さて、今回はちょっと野球の話をさせてください。
海の向こう、アメリカのマイナーリーグでメジャーリーグでの昇格を目指している元巨人の桑田真澄投手。その彼が試合中、外野フライのベースカバーで三塁に走り、そこで巨漢の審判とぶつかって倒れたあの姿をテレビで見た皆さんも多いでしょう。思わず「あーあ!」と叫んでしまいました。
●野球も人生も何があるかわからない
あの映像を見て、「何やってんだ、あのボケ審判!」って思いませんでしたか?
正直、僕は思いました。そしてあの審判にとても腹を立てていました。だって、巨人から戦力外通告を受けた彼が、ようやく夢だったメジャーデビューのチャンスをつかみ、厳しいセレクションにも残り、夢のメジャーのマウンドまで本当にあと一歩のところまで来ていたのに、それをあのドデカイ奴とぶつかったおかげでパーですよ。
幸い、骨には異常なく、手術はしなくても大丈夫とのことでしたが、僕はこの後の会見で桑田が何を言うかとても興味がありました。
すると、彼はこう言ったのです。
「審判の3人制には気づかなかった。注意力が足らなかった」
「まあ、野球も人生も何があるかわからないから。これをプラスに変えなくちゃね」
(おい、ホントかよ?あのぶつかった審判野郎を恨んでないのかい?)
その表情には、相手のせいにするようなところはみじんもありません。
僕だったら
「あいつ、どこみてんだよ。お前のおかげでパーだよ」
そういう思いを拭い去れなかったと思います。
しかし、桑田はこういう不慮の出来事も含めて野球として考えている。誰がどうみても、あの審判がちょっと気をつけてくれていたら避けられた事故なのにと思うのに。
さらに、開幕デビューにこだわる報道陣の質問に「いや、別に早さを競ってるわけじゃないから」と言ってのける。
皆さんも、もし自分にどうみても自分のせいじゃない出来事が降りかかってきたとき、さらっとこう言えるでしょうか。
●骨折してよかった
野球からみで恐縮ですが、この前、松井秀喜の本「不動心」を読みました。彼は昨年の5月、外野へ飛んだフライを捕ろうとして滑り込み、手首を骨折しました。これはそのとき、またこれまで彼がピンチにたったとき、どう考え、困難を乗り越えてきたかが書いてあっておもしろかったのですが、彼の本を読んで、ひとつ発見をしました。本の中で何度も何度も同じフレーズがでてくるんですが、
「あのとき骨折してよかった、と言えるようになりたい」という文です。
ここからわかったのは、「ああ、松井くらいの選手でも、意識して起きた出来事の意味を変えようと努力しているんだな」ということ。彼も私たちと同じように落ち込み、それを克服しようと頑張っているんですね。本の後半では、次のように骨折してよかったことの意味づけがでていました。
・ 骨折した箇所は以前と比べて強くなる(=これまで以上の負荷をかけられる)
・ より負荷をかけられるなら、トレーニング次第でいままでより鍛えられる
・ それにより打球の飛距離を伸ばせる可能性だってある
こうして自分を納得させているんですね。思わず「松井、僕の本を読んで!」と言いたくなってしまいました(笑)。
●そんなことがあるのも人生
桑田や松井に共通していること。
それは【起きたことをくよくよ考えない。そこにどう意味をつけるかを考えている】ということです。
誰がどうみたって、自分は悪くない、ついてないとしかいいようのないこと。それが起きたときに、「そんなことがあるのも人生」と思ってみる。そして、それをプラスに変えるもののみかたをみつけ、今日できることをやる。
僕だって、後悔することはたくさんあります。一番つらいのは、自分はそういうつもりじゃないのに、大切な人にいやな思いをさせてしまったり、傷つけてしまったりすること。
それに遅ればせながら気づいたとき、僕はいつも「ちょっと待って。いや、僕はそういうつもりだったんじゃなくて、こういう思いだったんだよ。お願い、わかって」と過去に戻って、そのときの相手の思い違いを正そうとする。
でもこれってあまりうまくいかないようです。
それよりも、「そんなことがあるのも人生」と受け止め、それは自分を変えるための出来事、サインだったと思う(これが大事)。そして、いま、できることを相手に対してやる。そう思ったほうがうまくいきます。
一流のスポーツ選手の言動から、学べることは多いものですね。桑田投手、ガンバレ!
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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