今回は放射線から身を守る方法や、放射性物質を避けたり、
体内から除去する食物について触れてみます。
【放射線から身を守るための手段】
万が一放射能漏れに遭遇した場合、
放射線から身を守る3原則は下記のとおりです。
(1)放射線の線源に近づかない
(2)放射線から遮蔽された場所(コンクリートの建物内など)に移動する
(3)安全な場所で、冷静に時間の経過を待つ
原子力事故による放射線や放射能の漏えいが起きたとき、
線源の近くにいる場合は可能な限り離れて下さい。
放射線の強さは距離の二乗に反比例します。
同様に、拡散した放射性物質の濃度は発生源の近くでは
距離の二乗に反比例すると考える事ができます。
放射線漏れが小さく、直ぐに避難の必要のない時は、
なるべく屋内に待機しましょう。
特に放射線をよく遮蔽するコンクリートの建物の中が望まれます。
コンクリート建物内では約9割、木造家屋内では約6割の放射線を遮蔽します。
身体や衣服が放射能汚染した場合はシャワーを浴び、
衣服を洗濯して放射性物質を取り除きましょう。
放射能を含んだ食物に口にして、内部被曝の被害が大きい場合は、
放射性物質の種類に合った薬を飲んだり、点滴するなどの治療が必要です。
例えば、ヨウ素の場合は安定ヨウ素剤、セシウムならプルシアンブルー、
プルトニウムなどはキレート剤を服用するか点滴します。
ただし、これらの服用においては専門家の指示に従って行って下さい。
放射能漏れなどの緊急時には、間違った情報やデマなどに惑わされず、
公的な情報に従って冷静に行動されることが大切です。
【放射線被曝を少しでも減らす方法】
放射線もしくは放射能の発生源から遠くに離れているような場合に、
少しでも放射線被曝を減らすには次のような方法があります。
□外出は控え、建物の中にいること。
屋内にいるときは、なるべくエアコンは使わず、外気を入れず
密閉した状態がベストです。外出する場合はマスクをして、
夏でも肌を覆い、帰宅時は服の埃を払い、手をよく洗いましょう。
□雨に濡れない
大気中を漂う放射性物質は雨により地上に降下します。
放射性物質の飛散・放出直後の雨は
高濃度に放射性物質を含むことがありますので注意して下さい。
□食品に付着した放射性物質を除去する
浄水器の使用は、水の放射能の低減にある程度効果があります。
野菜は洗うと10~30%、ゆでると40~80%の付着した放射性物質を除去できます。
なお、胎児や乳児は細胞分裂を盛んに行い成長している分、
大人以上に放射線の影響を受けやすいので、より細やかな注意が必要です。
【放射性物質を避ける食物】
放射性物質と類似する「放射性の無い成分」を持つ食物を
摂取することで、放射性物質が体内に吸収されるのを防ぐ効果があります。
高校の化学の授業で周期律表を学びますが、
元素は類似の化学的性質を持つものでグループ分けすることができます。
金、銀、銅は1B族に属し、貴金属のグループです。
ナトリウムやカリウムはセシウムと同じ1A族に属し、
化学的性質が互いに似ております。
同様に、カルシウムやマグネシウムはストロンチウムと同じ2A族に属します。
筋組織でナトリウムが不足していますと
代わりにセシウムが吸収され易くなります。
同様に、骨にカルシウムが不足していますと
代わりにストロンチウムが吸収されやすくなります。
このような事実を踏まえて日頃から食品の成分を
理解しておくと大変役立つでしょう。下記を参考にされてください。
<各放射性物質の吸収を抑える食品>
□放射性ヨウ素に対して
放射性の無いヨウ素を多く含む昆布、ひじき、わかめ等
※人体の甲状腺に放射性のないヨウ素を
予め飽和させておくことで、放射性ヨウ素の吸収を防ぐことができます
□放射性セシウムに対して ※筋組織に吸収され易い性質を持つ
カリウムやナトリウムを多く含む味噌、納豆、
梅干、海藻類、ぬか漬け、さつまいも等
□放射性ストロンチウムに対して ※骨に吸収されやすい性質を持つ
カルシウムを多く含む小魚、干しエビ、しらす、煮干し等
【放射性物質を除去する食物】
セシウムなどの放射性物質が体内に入った場合、一時的に体内の組織に
吸収されることがありますが、体内に蓄積して増えていくことはありません。
体内に入った金属は常に排出されており、2~3ヶ月ぐらいで
体内から除去されます。
体内からの放射性物質の排出を促進させる方法として、玄米の摂取が有効です。
玄米の食物繊維やフィチン酸には放射性物質の排毒効果があります。
また、発酵食品の摂取も効果があります。
乳酸菌や納豆菌によって免疫細胞が活性化され、腸内環境を整えて、
セシウム等の放射性物質の排出が促進されます。
【ひまわり栽培によるセシウム除去法】
事故前の原子炉では、ウランの核分裂反応により
様々な放射性物質が生成されています。
中でも放射性セシウムや放射性ヨウ素は他の物質に比べて
大量に生成されており、原発事故により大量に放出されました。
原発事故から数ヶ月が経った今、
半減期が8日の放射性ヨウ素の大半が消滅しており、
現在放射線を出している物質はほとんど放射性セシウムです。
土壌に残った放射性セシウムを除去する方法として、
ひまわりの栽培があります。ひまわりはストロンチウムを花に、
セシウムを根に蓄積します。
20日で放射性物質の95%を土壌から吸収したとの研究報告もあります。
現在、ひまわりの実験栽培が福島県飯舘村で実施されています。
ひまわりの放射能除染効果がどれだけあるかが、
この実験栽培で明らかになると思います。良い成果を期待いたします。
食物による内部被曝が心配されていますが、
本コラムの放射性物質を避ける食物や、
体内から放射性物質を除去する食物についての情報を参考にして、
皆さまでも食生活を工夫してみて下さい。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…
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