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1964年、宮城県生まれ。26歳の時に石油掘削現場で貯めた1000万円を元手に起業。3年後には渡米し、シリコンバレーでベンチャーキャピタルから10億円以上の投資を集め、マーケティング会社GAZOOBA(ガズーバ)を設立。(※2001年に売却) その過程で「マネジメントコーチ(現:すごい会議)」と出会う。帰国後、マネジメントコーチを日本向けに「すごい会議」にアレンジし、コーチとして多くの日本企業に広めている。
ユダヤ人のハワード・ゴールドマン氏が開発したマネジメントコーチングは、米国ではアップル、アメリカンエクスプレス、P&G, AOL, Hewlett-Packard、プレイボーイ、ディズニーレコード、NEC,ワーナーコミュニケーション、シスコシステムズといったトップ企業で採用されている。
多くの企業を成功に導いてきた大橋さんに、マネジメントコーチとの出会いや成功の秘訣をお聞かせ頂きました。
「どのようにすれば○○できるのか」
――大橋さんと、「すごい会議」の原形である「マネジメントコーチ」との出会いは、アメリカでのベンチャー企業経営だったそうですね。
1998年、私はドットコムブーム真っ只中の米国シリコンバレーにいました。現地でアンディーというユダヤ人の友人とともに、ベンチャーキャピタル(VC)から投資を受け、GAZOOBAという会社を設立したんです。当時アマゾンが顧客獲得に一人あたり350ドルかかっていたことから、我々は口コミを使い、一人あたり20ドルで顧客を獲得するWEBマーケティングサービスを展開していました。VCから150万ドルほど投資してもらってスタートしましたが、社員数が15名を超えたあたりから会社の成長が急に鈍化してしまったんです。そんな中、投資家から「マネジメントコーチをやってみないか」という声がかかりました。投資家曰く、マネジメントコーチを導入すると、多くの企業でパフォーマンスが上がっているとのこと。我々は周りからあれやこれや言われるのが嫌いなタイプなのでしばらく断り続けていたんですが、プレッシャーも強かったので試すことにしたんです。受けたところで、どうせ決まったプログラムに沿って進むだけだろうと斜に構えていました。
――そんなに後ろ向きだったとは…!そんな大橋さんの意識を、そして会社の運命を変えた最初のセッションはどのようなものだったのでしょうか?
コーチ(講師)はのちに私のパートナーとなる、ユダヤ人のハワード・ゴールドマン氏でした。セッションは、コーチの質問に対する答えを紙に書き出し、ディスカッションするという流れで進行していきました。まず、コーチは我々に「本日のセッションにどんな成果を期待していますか?、一番価値がある成果は何ですか?」と尋ねてきたので、私は1)新製品を開発する方針 2)資金集め、と紙に書きました。コーチの質問はどんどん続き、「今、どんな問題がありますか?」 と聞いてきたので、1)資金繰りが悪く、下手をすればあと2ヵ月もしたら会社が潰れる 、2)今の製品が売れてない、3)新製品のアイディアが経営陣で定まっていない、と言う問題を書き出しました。するとコーチは「その問題を、『どのようにすれば~できるだろうか?』という文章に書き変えて下さい」と言うんです。「どのようにすれば投資が得られるか、製品が売れるか…」 という文章に書き換えたところで、急に頭が回り始めていくのを感じました。「どうすればよいか」を書き出してみると、意識的に問題解決策を考え始め、不思議なほど“答え”が浮かんでくるんです。“これは他のシーンでも使えるテクニックだなぁ”と感じました。
コーチは更に、「(大きな声で)言えない問題はないですか?」、「あなた自身のひどい真実は何ですか?」と尋ねてきたので、私は正直に「経営ツートップであるアンディーと僕の意見がそろっていない」、「僕がすねている」と答えました。これを「どのようにすれば…」の形式に書き出すため考えを巡らせるうち、「どのようにすれば互いが、会社に貢献できる場を提供しあえるか」という発展的な答えが出てきたんです。“これはもう、僕がすねててもしょうがないなぁ” と思いました…。 マネジメントコーチのすごさは、目標に対する“本当の障害”が明らかになること、そして「なんとかやってやろう!」という気分になることです。
日本企業はマネジメントコーチ(現:すごい会議)を求めていた
――セッションを受けながら、 今までにない<気づき>があったんですね。 セッションの効果はいかがだったのでしょうか?
