今回は新エネルギーについてお話をいたします。太陽光発電、風力発電、バイオマスエネルギーなどが新エネルギーと呼ばれていますが、再生可能エネルギーもしくは自然エネルギーと呼ばれることもあります。
■新エネルギーの新展開
地球温暖化対策、また脱原発の対策として太陽光発電や風力発電が日本でも大きな期待が寄せられています。
風力発電はより背が高く、より大きい風車が一般的に発電コストが有利で、世界の趨勢は風車の大型化に進んでいます。日本でも1~2メガワット級の風車の建設が進んでいますが、やがては5メガワット級の風車も登場してくるでしょう。風力発電は北日本や日本海側、海岸部が立地に適していると言われています。
太陽光発電は、日本では住宅用の装置が有名です。設置効率や保守、点検の便利さ、トータルの発電コストの有利さから世界の趨勢はメガソーラーに進んでいます。
メガソーラーとは広大な敷地に太陽光パネルを設置して発電するもの。日本でも一ヶ所で住宅用の約1万倍もの発電能力を持つメガソーラ発電所が建設されています。私も今後のメガソーラーの発展を期待しております。ただし、休耕田や耕作放棄地をメガソーラーの用地として利用する場合は、様々な法律の改正等が必要となってきます。
現在日本では風力や太陽光発電の電力全体に占める割合は約1%。原発事故以前は原子力発電で約29%の日本の電力を賄って来ました。脱原発による新しい電力源を新エネルギーに求める場合は、今後は風力発電や太陽光発電を飛躍的に発展させる必要があります。
■RPS法とグリーン電力証書
日本では新エネルギーの推進策として、設置時に出される補助金制度や、2009年から実施されている「固定価格買い取り制度」があります。その他、RPS法やグリーン電力証書の制度が新エネルギーの普及を促進して来ました。
RPS法とは、2003年4月に施行された「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」のこと。電気事業者に新エネルギー等から発電される電気を一定割合以上利用することを義務づけ、新エネルギー等の一層の普及を図るものです。対象となるエネルギーは、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、中小水力発電、地熱発電などです。
グリーン電力証書の制度は、太陽光発電など自然エネルギーによって生まれた電気がもつ環境保全の「環境付加価値」を、証書という形で取引をするための制度です。現在日本では認定を受けた設備からの電力に対して発行され、売買されています。将来は、広く家庭用太陽光発電設備にも適用されることが期待されます。尚、米国ではこのグリーン電力証書の制度により新エネルギー普及が強力に進められています。
■固定価格買い取り制度
「固定価格買い取り制度」は、太陽光や風力で発電された電力を、固定価格で電力会社に買い取らせることにより、新エネルギーの普及をはかるものです。
かつて日本は住宅用の太陽光発電装置の設置に厚い補助金を出すことで、太陽光発電の普及に努めました。その結果、太陽光パネルの生産量と太陽光による発電量で、日本は世界一になりました。
それに対してドイツでは、太陽光等の新エネルギーに対する固定価格買い取り制度を実施したことで、日本を抜いて太陽光パネルの生産量および発電量で世界一になりました。
そこで、新エネルギーの一層の推進を目指す日本は、2009年よりドイツのように固定価格買い取り制度を実施するようになりました。日本の現行の固定価格買い取り制度、およびドイツの固定価格買い取り制度の概要は下記の通りです。
【日本の固定価格買い取り制度(※2009年より実施)』
保障期間: 10年
買取範囲: 発電して使った余りの電力
買取価格: 住宅用42円、住宅用以外24円(kWh)
導入補助金: あり
対象: 太陽光発電
【ドイツの固定価格買い取り制度』
保障期間: 20年
買取範囲: 発電した全ての電力
買取価格: 電力会社の3倍程度
導入補助金: 無し
対 象: あらゆる再生可能エネルギー
日本とドイツの制度を比較してみますと、ドイツの制度は大変優れています。日本では発電した電力を家庭等でまず使い、その余った電力のみを電力会社が購入します。それに対してドイツでは、発電した電力のすべてを高い買い取り価格で買ってくれます。このような事から、ドイツでは太陽光などで発電した電力を総て電力会社に売り、日常で使う電力は電力会社の安い電気を使用するのです。
■再生可能エネルギー新法の今後
脱原発に向けて新エネルギーの普及を一層加速させるため、日本では新しい固定価格買い取り制度に関する法律が、本年8月26日に成立しました。その法律の名称は「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」といいます。
この法律は太陽光など新エネルギーで得られた電力を、ドイツ並の有利な価格で電力会社に買い取らせようというものです。
さて、この法律では調達価格等算定委員会が設けられ、今後次の事項等を検討することになっております。
・買い取り価格(※エネルギー毎に異なる)
・買い取り期間
・電力料金に上乗せする賦課金
・買取義務や優先接続義務に関する例外規定、等
検討結果は近い将来に委員会により出されます。それを受けて、経済産業大臣により買い取り価格などの詳細が決定されます。詳細が決まりましたら、また本コラムでご紹介したいと思います。
去る8月に成立した日本の再生可能エネルギー新法は、日本における風力、太陽光発電の普及の飛躍的な発展が予測されます。環境に優しい新エネルギーに大いに期待したいと思います。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…