9月3日、8日に行われるロシアW杯アジア予選の日本代表メンバーが発表されました。私が期待している選手のひとりに、岡崎慎司がいます。
今シーズンからイングランド・プレミアリーグのレスター・シティへ移籍した岡崎は、リーグ戦2試合目で初ゴールをマークしました。
2011年1月から5シーズンに渡ってプレーしたドイツ・ブンデスリーガでは、すでに確かな実績をあげています。シーズン初ゴールが少しぐらい遅れても、周囲が騒ぐことはありません。
しかし、今シーズンは違いました。新しいリーグで、新しいチームで、彼はプレーしています。できるだけ早く結果を残さないと、スタメンの座をキープすることはできません。打率3割が評価基準になるプロ野球のバッターではないですが、ヨーロッパでは3試合連続で無得点に終わるとポジションを失いかねません。それぐらい厳しい世界です。
それだけに、リーグ開幕から間もない時期に初ゴールを記録したのは、岡崎にとって大きな意味を持つでしょう。まだ最初の一歩を刻んだだけですが、一歩目を踏み出さなければ二歩目はありません。
ゴール前での岡崎は、相手守備陣の嫌がるところへ抜け目なく走り込んでいきます。相手のマークを外す動きは秀逸です。
同時に彼は、ディフェンスでもチームに貢献します。
チームがボールを失った瞬間から、彼は守備を開始します。自分がボールを失ったわけではなくでも、守備をサボりません。最前線からすぐにプレッシャーをかけていくので、相手の速攻をスピードダウンさせることができます。また、岡崎が相手のパスコースを限定してくれるので、味方の守備陣はどこでボールを奪うのかを絞り込みやすいのです。
攻守に素晴らしい貢献度を見せる岡崎は、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が率いる日本代表でも欠かせない存在です。
言うまでもないことですが、サッカーは点を取り合うスポーツです。得点を奪うには、シュートを打たなければならない。シュートを打つには、そのための形へ持っていかなければならない。具体的には、アタッキングサードと呼ばれるゴール前のエリアへ入っていかなければなりません。
ところが、「どうやって点を取るのか」を突き詰める作業が、日本サッカーはまだまだ甘いと感じます。「ゴールするために、どうやってシュートへ持ち込むのか」ではなく、たとえばパスのつなぎかたなどの前段階に、サッカー関係者も、メディアも、視線を奪われている気がしてなりません。
昨夏のブラジルW杯で準優勝したアルゼンチンには、ヨーロッパで活躍しているストライカーが数多くいます。バルセロナ(スペイン)のリオネル・メッシ、マンチェター・シティ(イングランド)のセルヒオ・アグエロ、ナポリ(イタリア)のゴンサロ・イグアイン、パリ・サンジェルマン(フランス)のアンヘル・ディマリアとエセキエル・ラベッシ。アルゼンチン代表には定着できていませんが、昨シーズンのブレーメン(ドイツ)で2ケタ得点をあげたフランコ・ディサントのような選手もいます。
欧州のトップリーグで得点王を争うような選手が、これぐらいいるのです。そのなかから調子の良い選手が代表チームに選ばれ、スターティングメンバーを巡ってさらに競争を繰り広げるのです。それが、世界のトップ・オブ・トップの代表チームというものです。
新天地レスターで岡崎が頑張るのは、サッカー関係者のひとりとしてとても嬉しいことです。しかし、彼の孤軍奮闘ぶりが目立つのは、日本代表には決して良いことではありません。岡崎に並び、追い越すような選手の登場が望まれます。それがまた、岡崎を刺激するからです。
山本昌邦やまもとまさくに
NHKサッカー解説者
1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…
スポーツ|人気記事 TOP5
マッスルミュージカル~公演初日を迎えて
武田美保のコラム 「武田VISON」
人生のオーナーシップを持つ
伊藤華英のコラム 「人生を前に進めるためのモチベーション活用術」
ロシアW杯アジア予選の代表メンバーが決定! プレミアでの新た…
山本昌邦のコラム 「リーダーの条件」
スポーツ中継のいろは その5
久保田光彦のコラム 「スポーツ中継の裏側」
肉体的、精神的ピークのコントロール
武田美保のコラム 「武田VISON」
講演・セミナーの
ご相談は無料です。
業界21年、実績3万件の中で蓄積してきた
講演会のノウハウを丁寧にご案内いたします。
趣旨・目的、聴講対象者、希望講師や
講師のイメージなど、
お決まりの範囲で構いませんので、
お気軽にご連絡ください。