セッションを受けた翌日から、私は「どのようにすれば経営陣と~できるだろうか?」という形式で部署の課題を書き出し、それに対する対策を立て実行し始めました。私は開発部のトップだったので開発部で実行していましたが、マネジメントコーチ参加メンバーの主導で営業部・マーケティング部でも同じことが起きていました。もちろん今まで出来なかった問題ばかりなので簡単には進みませんが、「これは難しいけど、やろうよ」と言える空気になり、経営陣の間でも<難しい環境の中で、何にコミットするか> を考える共通意識が整っていきました。マネジメントコーチは、計画策定よりも問題解決に使う時間の方が圧倒的に多いんです。 回数で言うと計画策定1に対して問題解決が10くらい。しだいに問題があった場合は複数人で知恵を出し合い、解決する社風ができていきました。
1か月後の取締役会で、我々経営陣の姿に投資家たちは驚いていました。「君たちに何が起こったんだ? ずいぶんと話し方と内容がイケているよ!」 と。投資家へのプレゼンテーションで、我々経営陣は話し方から話す内容まで、すべてが様変わりしてたんです。 今までは“できない理由”の説明が多かったんでしょうが、 その時は違いました。経営陣のマインドが変われば、投資家たちの目も変わります。前向きで具体的な戦略と作戦及び熱意を投資家たちは汲んでくださり、とんとん拍子に500万ドルの追加融資を受けることができたんです。この取組みがあったからこそ危機的状況にあったGAZOOBAを立て直ことができ、その後大手企業に良い値段・条件で売却できるまでになっていったんです。
―――大橋さんはその後、どういった経緯でマネジメントコーチになったのでしょうか?
もともとGAZOOBAはVCの出資で設立したので、上場するか、もしくは大手企業に高い金額で売却することを目標にしていました。結局売却することになり、私は買い手企業からの条件付きで退職することにしました。条件のひとつに「2年間、シリコンバレーの同じ業界では働かないこと」という縛りがありましてね。今後仕事をどうするか考えていた2000年晩秋の頃、日本企業から経営者向けの講演講師としてお声かけ頂く機会が増えてきました。当時、シリコンバレーでの経営経験を持つ日本人が珍しかったからだと思います。日本の経営者に喜ばれそうなテーマをいくつかピックアップして講演していたのですが、妙にマネジメントコーチの反響が良かったんです。「コーチを紹介してくれ」とか、「大橋さん、マネジメントコーチになったら?」というお声を多くの経営者の方から頂きました。それを受けて、私は米国へ戻ってコーチのハワード氏に相談したんです。
事情を話すとハワードは非常にノリノリで、「OK!!ゼンタァロー、ジャパンでテストマーケティングしましょ!」 「グッドアイディア!」という流れに。料金設定を1日5,000ドルにして日本企業へセールスプロモーションメールを送信したところ全日程が即時埋まり、翌月は前回の倍・10,000ドルにしたんですが、こちらもあっという間にソールドアウト。リクルートさんを初め、アクティブな大手企業様から引き合いを頂きました。私もハワードも両目が「$$」のスロット状態で “これはイケる!相当なマーケットのニーズがあるぞ!”と確かな手ごたえを感じましたね。それから私はハワードとライセンス契約を結び、2001年春から日本でコーチとして活動することになりました。しばらくして、内容を日本向けにアレンジしたものを“すごい会議”と名付け、本を出すなど積極展開していきました。
――なぜ、マネジメントコーチを「すごい会議」にアレンジされたのでしょうか?
