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スポーツを娯楽から「文化」へ

マーティキーナート

マーティキーナート

東北楽天ゴールデンイーグルスシニアアドバイザー

今月はスポーツジャーナリストのマーティ・キーナートさんです。

初来日されてから30年余り。日本に興味を持ったキッカケから、
日本のスポーツ界の問題点をお訊きしました。文武両道、日本になし!

 

マーティ・キーナート (楽天野球団 ジェネラル・マネージャー)

1946年 米国・ロスアンジェルス生まれ
1968年 スタンフォード大学政治学部 卒業

スタンフォード大学在籍中に、特別交換留学生として慶応大学へ留学し、初来日。卒業後、慶応大学日本語専攻生として、1969年再来日。以来一貫、日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。

日本におけるスポーツライセンスビジネスをスタートさせ、テレビ、ラジオでスポーツ解説もするかたわら、多くのスポーツ選手と親交を結ぶ。

現在、野球解説者、スポーツ解説者、スポーツジャーナリスト、スポーツエージェント、スポーツビジネスコンサルタント、コメンテーターとして活動中。この春より早稲田大学スポーツ科学部の客員教授として、教壇に立っている。

スポーツを娯楽から「文化」へ

――日本に興味をお持ちになったキッカケは何だったのでしょうか。

 スタンフォード大学へ進学した理由は、勉強のためでもあるし、野球をやるためでもあったのですが、交換留学生のプログラムが非常に発展していたからなんです。生徒全員が留学できるんです。世界を見たいと思っていたので、どこかへ留学したかったんです。

ある時、トイレで用を足していたら目の前にポスターが貼ってあって、「この夏、日本はどうだ」って書いてあった。それで日本に決めました。スタンフォードではトイレにチラシが貼ってあるんです。だって絶対にみんな見るでしょ?(笑)

――特に日本に興味があったわけではないんですね。

 そうですね。ただ、アジアの印象はとても良かったです。小さい頃、自分の教会にはチャンさんという中国人の家族がいて、家族ぐるみのお付き合いをしていました。チャンさんは歯医者さんでした。その頃、箸の使い方も教わったので、正しく使えますよ。だから、アジアは好きでした。中国と日本の区別は分からなかったけれど、オリエンタルな雰囲気はとても好きでした。

マーティ・キーナート――それから大学を卒業されてから、アメリカで就職(ローダイオリオンズ)されますよね。

 ビジネス・スクールでMBAを取りたかったのですが、成績が少し足りず1年待たなければならなかった。それで、ハンバーガーショップなどでアルバイトをしていました。

その時に、ローダイ・オリオンズの話がきて、就職することになりました。元々ビジネス・スクールを出た後に国際ビジネス、出来ればスポーツに関わる仕事がしたいと思っていたので、丁度良かったんです。ローダイにいた2年間、働きながら学ばせてもらいました。

――その後、日本初のスポーツバーを経営なさいますが、当時からアメリカでは流行していたものなのでしょうか。

 沢山ありました。だから、やり方次第では日本でも行けるんじゃないかと思いました。’75~’79年、僕はデサントに勤めていました。アメリカやカナダのスキーやスケートのナショナルチームなどのユニフォームのオフィシャル契約をしていました。アメリカやカナダを周っていたのですが、商談はいつもスポーツバーでした。沢山のすばらしいスポーツバーを見て周っていたので、日本でも行けると思ったんです。

でも、日本のスポーツバーは考え方が違うというか、うまくいってないと思います。それは、日本にはスポーツが文化として根付いていないからです。


――スポーツが文化であるというのは。

年間にどれだけ真剣にスポーツの応援をしていますか?アメリカやカナダでは、シーズンごとに様々なスポーツを応援しています。そして自分もスポーツをやっています。

学校でも、全校挙げて応援します。日本では、甲子園などの全国大会はみんなで応援していますが、普段の試合までは行かないでしょ?野球以外の他の競技も同じですが、両親ぐらいしか来ていないですよ。

アメリカでは、秋にはフットボール、冬にはバスケットボール、春には野球やゴルフなど、シーズンごとに女性も含めみんなで熱心に観ています。

日本では、一部の野球ファン、一部のサッカーファンなどがそれぞれ盛り上がっているだけ。それも応援することが第一で、プレーが二の次になっています。自己満足になってしまっているんですね。10対1の試合でも、2対1の試合でも同じ応援でしょ。ずっとガンガンやっているだけ。応援を聞いてもどっちが勝っているのか分からない。お祭り騒ぎですよ。日本において、スポーツはちょっとした娯楽なんです。まだ文化として根付いていません。

それからアメリカでは社会人になってもスポーツをしている人の割合が高いです。日本でビジネスマンと話をすると、高校までは野球やっていましたとか、みんな過去形なんですよ。他の国では大学出てからも続けている人が沢山いますよ。よくゴルフやっていますなんて言われるけれど、あれはレジャーですよ。お昼にビール飲んでタバコ吸って。スポーツとは言わない。日本はスポーツ人口が少ないと思います。

