今回は、目を海外に転じてみましょう。日本以外の国々では働き方改革はどうなっているのでしょうか。
フランスの働き方改革
フランスでは、かなり先を行っています。フランスは個人の権利がかなり保護されており、たとえば個人が複数の企業に勤める、つまり多重労働契約は法律で認められているのです。日本ではまだ多くの企業が副業に渋い顔をしているのに、です。
つまり、昔のように直線的で連続的なキャリア(ひとつの会社に入り、そのまま定年までいたり、あるいは転職してまたそこで働く)に変わり、断続的かつ同時並行的なキャリア(同時に複数の企業で働く)が増えている時代にあって、国の法律もそれに合わせて変化しているのです。
たとえば、「就労活動個別口座」という制度があります。これは、マイナンバー制度のように、国が各個人に口座をつくり、転職で仕事が変わったり、育児や介護でキャリアが断続的になっても、働いている期間で得た権利(有給や社会保障など)をプールでき、次の仕事でもその権利を持ちこせるというものです。イメージとしては、携帯の番号ポータビリティみたいなものですね。確かに日本では、せっかく一つの会社で有給を貯めても、会社を辞めてしまえばゼロに戻ってしまいます。また勤続年数に応じてポイントを獲得でき、そのポイントは職業訓練や育児・転居支援、サバティカル(長期)休暇、親の介護、社会活動休暇、パートタイム移行時の減収分補てんなどに活用できるようになっています。
さらにすごいのは、従業員300人以上の企業で2年以上勤めると、仕事をいったん中断し、転職活動や研修を受けたりするために休む権利が認められており、その中断後、再度同じ会社に同じ待遇(地位・報酬)で戻ることが保障されています。これらからも、フランスという国は、個人の権利がかなり守られているのがみてとれますね。
イギリスの働き方改革
イギリスはどうでしょうか。フランスほど個人が保護されている印象はありませんが、日本よりも半歩進んでいる感じはします。育児休暇、父親休暇などの制度も日本より内容は充実していますが、おもしろいところでは「柔軟な働き方の申請権」というのがあり、これは6歳未満の子供または18歳未満の障害をもつ子供の親は、柔軟な働き方(労働時間の変更、勤務時間帯の変更、在宅勤務のいずれか)を申請する権利があります。つまり、たとえ会社にそういった制度がなくても、個人はそうした働き方ができるということですね。
ほかでユニークな働き方としては、圧縮労働時間制(週五日勤務を四日勤務に変更できる。ただし、総労働時間は同じ)、二人のパートタイム労働者がひとつのフルタイムの仕事を分担するジョブ・シェアリング(これがあれば急用があっても仕事が止まらずに済みますね)、また子供の学校の休暇中は無給休暇がとれる制度などがあります。
アメリカの働き方改革
最後にアメリカですが、さすが自由の国、アメリカ。フランスのように国として、柔軟な勤務形態を保障する制度はありませんが、それぞれの企業ごとにさまざまな制度があるようです。最たるものは、シリコンバレーなどのスタートアップ企業。こちらの働き方は、まさにスーパーフリー(完全に自由)で、成果を出せば何をしてもいいと言わんばかり。オフィスも自宅のように自由で、ペットを連れてこれたり、趣味の自転車が何台も置いてあったり、バランスボールやビリヤードがあったりと遊び心満載です。こうしたなかで成果を出すというのは、まさに自由と責任を実践している人でないと難しいかもしれません。
いかがでしょうか。こうして世界の事例をみると、日本の取り組みはやっと始まったばかりといえそうですね。
次回は最終回、働き方改革‐まとめ編をお送りします。どうぞお楽しみに。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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