毎年、大手生保や大学が行う「新入社員が選ぶ理想の上司」アンケートというのがあります。2017年のランキングをみてみると、1位内村光良、2位タモリ、3位池上彰、と続きます。ソフトなタイプの方が多いですね。先日亡くなった星野仙一元楽天監督は2000~2008年まではベストテン入りしていたのですが、2009年以降は登場してきません。表舞台で目に触れる機会も減ったこともありますが、時代によって求められるリーダーのタイプが変化してきているのがわかります。
今回は、これまで私が組織で働いたときの経験から「この人はいいな」「こんな人の下で働きたいな」と思った理想の上司を挙げ、そこからどんな特徴があったのかを切り出してみたいと思います。
1.寿司屋バイトのマネージャーSさん
学生時代まで遡りますが、赤坂見附の一流ホテルの寿司屋でホールのアルバイトをしていたときの上司だったマネジャーのSさん。この人は強烈でした。30年たった今でも忘れられません。手こそ挙げませんでしたが、その教え方は…というか教えてもいません。見て盗めです。なにせバイト初日から、何も教わってもいないのにいきなり叱られるんですから。教わる側としては、たまったものではありません。現にそれが嫌で、何人初日で辞めていったことか。でも、私にとっては理想の上司の一人なのです。理由はもうその人の人間性としか言いようがありません。仕事が暇なときはとてもやさしく、こちらに興味を示して話しかけてくれたり、また仕事のあとには本人がお酒が飲めないからと、当時赤坂見附にあったアマンドでケーキをおごってくれたり、本当に愛情を感じたからです。Sさんが怒るのは、仕事のときだけでした。それだけ仕事には人一倍の情熱を傾けていたのですね。当時の私は、ナニクソとの思いで食らいついていき、そのうちに叱られることはほぼなくなりました。Sさんのお誕生日には筆記具をプレゼントしたりもしました。そこにはお互いの信頼関係がしっかりと作られていました。今の時代にはこうしたスパルタ指導、時間外の付き合いなど論外かもしれませんが、昭和スタイルの接し方が懐かしく思い出されます。
2.海外視察企画会社のUさん
この人は、私の独立のきっかけを作ってくれた人です。一人で企業の海外視察の企画から実施までをカバーし、コミュニケーション力のとても高い人でした。Uさんは、上司としてはじめて人として尊敬できた人でした。それまで出会った上司は、仕事はできるけれども人としては……という人が多かったのですが、このUさんの持つ、生きる哲学や仕事に対する考え方はとても共感ができ、そばにいることで多くのことを学ぶことができました。
部下にとって、仕事を超えてその人自身に魅力を感じられる、という部分は大きいと思います。
この二人から私が感じる「理想の上司」が持つ特徴や資質は:
・人間味があふれている:ただ事務的に接するのでなく、自分の弱いところもみせ、憎めない存在であること
・人情がある:叱ったときには必ずフォローしたり、相手の人生に興味をもつこと
・自分の哲学を持っている:自分が信じる哲学があり、それを余すところなくシェアしてくれること
・フェアであること:相手によって態度や評価が変わったりせず、筋がちゃんと通っていること
こうしてみると、やはり価値観が昭和ですね(笑)。でもいまでも通じるものもあります。
たとえば、いまの若い人たちは「上司のほうからいろいろ聞いてきてほしい」と言いますが、これは人情を持ちフォローすることと同じですし、「この作業をする理由をちゃんと説明してほしい」という要望も、筋をちゃんと通すということにもつながります。ですので、時代が変わり価値観も変化していますが、手を挙げたり理不尽に叱ったり時間外に付き合えというのはいけませんが、根本の、人として接するに大切な部分は、そう変わっていないと思うのです。
私は部下を持つような仕事をしていませんが、仕事で年下の人たちに触れる機会があるときには、接し方は今風にしながらも、基本の部分は変えずに行きたいと思っております。
次回は「いまの若い人から上司に望むこと」をお伝えします。どうぞお楽しみに。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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