを獲得。夏季五輪において日本女子歴代…

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