私ごとで恐縮ですが、このたびはじめて「作業場」なる場所を借りることにしました。
これまでは、「そんな、お金がもったいない」、「家でやればいいよ」と、思っていたのですが、気持ちを引き締める意味でもいいかと思い…。
なのでいままでは「なんちゃって事務所」でしたが、これからはちゃんとした「事務所」です!(エヘン)。
で、今回事務所の物件選びのプロセスで学んだこと。それは「自分にとって何が大事なのか」ということ。
住む家、仕事、または彼女選び…。そのつど人は迷い、悩むもの(エッ、あなたはお悩みにならない?うらやましいです)。今回は、迷えるあなたのご参考になれば。
●日当り、駅近、築浅?
せっかく事務所を借りるのですから、どうせならとことん納得して選びたい。そこでネットで検索開始!場所は京王線聖蹟桜ヶ丘駅周辺です。夢はどんどん膨らみます。
「カッコイイところがいいな」「駅から5分以内の商業地域がいいな」
しかし、予算もあるので、結局次の2件に絞りました(家賃はほぼ同じ)。
【物件1:Kビル】
築30年近い赤レンガ張りの古びた雑居ビル
エレベータなし5階(最上階)。室内にはハリ突き出しあり
駅徒歩3分。方位:真南
バイク駐輪場なし
【物件2:Nビル】
総世帯数100以上の分譲マンションタイプ。
外壁は白タイル張りでカッコイイ。
6階建の3階
1階エントランスはオフィスロビーの雰囲気
駅から歩7分、方位:南西
バイク駐輪場あり
さっそく下見です。まずはKビル。不動産屋の兄ちゃんに案内されるその先は、ビルとビルの谷間の、幅1メートルもない暗い通路。いきなりガッカリです。そしてその先には、ストッパーのこわれたガラスのドア。「壊れてるし…」(ブツブツ)。そして中に入ると、なぜかいきなり洗面台が!(なんでこんなとこにあるんだ!)。そこはなんだか昭和のレトロな雰囲気。そして急な階段を上り、やっと5階へ。中に入ると思ったより狭い。ワンルーム6畳の広さなのですが、突き出したハリのせいで余計に狭く感じる。部屋は元々和室だったのを無理矢理フローリングにした、なんちゃって洋室。その証拠にふすまもある。案内の兄ちゃんも「まあ、それなりですから」と一言。
駅から近いのと、日当りと眺めだけはいいんですが、いかんせん「雰囲気」がねえ…。
次にNビルの下見です。こちらは駅から少し離れるものの、ガラス張りのエントランス、オフィスロビーみたいな受付、そしてエレベータ。4階で降りると、床はカーペット張り、そして部屋のドアがざーっと並び、ちょっと閑静なオフィスフロア風。ここだけ千代田区って感じです(笑)。部屋は本当の洋室でふすまもなし。小さなバルコニーもついている。ただこちらはペット不可。もしこの先、うちのりゅうを連れてきたくなっても無理そうです。
●そんなの見ちゃダメ!
さあ、どちらにしようか。
できれば駅のそばのKビルがいいのですが、ビルの雰囲気がどうも納得いかない。思わず、不動産屋のオヤジ、ハシヅメさんに相談。
「あの入り口の雰囲気、どうにかならないスかねえ。それにあのハリ、邪魔だなあ」
するとハシヅメさん、こうおっしゃる。
「川村さん、そんなのは見ちゃダメだよ。用は自分にとって何が大事かだよ」
そんな、見ちゃダメだって、毎日いやでも目に入るじゃないすか!薄暗い通路、ストッパーの壊れたドア、そしてワケのわからん洗面台…。
でも、彼の一言で、僕のもののみかたがスコーンと変わったのです。
なぜ、自分が事務所を借りようと思ったか。
それは、自分だけの隠れ家的な空間で、落ち着いて仕事や創作活動をしたかったから。
別に人からどう思われるかとか、見栄や体裁をはるためじゃなかった。
そう思ったとき、僕の記憶にパッとよみがえってくるものがありました。パリ郊外で訪れた、あのゴッホが晩年を過ごした「オーベル・シェル・オワーズ」のラブー亭。そこの二階の屋根裏部屋で、ゴッホは間借りをしていたのですが、その部屋のイメージが浮かんだのです。
「そういえば、あの部屋の天井も斜めだったよなあ」
【ゴッホ=屋根裏部屋=クリエイティブ】と、そんな公式が勝手に僕の頭に…。
●クリエイティブの文字が見方を変えてくれた
そう思うと不思議なもので、これまでいやだったあの突き出したハリが、あのハリがあるからこそ屋根裏部屋の雰囲気がある、ともののみかたがガラッと変わったのです。
・屋根裏部屋、隠れ家、うーんカッコイイ。ならば5階だからこそ意味があるぞ。
・最初はボロい雑居ビルだからいい。だって、HISの澤田さんだって「机二つ、電話一本からの冒険」だったって言ってるし。そのほうがその後のストーリーがおもしろい。
・不動産屋のオヤジも言ってた。「あのビルに入った人は出世して出て
行く」って。
僕は「クリエイティブ」って言葉にめちゃくちゃ弱い。この言葉が、僕の中でそれまで「ボロ雑居ビル」だったのを「夢の屋根裏部屋」に変えてくれたのです。
こうして川村事務所は新たなスタートを切ったのであります。
感想はどうかって?
ハッハッハ、いやーもう気分は最高ですよ。真南で目の前が窓っていうのはチョー気持ちイイ。斜めに突き出したハリは屋根裏部屋の雰囲気十分。仕事場に来るのが楽しくなりました。
(注:入り口の洗面台は相変わらずそこにありますが、目をくれないようにしています)
何かを決めるとき、つい周りの価値観に惑わされる。
そのとき、自分にとって何が大事なのかに立ち返ること。
そうすれば、おのづと答はみえてくるものです。
もしお近くにお越しの際はお寄りください。
ただし、5階まで階段を上がる覚悟があれば、ですが(汗)。
▲我が屋根裏オフィスより多摩の丘陵をのぞむ。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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