年の瀬も迫った先日、はじめて生の第九のオーケストラを聴きにいきました。経営者の方やチームをマネジメントしている方には、これは絶対にお勧めです。オーケストラの指揮者を、会社の経営者やグループリーダーにたとえてみると、たった2時間でマネジメントに必要なことがたくさんみえてくるのです。
まずコンサートマスター(第一バイオリンのトップ奏者)が基本の音をだし、全員がその音を基準にチューニングをします。これは、まるで会社の朝の朝礼で、社員が社訓を読み上げて、足並みをそろえているようです。それが終わると、指揮者が入場し登壇します。一瞬の緊張の元、指揮者のタクトにより演奏が始まります。タクト一本で全員を導く指揮者の姿は、会社のビジョンを示す社長やチームの方向性を示すリーダーと同じ。指揮者が変われば音も変わる―会社の経営も同じですね。
オーケストラにはさまざまな楽器があります。管楽器、弦楽器、打楽器、なかにはほんの一瞬しか音を出さない楽器もあります。そうした楽器は目立ちませんが、その曲の演奏にはなくてはならない楽器です。奏者たちは、自分の仕事(楽器)に集中しながらも、いつも視界のどこかで指揮者をとらえています。外で仕事をしている営業マンのようですね。バイオリン、ヴィオラなどの弦楽器とフルートなどの管楽器が同じ旋律を奏でるところでは、経理と営業など、部署が違ってもひとつの仕事をこなそうとする協力体制がみえました。
やがて曲調も盛り上がり、いよいよ打楽器の音を響かせる場面では、指揮者は奥のほうにいる打楽器のメンバーを指し、体を震わせながら、全身で奏者の演奏を引き出します。ここでの指揮者はまるで、ここぞという場面で自らが率先して道筋を示すリーダーのようでした。
そしていよいよ、第九のクライマックスである合唱のパートです。総勢百名近くの大人が、顔いっぱいに口を動かし、4つのパートの音が重なり、メロディを奏でる姿には、音の迫力もあってか文字通り胸を打たれ、ジーンと伝わってくるものがありました。人が力を合わせてする仕事って、これほどまで人をうならせる力があるんですね。経営者として、リーダーとして、こうした仕事を作れたら、どれだけ幸せなことでしょう。
演奏が終わり、拍手が何度も沸き、最後に指揮者が舞台で花束をもらっていましたが、彼はそこから一輪のバラを抜くと、それをコンサートマスターの男の子に渡しました。それを見て会場にあたたかい笑いが起こりました。予想外の行動でしたが、これは指揮者のとても粋な振舞いだったと思います。指揮者のやさしい人間性が垣間見られたことがよかったのでしょう。こういう瞬間って仕事でも大切です。仕事だけの関係の中に、ふとその人の人間性が見える瞬間があると、人はほっとして、その人によい印象を持ち始めます。私も、この指揮者のように、小さなやさしさを配りたいなと思いました。来年も第九、聴きにいこうと思います。
さあ、新しい年の始まりです。2011年が皆さんにとってすばらしい年でありますように。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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