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現在、世界は脱ガソリン車への動きが加速されています。日本でもハイブリッド自動車、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、燃料電池自動車、クリーンディーゼル自動車等を次世代自動車と定め、2030年までに新車乗用車の5~7割を次世代自動車とする目標を掲げています。今回は次世代自動車についてふれます。
次世代自動車普及の理由と背景
次世代自動車普及の大きな理由は、温暖化防止のための二酸化炭素の削減、一酸化炭素や窒素酸化物、粒子状物質などの有害物質の削減などです。次世代自動車が実用化されるに至った技術的な背景としましては、高性能なリチウムイオン電池など高性能、大容量のバッテリーが開発されたことや、優れた磁石の開発が電気モータの性能を向上させたことなどがあげられます。
経済的な要因としましては、原油価格が上昇したことや、優れた次世代車の大量生産ができるようになったことなどがあげられます。以下では主な次世代自動車について、その特徴などを述べます。
ハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicle)
ハイブリッド自動車とは2つ以上の動力源を持つ自動車の通称で、日本では一般にエンジン(内燃機関)とモータ(電動機)を動力源として備えた自動車がハイブリッド自動車と呼ばれています。発電された電気もしくはバッテリーに蓄電された電気よって、エンジンだけではなくモータでも動きます。
ハイブリッド自動車は、電気自動車の欠点である低出力をガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関で補完することにより、排出ガスの削減と実用性の両立を実現しています。発進、加速、定速走行、減速といった負荷の大小に応じてモータとエンジンを切り替える方式が主流です。ハイブリッド自動車は、発電と駆動の方法により、「シリーズ方式」、「パラレル方式」、「スプリット方式」に大別できます。1997年に日本の自動車メーカーが世界で初めてハイブリッド車の量産を開始しました。
電気自動車(EV:Electric Vehicle)
外部電源から車載のバッテリーに充電した電気を用い、電動モータを動力源として走行する自動車です。ガソリンや軽油などの化石燃料を使わないことから、地球温暖化の原因物質である二酸化炭素や窒素酸化物、炭化水素、粒子状物質などの有害物質を排出しない自動車として普及が望まれています。電気自動車のように環境負荷物質を排出しない自動車はゼブ(ZEV:Zero Emission Vehicle)と呼ばれています。
電気自動車は構造が簡単であることから低コストでの生産が可能であり、工業技術が未熟で、自動車生産の経験がないベンチャー企業や新興工業国にも新規参入の機会がある分野です。2040年に世界の自動車販売に占める電気自動車の比率が54%になるという予測があります。なお、電気自動車で使う電気を火力発電所で作るときに二酸化炭素が発生していることに注意しておく必要があります。
プラグインハイブリッド自動車(PHV:Plug-in Hybrid Vehicle)
プラグインハイブリッド自動車とは、直接コンセントから充電できるタイプのハイブリッド自動車で、家庭用コンセントなど外部電源から夜間電力などを利用してバッテリーに充電し、電動モータで走行します。バッテリーの電力不足時にはガソリンエンジンを用いて走行することになります。
プラグインハイブリッド自動車は、電気自動車とガソリンエンジン車のそれぞれの長所を活かした自動車ですが、製造費は一般車より高くなります。なお、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)と表現されるプラグインハイブリッド電気自動車はPHVと同じ自動車です。
燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)
搭載した燃料電池で発電し、その電気で電動モータで走る自動車を指します。日本で普及が進められている燃料電池車は水素を燃料とします。水素を燃料とする燃料電池自動車は走行時に二酸化炭素や窒素酸化物などの有害物質を排出しないという利点があります。
燃料となる水素は、化学プラントの副生水素のほか、天然ガスの改質、水の電気分解などによって製造されます。副生水素を燃料とする場合は生成時に二酸化炭素の発生はないと考えることができます。しかし、天然ガスの改質で水素を製造する場合には、改質時に二酸化炭素が発生します。世界的にも発電所の主流は石炭などを用いた火力発電ですので、電気分解に使う電気を作る時にも二酸化炭素が発生しています。
クリーンディーゼル自動車(CDV:Clean Diesel Vehicle)
クリーンディーゼル車とは、これまでのものより排出ガスに含まれている窒素酸化物などを一層低減したディーゼル自動車のことを指します。ディーゼル車は本来、二酸化炭素の排出量が少なく、ガソリン車に比べ燃費が2~3割いいという利点があります。
日本では東京都によるディーゼル車の厳しい規制によりディーゼル車は環境に悪いという感情が定着してしまいました。欧米ではディーゼル車は環境に良い車として普及していました。しかし、ディーゼル車の廃ガステスト不正事件が明らかになってから、欧州では環境車とは認められなくなりました。
変革時の企業の対応
燃料がガソリンから電気に変わっても自動車自体は存在しますので、自動車産業は残ります。ただ、脱ガソリンという大きな技術変化がありますので、個々の自動車企業にとっては浮き沈みがあるかもしれません。脱ガソリンの方向ですので、近い将来には多くのガソリンスタンドが無くなってしまうかもしれません。環境対策や省エネ化によって、これまでもガソリンスタンドの数が減少していましたので、経営者には一層厳しい状況に直面することになるでしょう。
その一方で、バッテリーとしてのリチウムイオン電池の生産や、高性能の電動モータの生産が増えていくとになります。次世代自動車の普及という変革の時代、関連の国内の企業が的確に乗り切ることを期待致します。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…
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