なでしこジャパンことサッカー女子日本代表が、リオ五輪の出場権を逃しました。
佐々木則夫監督が率いる日本は、11年のドイツW杯で優勝、12年のロンドン五輪と15年のカナダW杯は準優勝と、3つの世界大会で連続して決勝戦に進出していました。これは紛れもない偉業です。
チームの大黒柱だった澤穂希さんが引退したものの、世界の舞台で戦ってきた選手は数多く残っています。アジアの女子サッカーは実力が拮抗していますが、最終予選は日本で開催されることもあり、不安よりも期待が先行していました。
ところが──。
6か国による最終予選で、日本は2勝1分け2敗の3位となり、上位2か国が得る出場権を逃してしまいました。
予選敗退の原因は、初戦の躓きにありました。オーストラリアとのゲームで、1対3と敗れたのです。
男子サッカーのW杯などでも、初戦に勝利したチームは高い確率でグループリーグを突破し、決勝トーナメントへ進出しています。大会最初のゲームに勝つということは、単なる1勝にとどまらず、チームの雰囲気を高めたり、勢いをつけたりする効果があるのです。
1月のカタールで開催された、男子の五輪予選が分かりやすいでしょう。北朝鮮との初戦に苦しみながら勝利し、結果的に6戦無敗で五輪の出場権をつかんだ戦いぶりは、短期決戦でスタートがいかに大事なのかを物語っています。
しかも、最終予選の序盤は中1日で行われました。精神的な切り替えができないままに韓国との第2戦を迎え、終盤に待望のリードを奪ったものの、自分たちのミス絡みで同点に追いつかれました。またしてもショックを引きずる展開で、引き分けてしまったのです。
日本が“らしさ”を出せなかったのは、最終予選の実施時期も影響したかもしれません。なでしこリーグが開幕前だったため、国内でプレーする選手たちは実戦から遠ざかっていました。一方、対戦相手は事前に国際試合を行い、試合勘を磨いていました。
佐々木監督が、手を打たなかったわけではありません、男子の高校生などを相手に、練習試合を組みました。女子よりも体格の大きな男子との対戦は、身体のぶつかり合いに慣れるなどの効果が見込めます。
ただ、あくまでも練習試合です。相手は「大事な公式戦を控えたなでしこの選手に、ケガをさせてはいけない」と気を遣います。また、佐々木監督から練習試合の相手に対して、「オーストラリア(など)を想定して、こういう戦い方をしてほしい」といったオーダーをするところもあったはずです。相手の良いところにどう対処するかのシミュレーションはできるわけですが、自分たちの長所を封じてくる相手への対策は、突き詰められなかったのかもしれません。
というのも、日本はどの試合でも長所を消されました。アジアで抜きんでた実績を残してきたことで、彼女たちは研究されていたのです。
予選敗退の決まった第4戦で、日本はベトナムに大勝しました。朝鮮民主主義人民共和国との第5戦も、勝負強さを発揮しました。日本の実力が、いきなり低下したわけではありません。力はあったのです。それだけに、初戦の敗退が悔やまれます。
リオ五輪には出場できませんが、4年後には東京五輪がやってきます。その前年には、W杯があります。退任の決まった佐々木監督の功績を讃えつつ、なでしこジャパンのこれからに期待したいと思います。
山本昌邦やまもとまさくに
NHKサッカー解説者
1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…
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