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2014年09月25日

日本のスポーツ界は、若年層の強化方針を見直すべきでは?

 「若さ」の定義を、日本のスポーツ界は改めるべきだと感じます。とりわけサッカー界においては、その必要性を強く認識しています。

 9月19日に開幕したアジア競技大会の男子サッカーは、23歳以下の選手に出場資格があります。その他に、年齢に関係なく3人まで出場が認められています。オーバーエイジと呼ばれるものです。

 手倉森誠監督率いる日本は、21歳以下のチームで参加しています。オーバーエイジも加えていません。2年後のリオ五輪出場を目ざすチームを、強化するためです。

 私自身も、1998年のアジア大会で采配をふるったことがあります。やはり21歳以下のチームで臨み、過去最高となる銀メダルを獲得しました。監督経験者として、手倉森監督の狙いは良く分かります。しかし、周囲は冷静な視線で見つめなければなりません。

 グループリーグ第2戦で、日本はイラクに1対3で敗れました。イラクは23歳以下のチームで参戦しており、オーバーエイジも出場しています。

 「何だ、それなら負けてもしかたがないじゃないか」と思われるかもしれませんが、イラクには18歳の選手も出場しています。そして、日本はその彼に活躍を許しました。「若い日本が年長チームのイラクに負けた」とは、言い切れません。ハビエル・アギーレ新監督のもとで始動した日本代表にも、同じことが言えます。

 メキシコからやってきた指揮官は、22歳の武藤嘉紀(FC東京)、柴崎岳(鹿島アントラーズ)、皆川佑介(サンフレッチェ広島)、23歳の坂井達弥(サガン鳥栖)、森岡亮太(ヴィッセル神戸)ら、ブラジルW杯に出場しなかった選手を多く招集しました。「4年後のロシアW杯へ向けて、若い選手がアピールした」とメディアは書きたてましたが、22歳や23歳で代表に定着するのは、例外的なことではありません。

 ブラジルW杯で母国を熱狂させたネイマール、決勝戦でゴールを決めたドイツのゲッツェは、武藤らと同じ22歳です。通算6ゴールで大会得点王に輝いたハメス・ロドリゲス(コロンビア)は、19歳でポルトガルの強豪FCポルトの一員となっています。7月に23歳となった彼は、今シーズンからスペインの強豪レアル・マドリードでプレーしています。

 彼らに「若手」という言葉が使われているでしょうか?
答えは「NO」でしょう。

 アギーレ監督のチームが0対2で敗れたウルグアイには、19歳のセンターバックが先発していました。ホセ・マリア・ヒメネスというその選手も、すでにヨーロッパのクラブに在籍しています。昨シーズンのスペインリーグを制したアトレティコ・マドリードの一員です。

 22歳や23歳の選手が「若手」と呼ばれるのは、大卒1年目や2年目の社会人と同学年だからでしょう。しかし、日本のサラリーマン社会の常識をそのままスポーツに、サッカーに当てはめるのは無理があります。10代後半や20代前半で世界のトップクラスと肩を並べる選手は、いくらでもいるのですから。

 もちろん、ネイマールやハメス・ロドリゲスも、段階を追って成長しています。年代別代表に選ばれ、世界大会を経験し、ワールドカップで活躍する準備を整えていきました。

日本はここで躓いています。

 アジア大会の報道に隠れてしまいましたが、私にはショッキングな出来事がありました。来年行われるU-17(17歳以下)ワールドカップの出場権を、日本が逃してしまったのです。

 10月にはU-20(20歳以下)ワールドカップのアジア予選も開催されますが、楽観視はできません。日本は過去3大会連続で、出場権を逃しているのです。

 1998年から2014年まで、日本は5大会連続でワールドカップに出場してきました。その下支えとなったのは、若年層のワールドカップでした。かつての中田英寿や中村俊輔、小野伸二や稲本潤一らは、20歳以下のワールドカップや五輪を経由して日本代表へ登りつめました。アギーレ監督のもとで主力を担う本田圭佑も同様です。

 一方で、現在の日本代表に、若年層で世界大会を経験している選手が減っているのも事実です。若い世代の強化は、率直にうまくいっていません。

 22歳や23歳は、「若手」ではありません。間口を広く取っても、「若手」と呼んでいいのは20歳まででしょう。国際基準に合った「若手」の登場を促すためにも、若年層の強化方針を見直すべきだと考えます。

山本昌邦

山本昌邦

山本昌邦やまもとまさくに

NHKサッカー解説者

1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…

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