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2016年06月23日

サッカー五輪「OA枠」選定にもっとも重要なものは何か?

リオデジャネイロオリンピックに出場するサッカー男子のオーバーエイジが、固まってきたようです。

オリンピックの男子サッカーは、23歳以下の選手による大会です。ただ、3人まで年齢制限に関係なく出場することができます。これがオーバーエイジ(以下OA)というものです。

私自身、2004年のアテネ大会でオリンピックチームの監督を務めましたので、OAの招集のメリットとデメリット、また、招集にあたってどのような調整が必要なのかといったことは理解しています。現チームの手倉森誠監督も、様々な可能性を考慮したうえで、最終的な人選に至ったのだと思います。

そもそもOAを使うのかどうかは、「オリンピックチームが何を目ざすのか」を議論の出発点としなければなりません。

23歳以下の選手育成を最優先事項とするなら、OAもそれにふさわしい選手であるべきです。具体的には、18年のロシアW杯に絡んできそうな選手を選ぶべきです。

たとえば、J1リーグで3年連続の得点王を獲得している大久保嘉人は、現在の日本でもっともゴールを予感させる選手です。今シーズンも好調を維持しています。

ですが、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、6月のキリンカップに大久保を招集しませんでした。6月9日で34歳になったこのストライカーは、2年後のロシアW杯を36歳で迎えます。そこまで見据えてチームを作っていくと、もう少し若い選手の可能性に賭けるという考え方が成立します。

手倉森監督も、大久保は選びませんでした。本田圭佑や長友佑都、香川真司や岡崎慎司といった日本代表のレギュラークラスも、OAに選びませんでした。

彼ら海外でプレーする選手の場合、所属クラブとの交渉が必要になるのですが、手倉森監督はすでに日本代表でしっかりとした地位を確立している選手ではなく、これからレギュラーに食い込んでいきそうな選手を選んだのでしょう。それが、すでにOAに内定した塩谷司(サンフレッチェ広島)であり、藤春廣輝(ガンバ大阪)であり、最後の1人になるとの報道がある興梠慎三(浦和レッズ)です。

塩谷は27歳のディフェンダーで、センターバックとサイドバック、さらにはボランチでもプレーすることができます。この汎用性は、オリンピックの選手選考で重要な意味を持ちます。

オリンピックの試合は、グループステージの3試合と準々決勝が中2日で、それ以降も中3日で行われます。しかも、試合によっては移動を強いられます。勝ち上がるごとに疲労は蓄積し、累積警告による出場停止やケガの可能性も高まっていきます。複数のポジションでプレーできる塩谷のような選手がいることで、監督の選手起用に幅が生まれるのです。

もうひとりの藤春は、左サイドバックのスペシャリストです。いくつものポジションをこなすタイプではありませんが、サッカーの監督は左サイドに左利きの選手を起用したいと考えるものです。

レアル・マドリードでも、バルセロナでも、ドイツ代表でも、先日のキリンカップで来日したボスニア・ヘルツェゴビナ代表でも、左サイドバックにはレフティーが起用されています。そのメリットは様々ですが、ひと言でまとめると「戦術的な幅が出る」ということでしょう。

ホスト国のブラジルは、ネイマールがOAで出場します。日本と対戦するスウェーデンには、現在開催中のユーロ(欧州選手権)でプレーしているズラタン・イブラヒモヴィッチが加わるかもしれません。

どちらも、言わずと知れたスーパースターです。彼らほどの選手が、オリンピックの舞台に立とうと考えるのはなぜか。

これはもう、「オリンピックに出たい」という純粋な思いの表われでしょう。実はOAの選定でもっとも重要なのが、この「思い」なのです。

すでにOAに内定した藤春と塩谷は、OAに指名された責任を感じつつ、「チームに貢献したい」と話しました。その「思い」をピッチ上で表現すれば、彼らの存在はチームに好影響を与えるでしょう。すなわち、チームの可能性も高まっていくのです。

山本昌邦

山本昌邦

山本昌邦やまもとまさくに

NHKサッカー解説者

1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…

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