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2004年11月05日

いまに見てろ

●「いまに見てろ…」のエネルギー
 先日、大阪でコーチングの講演をやった際、「人によって動くポイントが違い、相手によって言葉や誉め方を変えることが大事」という話をしました。感想の中にも「誉められても嬉しくない人がいるのを知って驚いた」などとありましたが、実際いるんですね、そういう人達も。

さて今月は、何が自分を動かす原動力になるのかについて考えてみたいと思います。

●そりゃ、誉められりゃ…
 もちろん嬉しいですよ。特に女の子に(笑)。
 学生時代、あまりモテなかった不器用な僕は、女の子に「スゴイネー」と言われたかったし、自分に興味を持ってもらいたかった。でもアプローチするときのネタがない。なのでいつも自分が成し遂げた成果や結果をさりげなく見せていたような気がします(おーハズカシ…)。留学したこと、大きなバイクに乗っていること、バックパックで旅行したこと…。

 暗い川村クンは、そうでもしないと自分を認めてもらえないと真剣に思っていたのです(笑)。

 それと父親にも認めてほしかったですね。父親は権威の象徴ですから。うちの父はあまり僕を誉めてくれません。だから、学校でいい成績をとったり、いい子でいることで自分を認めてもらおうと思っていたのだと思います。まさに心理学の教科書に書いてある通りでした。

 しかし、これらより、もっと強い、ドロドロした、僕の中にマグマのように流れるエネルギーがあるんです。それが「いまに見てろ…」という負のエネルギーです。これは、誉められるのと正反対に、むしろ、馬鹿にされたり、屈辱を味わったとき、その力がぐぐんと蓄積されます。そして群発地震のようにじわじわと自分を長期にわたって動かし始めるのです。

●英語をはじめたきっかけ
 子どもの頃、どもりがちだった僕はとても辛い思いをしました。クスクス笑われたり、友達からいやがらせを受けたり。日本語がスラスラしゃべれるみんながうらやましかった。そしてこう思ったのです。「いまにみてろ。英語で頑張れば、笑った奴らを見返してやれるんだ」――これが僕の根底に流れる反骨精神でした。

●留学
 これもやはり挫折から。中2のとき、友達のお兄さんが通う帰国子女向けの高校の文化祭に行き、偉く気に入った僕はそこから猛勉強。結果、補欠20番まで食い込んだものの、ついに順番が回ってきませんでした。もう悔しくて悔しくて。そしてどうしてもあきらめきれず、高1のとき、また文化祭を訪れ、なんと職員室に押し入り、そこにいる先生を捕まえて直談判したのです。

 「何とかして編入する方法はないのでしょーか、先生!」 (我ながら恐るべし行動力!)

 でも、そんなの、無理な話ですよねぇ。で、結局その行き場のないエネルギーが留学へと向いたのです。高校の先生は反対でしたが、いやー本当に行ってよかったです。

●寿司屋のバイト
 バイトの初日、普通だったら手取り足取り教えてくれるもんだって思いますよね、皆さん?しかしその四谷にある大手ホテルの一流寿司屋は厳しかった。なにせ、入ったその日から「なにやってんだ」って頭ごなしに怒られるんですから。そんなの、最初からできるわけないでしょう。これでほとんどのバイトはすぐ辞めてしまいます。

 しかし、僕は辞めなかった。例によって「いまにみてろ。いつの日かギャフンと言わせてやるわい…」と思いながら、グッとこらえて耐えていたんです。次の日から心の中で静かな戦いです。そのうちマネジャーも自分を認めてくれるようになって。結局2年半続きました。いまでも顔を出すと御寿司を食べさせてくれます(タダ同然で)。あーあのとき辞めなくてよかった!(寿司大好きなので)。

●はじめて本を出すとき
 このときも自分は絶対におもしろいと思っているのにどこも取り合ってくれない。10社回っても断られ続け、ついには「あなたのような持込企画は山のようにあるが、まず形にならない」という返事をもらったとき、もうカーッときて「いまにみてろ。ゼッタイ本にしてやるからな」という怒りで、あきらめるどころか、ますますヒートアップしたのです。おかげで21社目でようやく取り上げてくれる編集者に出逢いました。ホッ。

●マイナスのエネルギーをうまく利用する
 こうして自分を振り返ってみると、自分がぐーっと動くときって、ほとんどこの「負のエネルギー」に突き動かされているんです。この力は、スゴイ。ねちっこくて、粘りがあります。誉められようとして動くときは、どちらかというと足元がフワフワしている感じ。相手の顔色を見てるっていうか。

 でも、「いまに見てろ」のときは、自分の存在の危機がかかっているような、ズズーンとした重いものなんです。

 きっと誰にもこの負のエネルギーはあるのでしょう。うまくいかない人はそれに負けてしまって、自分を責めたり、落ち込んだりしてしまうのでは?それに負けてはいけません。自分の存在をかけて思いっきり跳ね返せばいいんです。「チクショー、ふざけんなー」って。そうすれば、縮まったバネが反発するように、あなたを強く動かす力になるはずです。

 いつも講演で「皆さん、プラス思考に、前向きに」という話をしている僕ですが、実は僕は「いまにみてろ…」という負のエネルギーで動いていることが多いみたいです。でもこのエネルギーのお陰で力が出て、いろんなことが実現しているんですから、結局はプラスになっているわけで。さて、皆さんは、誉められて動くか、踏まれて動くか、どちらのタイプですか?

(今回はちょっと、内面のドロドロした部分をあらわにしてしまいました。でも表面はいたってひょうひょうとしていますので、これからお会いする皆さん、どうか御安心を(笑))。

<今月のレッスン:負のエネルギーは、向きを変えてうまく利用しよう。>

川村透

川村透

川村透かわむらとおる

川村透事務所 代表

「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…

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