今回ご紹介するのは、社内コラボレーションの事例です。いまやほとんどの職場にある「ポストイット」ですが、これは3Mという企業の社内コラボレーションで生まれたものです。
3M社では、社内での情報共有のため、コーヒーとドーナツを囲んだ意見交換会が長年開かれていました。ここでひとりの研究者が、ある研究の過程で開発した「強力だがすぐにはがれる接着剤」の話を、この席上で持ち出しました。それをきいた別の研究者が、ある日曜の朝、自分が通う教会で、讃美歌を開いたときにヒラヒラ舞い落ちるしおりをみて「これだ!これにあの接着剤を使えばいいんだ!」と製品のアイデアを思いついたことが、あのポストイットの製品化につながったのです。
こうしたアイデアの融合は、たまたま起こったわけではなく、そこにはそれが生まれる土壌がありました。それは「競争」や「成功」というものではなく、情報の共有こそが創造性を刺激し、アイデアを生み出す、という信念です。「ポストイット」は、開発した人と製品化した人は別です。もしここにコラボレーションが許容される文化がなく、各自が競争し、自分の成果だけを追い求めていたら、この製品は世にでることはなかったでしょう。
次にご紹介するのが日産自動車です。かつて、ゴーン社長による日産を再生させる大規模な社内改革が実施されましたが、その中心的な役割を果たしたのが、CFT(クロスファンクショナルチーム)。これは、各部門から人を集め、いわば”組織横断的串刺しチーム”で会社全体の問題点や方向性を洗い出し、詰めていったものです。各部門にはどうしても伝統や固定観念があり、それを打ち破るには、自分の視点を変え、ほかの部門の意見も取り入れるというコラボレーション的発想が必要だったのです。
今回の事例からみえてくるのは、社内コラボレーションを生むためには、まずは競争ではなく共有という企業文化を作ること、そして、個人、部門の利益でなく、会社全体としての利益という立場に視点を変える、というふたつの点です。社内SNSや、グループウエア、イントラネットなどのITツールなどを使ってこうしたつながりを促すこともできますが、まずは3M社のようなコーヒー&ドーナツタイムで、違う部門の人たちとの交流をはかってみてはいかがでしょう。ほかの人とつながることで、ダメと思っていたアイデアの道筋が見えたり、思わぬ発見があるかもしれません。
次回は、「コラボレーションに必要なリーダーシップ」についてお話します。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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