いざビジネスとしてマネジメントコーチに取り組んでいくと、 細かなところで自分の考えや日本の文化に合わない点が出てきたので、それを改善し、日本向けのメソッドに変えたんです。 そして、そもそもすごい会議は<ビジネスが成功する方法論>なので、 まずは自分自身が成果を上げようと考えました。私が成功しなければ、すべてがお釈迦ですからね。実際にすごい会議のメソッドを使ってみると、目標設定や取り組む意識に大きな違いが出てきました。普通、シリコンバレー帰りの人間が日本でどうやっていくか?と考えると、 “とりあえず食えるようになる”程度の目標だと思うんです。でも私は、目標を“日本一のコーチ”に設定し、“何を達成できれば日本一と言えるのだろうか?”と考えていきました。「売上を4,000万円上げたとしても、4,000万円は日本一といえるのか」など更に考えていった私は、「お客様の評価」に着目しました。“1年後の顧客リストが自分の評価につながる”と考えたんです。具体的にいうと、誰もが「おぉ!」っと思うトップ企業が顧客・リピーターになってくれたら、自分の評価もあがるはずだ、と。まずは50社ほどリストアップし、知り合いを片っ端から当たり「紹介して!」と頼んでまわりました。 何といっても目標は<日本一のコーチ>ですから、遮二無で真剣です。 それを続けた結果、計画よりも早くたくさんの顧客を獲得し、すごい会議を導入して頂くことができたので、そういう意味でも自身における導入効果があったと自負しています。
ポテンシャルを知り、ハイレベルを目指す。 ~(株)Plan Do Seeの成功事例より
―――ウエディングの(株)Plan Do Seeさんもすごい会議を導入し、飛躍的に発展されたそうですね。
(株)Plan Do Seeの野田豊加社長とは、公私ともに素晴らしいお付き合いをさせて頂いています。今や同社は日経ビジネスの「働きがいがある会社ランキング」のTOP5常連の超人気企業ですが、すごい会議を導入して頂いた2002年当時の社員数は50名ほど、店舗が5店舗、利益は前期2億2千万円だったんです。野田社長は当期利益3億円を目標にしていました。各店舗のマネージャー5名の申告数字を合計した利益予想は2億8千万円。私は野田社長及び5人のマネージャーに、「すごい会議で様々な問題が浮き上がりましたよね、現状抱える問題が解決できたらどのくらいの利益を確保できますか?」 と尋ねたところ、合計が7億円になったんです。「では、利益目標は7億円で行きましょう」と言い、野田社長をはじめ5人の参加メンバーと手を握ったんです。その1年後、5億3千万円の利益が出ました。野田社長は非常に優秀で情熱ある経営者です。そんな社長ですらも「会社のポテンシャルを低く見積もっていた」ってことなんですよね。
―― ポテンシャルを正しく見積り、それにそった行動が大切ですね。 具体的には、Plan Do Seeさんはどのような会議を行ったのでしょうか?
当初、野田社長に「現状何が問題ですか? 」と尋ねたところ、「良い人材が育たない、教育費には結構お金使っているんですけど…」とおっしゃっていました。 また、「何か他にも問題はないですか?」と尋ねると、 「良い人材を採用できない。業界的に女性より男性の確保が難しい」と。私は野田社長に、それら問題を「どのようにすれば~できるだろうか?」 という文章に書き換えてもらい、「文章にはハイレベルの一言を入れてください。3秒で思い浮かばなかったら、とりあえず“世界一”とかつけてください」 と伝えました。 すると野田社長は「どうのようにしたら世界一の人材が育つか」 「どのようにしたら世界一の人材が採用できるか」 と書き、にやっと笑っておっしゃったんです。 「大橋さん、これ面白いね。 うちは人材教育にも採用にもそれなりにお金かけてきたけど、所詮“よい人材”止まりだったんだよね。目指すべきレベルは世界一だ!」 と。 ハイレベルを目指す会社とそうではない会社に大きな差が生じるんです。 私の経験からして “会社を良くしよう” という姿勢で取り組むのは結構難しいんです。 “世界一”を目指すと、結果として世界一にはならずとも日本2位、3位になるんです。
今、Plan Do Seeさんがどんな取り組みをしているかというと、 野田社長初め、社員が真剣に 「世界一の人材採用、人材育成、お客様サービス」を目指しています。長年の努力の積み重ねで採用や人材育成に大きな成果があり、お客様接客対応サービスも飛躍的に高まり、 社会的に高い評価を得て、今ではホテル運営やアメリカにも進出しています。
「問題解決」から考える経営計画のヒント
――2013年2月中旬に朝日新聞出版さんから 『すごい会議 ワークブック2013』をリリースされるとのこと、おめでとうございます。
「すごい会議」は経営計画にも活用できるそうですが、活用のポイントをお教えください。
そもそも、「すごい会議」自体が<経営プロセスの提供>なんです。 具体的にいうと、<目標・計画設定、そして、 その達成に向けた問題解決のプロセス提供とマネジメント>です。 個人の目線を組織の目標達成にフォーカスさせ、目標に“所有感”を持ちながら自発的に取り組めるよう支援させて頂いています。 様々なシーンで使えるので、 会社でのプロジェクト立ち上げの時などにも効果的なんですが、 年度の計画を立てる時期にすごい会議を導入することは非常に効果的かつ効率的です。 年度初めにメンバー間で志を共有することは、 プロジェクトにとって大事な要素になりますからね。
――経営計画を立てる上で大切な考え方や、陥りやすい問題は何でしょうか?
