「よい会社」とはどんな会社か。企業研修では、度々そのような議論をさせていただくことがあります。また、キャリア相談に来られた女性に対しても、今の会社が「よい会社」なのかどうかを軸に、今の会社に居続けるべきか、転職すべきかを検討します。
さて、「よい会社」とは、どのような会社でしょうか。
最近では、社員が働き続けやすいように、制度を整えたり、残業時間を減らしたり、勤務間インターバル制度(勤務の終業時間と翌日開始の間を、一定時間空けることにより、休息時間を確保すること)を設けたり、様々な取り組みを導入している企業も増えています。
これらは、働き続けやすさを追求したもので、働き方改革にとっても大事なことであり、実際そのような企業は魅力的です。しかし、これだけでは「よい会社」かどうか判断はできません。「よい会社」かどうかの判断は、社員が、制度面に加え、成長のチャンスや活躍の場をもらえるかどうかだと私は考えます。つまり、制度の導入をして会社の居続けやすさを向上させるだけでは、「よい会社」とは言えず、社員が成長でき、彼女たち自身の市場価値があがるかどうかもセットで考えていく必要があります。
先日、ある企業の女性事務職研修の中で、今の定型化した仕事は、これからロボティクス化、AI化する可能性があるので、自身の付加価値を高めようといったお話をさせていただきました。現に、彼女たちは、目の前の仕事に対して不安を感じていました。自分の仕事はいずれなくなるか、変化していく。その時、必要とされるのだろうか、他でもやっていけるのだろうか・・・と。そこで、研修では、会社にとってすべきことは何なのかを考えてもらいました。その結果、受講後のアンケートでは、「やるべきことがわかって、不安が払しょくされた」と前向きな言葉が多く聞こえてくるようになりました。その研修後、上司の皆さんに彼女たちのフォローをお願いしたのですが、上司によって様々な反応がありました。「気づいたことは、どんどんやりなさい。」とおっしゃる方がいる一方、「新しい取り組みより、あなたには、目の前の言われたルーティンワークをちゃんと回してほしいと思っている」という声も。しかし、具体的に聞いていくと、そのルーティンワークは、いずれ、なくなる仕事だったのです・・・。
また、別の会社の男性管理職研修で、女性部下に期待していることをお聞きしたら、「ムードメーカー」「笑顔」とおっしゃる方が多かったのです。実際、お茶をいれたり、電話を取るのは女性の仕事といった企業風土で、掃除当番もまた女性の仕事でした。
このように様々な企業のお手伝いをしていると、ダイバーシティ推進、働き方改革に伴って確実に前に進んでいる会社と、まったく景色が変化しない会社とに大きく分かれるのを実感します。
「よい会社」は、社員が成長するための活躍のチャンスをもらえること、そして、経験を積むことで社員の市場価値があがっていくことと申し上げましたが、先に紹介したような組織風土や上司のもとでは、残念ながら女性社員の市場価値はあがりません。
そんな中、最近、女性の人事担当者から「女性が活躍しやすい組織風土にしたいんです!」という相談が増えています。どの企業もお話をお伺いしていくと、優秀な女性を採用できているのに、現場に配属した途端、頭打ちになってしまうとのことでした。上司が、女性部下の将来に期待しておらず、仕事を任せてくれないことが原因なのです。そのため、優秀で意欲の高い女性は、見切りをつけて辞めていってしまうのです。その風土をなんとか変えていきたいという想いを受け取らせていただき、一緒にどうしたらいいのかをコンサルタントとしてサポートさせていただいています。
組織風土を変えるのは大変かもしれませんが、個人個人で、女性が頑張るのではなく、協力しあって声を上げ、結果を出していくことで、少しずつ周囲の認識が変化していきます。
しかし、「それまで、待てません」という成長意欲の高いキャリア相談に来られた女性には、早めに、女性でも活躍しやすい企業への転職を勧めることがあります・・・。
人手不足が叫ばれる中、特に優秀と思われる人材は、どの企業でも必要とされています。成長意欲が高い、能力高い人材が、その組織に居続けてくれるかどうかは、風土はもちろんのこと、上司が部下の未来まで考えてくれているかどうかによります。
これらから、管理職には、部下育成こそが大事な自分の仕事であるという認識と、上司自身に視野の広さや、世の中の変化にキャッチアップするスキルを持ってもらうための教育が必要だと感じています。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
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