振り返ること15年前であるから、1992年のことと記憶している。NECの監督になって3年目、チームには優秀な選手が揃っていたが、私の今までのコーチングスタイルに自身が持てず非常に悩んでいた時期であった。優秀な選手を優勝に導く為に、まず監督の私が全てにおいてレベルアップを図らなければいけないと痛切に感じていた。当時、NECのスポーツアドバイザーの河田さんの紹介で、アメリカのユタ州にあるブリガムヤング大学に優れたバレーボールコーチがいるというので、彼の指導を乞うためアメリカに渡った。
その人の名は『カール・マクガン』という、アメリカのバレー界でも1、2を争う、ブロック指導のスペシャリストである。
彼の指導でまず衝撃を受けたことは、フィジカルな部分は勿論の事であるが、メンタル面に関して多いに参考になった。それまでの私の指導方針は、選手を厳しく指導するという、日本特有の指導方針であった。
カールの指導は、選手がファインプレーをすると、ともかく『褒める』のである。手の親指を上に向け、選手に向かってウィンクをするのである。された選手が実に嬉しそうな顔でプレーを続ける姿を見て、私に欠けているものはこれだなと思った。その指導を約2ヶ月間受け、日本に戻り実際にNECのチームでカールの指導方法を真似てみた。
最初は、選手も違和感があったらしく、いつも怒っていた私が良いプレーに対して、突然褒め出したものだから、しばらくの間は選手も戸惑っていた。が、褒められて悪い気のする選手はいない。
この『褒める』という指導方針を取り入れてから、選手とのコミュニケーションも前にも増して上手くいくようになった。褒めることと、悪いプレーをした時の叱る事をうまく使い分けることによって、チームは非常に良い回転をする様になった。
そして練習の成果を如何なく発揮し、その年のVリーグを制し初優勝を飾ることが出来た。
最近、対談である経営コンサルティング会社の社長とお話しをした時に、その会社も社員に対して『長所進展法』を行なっていることという話しを聞いて、私がカールから教わった良いプレーに対して、『褒める』ということは間違ってなかったと確信した。
日本人は、元々褒める事が苦手な民族であると私は感じる。スポーツにおいても、会社組織においても同様で、褒めて伸ばすという事が大切であると身を持って感じている。
寺廻太てらまわりふとし
PFUブルーキャッツ監督
元全日本男子バレーボール監督、韓国バレーボールプロリーグ プロコーチ。国内では男女両方の監督を務めるなど、コーチとして高いスキルを持つ。男子ではNECブルーロケッツ、女子ではJTマーヴェラスといずれも…
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