最近、事務で仕事をしている一般職や総合職に配置換えした女性を対象とした講演や研修で、主催者から「事務職、デスクワークの仕事はもっと活躍の幅を広げないと、今の仕事は将来、機械に取って代わられるということを伝えてほしい。」という意向をいただくことが益々増えています。
確かに、銀行やカード会社など、金融業界全般では、窓口業務・コールセンターの仕事の7割以上が機械で対応できるように移行されています。他業界でも、今まで人が作成したり、チェックしていた書類も、機械に任せたり、電子化されるようになっています。
今までそれらの仕事を一手に引き受けていた事務職員は、これからどうしたらいいのでしょうか。また、それに対して、彼女たちからはどのような反応が出ているのでしょうか。
まず、反応についてですが、若手の事務職員は、不安だと声を上げています。今やっている仕事は、これからどうなっていくんだろうか。私は会社に残れるんだろうか。そして、他の仕事を探したり、他社に移ったとしても事務職はなくなるわけだから、何をしたらいいんだろうか・・・。特に大手に入社した女性事務職員は、ほかに転職しても福利厚生や給与、会社のステイタスがダウンすることは嫌だと感じ、できれば今の組織でやっていける道を探りたいと言っています。でも会社はこれから、どう変わっていくのか、私たちに何を期待しているのか、明確に上から支持されていないため、身の振り方に悩んでいます。
一方で、ベテラン層の事務職員は、この年齢で急に変化についていくことは厳しいから、何とか今の仕事内容でやっていけたらいいという本音をおっしゃる方が多いです。中には、入社時に言われた仕事内容と違うことに憤りを感じ、研修中、「会社は勝手です!」と不機嫌な方もいました。
世代によっても捉え方は違うものです。また、会社側にも事務職の人たちの活躍の幅を広げると言いながらも、明確な指示が出せていない悩ましい状況があります。会社自体のシステム化と人の配置がアンバランスな状況で、先にシステム化が進んでしまっているという状況です。同じく、上司もこの変化に対応しきれておらず、事務職の女性に、もっと活躍の幅を拡げさせる方針を打ち出せと、会社から言われても、相変わらず今まで通りの役割を期待したり、新しい仕事を任せるのを遠慮してしまったりします。
このような状況の中でも、刻一刻と環境は変化しているのです。では、これから事務職員はどうしたらいいのでしょうか。私は、2つ対策があると思っています。
① お客様との接点を増やす
例えば営業アシスタントやコールセンターなど、間接的にお客様とやりとりしていた事務担当は、もっと外に出てお客様とのやりとりを積極的に行ったり、今まで営業の役割だったところまで、足を踏み入れることです。しかし、それを怖がる事務職員も多いのですが、その理由をお聞きすると、数字を詰められることが怖い、お客様に怒られるることが怖い、自信がないなどです。彼女たちの不安を払拭するには、数字目標を持たせないことと、どんどんお客様との接点を持って慣れてもらう機会を設けることです。電話やメールでしかやりとりのない相手の情報は、少ないものです。直接訪問したり、お会いすることで見えてくる景色や手に入る情報があります。なるべくお客様と対面する機会を増やしましょう。しかし、いきなり一人で対応させるのではなく、慣れるまで、同行するようにした方がよいでしょう。いきなりやって失敗体験で終わってしまわないようにするのがベストです。
② 社内チームプレイができるようになる
事務職の方の中には、コツコツ仕事をするのが好きという方もいらっしゃいますが、実は内勤、事務の仕事こそ、社内チームプレイが必要なのです。他部署との連携、上司の考えをメンバーに共有する、チームメンバーが働きやすいように環境を整えるなどです。残念な事務職員の特徴は、周囲の人が腫れ物に触るよう、気を遣うといった存在です。これからは、どんどん情報を集め、それをもとにチーム内調整をしたり、他部署と話し合いの場を設けたりと縦横無尽に自ら多数の社員とコミュニケーションを図り、仕事を回していくことを期待されます。組織は、情報系統が縦になりがちですが、それを横に紡いでいくことが彼女たちの役割なのです。
企業研修では、当事者である事務職の女性たちにこの2つの対策の話をすると理解してくれます。しかし、一歩踏み出してみるイメージがつかない。また、イメージはついても上司や現場がそれを許可してくれるかどうかを心配します。まずは現場で自ら意志を上司に伝え、相談に乗ってもらうところから始めてみましょう。それが事務職がこれから生き残るための第一歩です。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
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