――日本にスポーツ文化がないと思う具体例はありますか。

 日本はスポーツを重要視していない。ただの娯楽なんです。それは、スポーツにお金を投資しないことと、メディアの扱い方に表れていると思います。

■ スポーツはお金が掛かる

文部科学省は、体育にはお金を出します。全員にスポーツをやってもらいたいとは思っていますし、体育館も作ります。でも、学校の部活も、学校からお金はほとんど出ません。監督やコーチもボランティアだし、お金は親やOB会で出しています。

例えば、アメリカの大学スポーツはほとんどプロ同然です。これがいいと言う訳ではないですが、100万ドル以上の給料をもらっているフットボールやバスケットボールのコーチが沢山います。日本のコーチ全員の給料を合わせても、1人分にもなりませんよ。日本はほとんどボランティアなんです。

日本の中学や高校では、音楽の先生がテニスを教えている。数学の先生がサッカーを教えている。これでは上達する訳がありません。スポーツ医学も心理学もダメ。なぜなら、お金がないからです。

今まで日本のスポーツは企業がお金を出して支えて来ました。でも最近は社会人チームが減ってきています。日本のスポーツ選手は大変です。スポーツはお金が掛かります。お金がないと出来ないんです。

お金を掛けない国の中で、日本はよくやっていると思います。オリンピックのメダルの数とお金の関係を示すデータがあるんですが、メダルを獲るためには沢山のお金を必要とします。共産圏では国を挙げてスポーツにお金を掛けてきました。どれだけ沢山のお金を効率的に投資するかが、スポーツを強くするカギなんです。裕福な国の中で成績が悪いのは日本だけです。

オリンピックにおける日本のメダルの数はどんどん減っています。ソルトレークでの金メダルはゼロでした。昔の日本の環境が良かったわけではありません。他の国のスポーツ環境がどんどん進んでいるのに、日本が進歩していないのです。


■ 稚拙なメディア

 日本のメディアのスポーツの扱いは酷いですね。日本の学校にはジャーナリズム学科がほとんどありません。これだけ印刷物が大量にある国なのに、不思議ですね。どうやってスポーツジャーナリストになればいいんですか。アメリカでは、ライターだけでなく、ラジオやテレビの仕事をしている人たちの多くが、大学時代にジャーナリズムを専攻しています。日本のメディアの人に聞くと、例えば経済や法学を専攻していたと言われます。いつジャーナリズムを学ぶのでしょうか。はっきり言って勉強不足です。

また、テレビやラジオ局に入社すれば会社員です。日本テレビの人が渡辺オーナーに本音が言えますか?言えないでしょ?日本で本音が言えるのは、フリーのジャーナリストだけです。アメリカで渡辺オーナーのような人がいたら、毎日みんなボロクソに書きますよ。

それからアナウンサー。いい実況をする人もいるけれど、日本ではアナウンサーは若手もベテランも平等に順番に使うんですね。解説者もそうです。日替わりになっています。例えば野球で日替わりに打順を組んだりしませんよね。常にベストメンバーを考えています。そこがおかしい。

後は女子アナ。本当に何も知らない。そしてコロコロ変わるでしょ。アメリカでは女性でもものすごく勉強しています。容姿ではなくて内容です。

アメリカのメディアにはライター、解説、アナウンサーなど各分野にスタープレーヤーがいます。60歳でも70歳でも使います。ワインのように熟成されてどんどんよくなって行くんです。

■ 文武両道、日本になしマーティ・キーナート

――マーティさんの最新刊、『文武両道、日本になし』(早川書房)が好評だそうですが、どんな内容でしょうか。

 日本では本格的にスポーツをやる場合、勉強を捨てなければならないことが多い。だいたい中学の時に運動か勉強のどちらかを選択しなければならない。でも他の国は違います。高校でも大学でもスポーツで活躍しながら勉強も出来るし、プロスポーツ選手が弁護士や医者にだってなれるんです。

日本のスポーツ選手は引退後、何も残らないですよ。みんなが監督やコーチとして職に就けるわけではありません。2000年に元ヤクルトの高野光さんが自殺しました。彼には野球しか残らなかったけれど、野球の仕事が無かったんです。そんな悲劇はもう起きて欲しくありません。

これは日本の制度の問題です。本格的にスポーツをやりながら、勉強も出来る環境を作ることが大切です。子どもの可能性を最大限に生かす制度を作るべきだと思います。 アメリカでもスポーツ一辺倒の選手はいますが、その反面スポーツも勉強も優秀な選手が沢山いるんです。

アメリカがベストだとは決して言いません。特にひどいのは薬物問題です。でも、日本は他の国のいいところをドンドン取り入れて変わっていかなければならないと思います。

――ありがとうございました。

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マーティキーナート

マーティキーナート

マーティキーナートまーてぃきーなーと

東北楽天ゴールデンイーグルスシニアアドバイザー

スタンフォード大学在籍中に、特別交換留学生として慶応大学へ交換留学で初来日。政治学部卒業後、再来日し、慶応大学日本語コース修了。特選塾員証を授かる。以来一貫、日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。 …

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