安倍晋三首相の初外遊は、東南アジアでした。東南アジアは経済的発展のポテンシャルが高く、地理的にも大切なパートナーと位置づけられます。首相が訪れた国のなかには、ベトナムが含まれていました。サッカーにおいても、この国は大きな可能性を秘めています。
私は一昨年からベトナムへ足を運び、キッズアカデミーの開催に携わってきました。現地の学校が夏休み期間となる6月から7月中旬にかけて、キッズ専門のコーチが直接指導にあたるのです。
過日、今年度のキャンプの準備のためにベトナムを訪れました。今年も6歳以下、8歳以下、10歳以下の三つのカテゴリーに分け、およそ1か月半のキャンプを行ないます。
東南アジア諸国が日本にとって重要なパートナーとなるのは、政治の世界だけに限りません。サッカーにおいては、近隣諸国で切磋琢磨していくことが互いのレベルアップにつながります。
日本代表はこれまで、〈ダブルスタンダード〉を強いられてきました。アジアにおける戦いは、基本的に自分たちが主導権を握ることが前提となっています。
一方で、世界のトップクラス相手のゲームでは、どうやって主導権を握るのかを考えていかなければなりません。あるいは、主導権を握らない中でどうやって勝利をつかむのか、を考えなければなりません。いずれにしても、対アジアと対世界で、日本は異なる価値基準を持つことを強いられてきたのが現状です。
アジア全体がレベルアップしていくことで、いまはふたつ存在する価値基準がだんだんとひとつになっていくことが期待されます。アジアサッカーの水準向上が日本に寄与するというのは、そういう理由からです。
ベトナムにもプロサッカーリーグがあり、国内トップクラスの数選手は2500万円前後の収入を得ていると聞きます。日本円に換算すると、1億円ぐらいの価値があるでしょうか。サッカー人気は高く、ファンはイングランド・プレミアリーグに一喜一憂します。ヨーロッパサッカーの浸透率は、日本にも劣らないでしょう。
しかしながら、若年層の育成は手つかずの部分が少なくありません。カリキュラムもノウハウも確立されておらず、指導者個人の情熱に頼るところが大きいのです。
世界有数の経済圏へ成長を遂げつつある東南アジアは、これからさらに人口が増えていきます。ベトナムも例外ではなく、現在は8500万人強の人口が、10年以内に1億人を超えると言われています。しかも、日本のように高齢化社会ではない。子どもたちの多い社会です。
ヨーロッパのサッカークラブも、ベトナムの成長力には注目しています。あのFCバルセロナ(スペイン)も、子どもを対象としたアカデミーを開催しています。ただし、バルセロナの軸足は「宣伝」に置かれています。ベトナムにおける知名度を高める一貫として、彼らは少年たちを対象にしたアカデミーを行なっています。
かつて日本は、U-17(17歳以下)世界選手権出場をきっかけに若年層の大会で成果をあげ、日本代表の強化へ結びつけていきました。ベトナムにおける我々も、17歳以下の世界大会出場を目標にプログラムを組んでいます。
将来的にはアカデミー出身の選手がプロフェッショナルとなり、Jリーグのクラブでプレーし、テレビ局をはじめとしたベトナム企業がJリーグを投資の対象とするところまで考えています。
日本サッカー協会やJリーグも、アジア各国との協力関係を強めています。我々はより身近なところから、連携していきます。日本の成功例を”輸出”することはアジア全体の発展に寄与し、やがては日本サッカーの繁栄につながると確信しています。
山本昌邦やまもとまさくに
NHKサッカー解説者
1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…
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