人をマネジメントしていく立場にたったとき、必ずぶつかる問題があります。それは、「結果さえ出せば何をやってもいいだろう」という部下をどう扱うか。
仕事は確かにできる。売上の数字も上げる。ただ、勤務態度は悪く、朝遅刻してきたり、周りの士気を下げるような発言をしたりする…でも上司としては、その部下がいないと数字が上がらないので、ついその人に対して、甘くなってしまい、ご機嫌をとるようになってしまうのです。
先日、ある大手食品メーカーSの二代目社長(70代後半)さんにお会いする機会がありました。昭和のはじめに御父様が創業し、長男である彼が仕事を継ぎ、いまは引退されて新しい世代の経営者が会社を運営しています。
お話を伺っているなかで、このことが話題にあがったので、彼自身はどう思うのかを聞いてみました。
「先代は、”人にはプラスとマイナスがある。もしプラスのほうが大きければ、その人を使いこなすのが経営者だ”という考えだったが、それを認めていると、ほかの社員のモラルが下がる。どれだけ仕事ができても、ほかの部分でマイナスが目立つなら、それは思い切ってその人をあきらめるのが僕の考えだ。それはその人の質が悪いのだ」
この社長さんの会社でも、先代が信用をおいていた経理の人間が、実は調べてみると、裏ではとんでもないことをしでかしていたことが判明し、それ以降、そういった人には退場いただくようにしていたそうです。
しかし、これはなかなか勇気のいることです。もし自分の部下にそういう人がいたら、どうしても甘くなってしまうでしょう。数字をあげてくれるのは嬉しいことですから。でも、そういう迷いを、この昭和、平成をかけぬけてきた社長の実体験が打ち消してくれました。
組織は一人の優秀なプレイヤーの力だけで回るものではありません。たくさんの人が気持ちよく働けるようになるには一定のルールが必要。それを上司は毅然として示し、それを守れない人は退場してもらうくらいの覚悟が必要なのです。
結果を出している人に、その他の行動面で注意をすることにはみな嫌がりますが、「これだけの結果を出している君だからこそ、みんなの模範になってもらいたい」と期待を込めて忠告のメッセージを発信したり、伝え方を工夫することはできます。ここがマネジャーの腕の見せ所ではないでしょうか。
ルールで縛るような官僚的な組織。かたや放任主義でやりたい放題の組織。両極端はよくありませんが、そのバランスをうまくとるのが、マネジメントの仕事なのです。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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