一般的に経営計画は、ほとんどの会社様が「上から下へ落としこむ」、 現場からすると「上から降ってくる」形式なんですが、そうじゃないんですよね。 現場からすると全然面白くないですし、やらされてる感にもなります。自らが立てた目標と与えられた目標、どちらが魅力的か。ほとんどの方が自ら立てた目標に魅力を感じ、モチベーションが上がるはずです。すごい会議で経営者からよくお聞きする問題のひとつに 「現場に、“やらされている感”を持たれてしまっている」があることからも、経営者はそれを分かっていながら、実際の行動は矛盾していることが窺えます。 「理屈ではわかっていても、ノウハウやテクニックを知らない」状態なんですね。 すごい会議は、その状態を変えていきます。具体的に何を可能にするかと言うと、経営層や現場、関連するすべての方たちが満足する計画を立てられるよう促します。それぞれの目標、達成までに存在する問題を洗い出し、解決するための計画を立てる。そしてその計画を志を持って実行していくんです。
問題が解決されると数字が上がるのは、部署単位、個人単位でも同じこと。各部の問題解決は、結果として会社全体の利益を底上げします。 たいてい、現場が打ち出す「問題と目標」は経営ボードが作るものとリンクすることが多いんです。また、せっかく立てた目標や計画も、放っておくと忘れられたり場合によっては悪化してしまいます。それを避けるため、定期的に集まる機会や、 解決策が分からない問題が出てきた時の進め方を決めておくことで、最小限の経営計画とプロセスが手に入りますよ。
――経営計画作成時、経営者自身が心掛けるべきものは何でしょうか?
それは、経営者として「難易度が高い問題を、本気で解決しようとする意思」です。それが無いと“できない理由”の説明が多くなり、 解決に向けての思考や行動が無くなるので成果が出るはずありません。すごい会議では、経営者のマインドを変えていきます。 2002年にある造船会社様のコンサルティングさせて頂く機会がありましてね、 当時、“トンネジ”というネジを年間何トン作るかのランキングがあって、 その会社様は造船会社7位だったんですよ。 私は「会社の業績、バリューを上げるためにトンネジの生産量を増やしましょう」 という話をしたのですが、トンネジ作りセクションの古参役員が 「それは○○だから難しい、だからできない」とできない理由を並べ、端から「無理、できない」と決めつけてたんですよね。 この環境下で三代目若社長のマインドを変えるのはなかなか至難でしたが、 諦めムードを「できる!」というモードに変えるのがすごい会議。 すごい会議導入後、この若社長は問題を次々と解決していき、 今や業界ランキング2位になりました。 造船業と言う比較的凝り固まった業界での7位から2位への浮上は、目を見張る進歩です。
私は経営計画とは「問題を解決するための計画」がベストだと考えています。 トヨタの「ジャストインタイム」が良い例なのですが ジャストインタイムを実現しようとすると多くの問題が発生し、常に「解決しなくては」という流れができることが凄いと思うんです。 ジャストインタイムを追求するからこそ解決するべき問題が浮き上がり、問題解決を続け、やがては発展していくんです。そして、「コミットメントがあるかどうか」も大切です。 簡単に言うと、「何があろうが、何がなんでもやる!」という覚悟があるかどうか。 人はあまりコミットメントしたがらないし、したとしても時が経つと忘れるんですよね…。 しかし、このコミットメントがあるかどうかで、 組織の意識と行動が大きく変わります。
――なるほど。経営計画のヒントが、とても具体的に分かってきました。
すごい会議は今回ご紹介した経営計画の立て方にとどまらず、継続的に維持する仕組みを提供します。 今回ペルソンさんが企画してくださったキャンペーン(大橋禅太郎氏、期間限定特別プライスキャンペーン)をキッカケに一度お試し頂き、“うちの会社向きだな”と感じて頂けたら是非導入していただければと思います。 御社に必ずや高い成果をもたらすことをお約束します。
――本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。
取材・文・写真:鈴木勝彦 /編集:武藤花奈
(2013年1月 株式会社ペルソン 無断転載禁止)
大橋禅太郎おおはしぜんたろう
株式会社すごい会議 代表
日米で数々の起業から失敗と成功を経験し、その過程から、人生やビジネスとより生き生きと楽しく向き合い、喜び、味わうことを体得しました。現在は、日本企業へチームとしてビジネスをパワフルに前進させるための講…
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