前回の条件付きモチベーションは、「人は外部からの動機づけでは自主的には動かない」という話でした。では、どうすれば自分から進んで動いてくれるのでしょうか。それにはまず、私たちのモチベーションについての見方をバージョンアップしなくてはいけません。これまでの、いや、いまだに続いている考え方(モチベーション2.0)では「人は元来、管理や後押しをしてやらなければ動かない」と信じられてきました。しかし、モチベーション3.0の考え方は「人は元来、自分から積極的に動くようにできている」という前提に立つものです。
では、どんなときにその自主性が発揮されるのでしょうか。お金という報酬や、周りからの称賛や、社会的地位が与えられなくても、どうすれば人は自ら進んで遅くまで働くのでしょう。その条件とは、わかりやすく言えば次の3つです。
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自発的なモチベーションが生まれる環境
1.自主性が与えられるとき
2.自分にとって興味のある分野の上達・熟練につながるとき
3.自分を超えた大きな目的につながっているとき(世のため人のため)
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「1.自主性が与えられるとき」については説明不要でしょう。「これ、こうして」と指示されるより「これ、自分のやり方でやってみて」と言われたほうが、がぜんやる気はでますよね。「2.自分にとって興味のある分野の上達・熟練につながるとき」については、例を紹介します。先月、子どもの保育園で夕涼み会があり、私はオヤジの会として参加し、段ボールをたくさんつなげて大きなスマートボールを制作しました。もちろん無報酬です。でも、私は昔からこうした工作は大好きで、久しぶりに設計図を書き、カッターやハサミを使いながら思い通りの形を作っていくこの作業はとても楽しく、仕事そっちのけで没頭してやりました。このように、自分の興味につながる作業だと、人は言われなくても自ら進んで取り組むものです。「3.自分を超えた大きな目的につながっているとき」ですが、たとえば「このプロジェクトは、日本の子育て環境を変えるきっかけになる」とか「この企画が通れば、日本の電気の使い方が10%少なくなる」といった、そのタスクが会社を超えた大きな目的や社会的意義につながっているときです。もちろん、まったく興味を示さない人もいますが、世の中に役に立つことなら頑張れる、という人も少なからずいます。
人の興味はそれぞれです。なので、万人に使える唯一の方法というのはないでしょう。人の自発的なモチベーションに火をつけるには、相手としっかり向き合い、相手の興味はどこにあるのか、何が動き出すエンジンなのかということをしっかり見極める。そして、できるだけ本人の能力、興味にあった仕事を任せる。そして最後には、人が元来持っている自主性を信じる、ということに尽きます。やらなくてはいけない作業と自分ができることが一致したとき、人は驚くほどの成果を発揮するものです。
次回は、アメリカで成功しているある企業の例を紹介します。
(参考図書:『モチベーション3.0』 ダニエル・ピンク著、大前研一訳、講談社)
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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