外資系との大きな違いの一つに、日本には「一般職」と呼ばれる職種があります。最近では、一般職をなくすかどうするか、という議論が大手を中心に行われていますが、これもまた、正社員に対して企業が何を期待するのか、の大きな分かれ道に。
その中で、一般職をなくす、という決断をした企業は、今まで一般職だった人たちに対し総合職への転換研修を行ったり、また総合職転換を希望しない人は派遣や契約社員に雇用形態を変更したりしています。しかし、一般職から総合職に転換したからといって大きく仕事が変わるわけではなく、周囲は「任せる仕事の範囲」に迷い、そして本人は「どこまでやればいいのかがわからない」と戸惑っているのが現状で、企業にとっての課題となっています。
一方で、うちは一般職も大事な存在であるため一般職制度はなくさない、と決断された企業もあります。制度はなくさないものの今までのような意識で働くのではなく、「意識を改めて続けてほしい」と、今まで実施したことのない一般職研修をするところもあります。
一般職は、うまく活かせば日本の風土・体質に合っているのかもしれません。アベノミクス政策に基づき、各組織は女性管理職比率アップの目標を掲げていますが、全員が全員、会社の上を目指す必要はなく、縁の下の力持ちとして力を発揮できる人も大切であり、そういったスペシャリストを育てることも大事ではないか、と私自身感じています。
さて、一般職はこれからの世の中、組織の中でどんな期待の変化があるのでしょうか。実は、実際のカウンセリングでよく受けるのが「先輩の女性が仕事を抱え込んで、私たちに振ってくれないんです」という若手のお悩み。
また、ある会社では「効率化を図るように」と上司から一般職に伝えたところ、反発が起きたそうです。「これ以上効率化を図ったら、私たちの仕事がなくなってしまいます!」と。
確かに、一般職の女性は不安がたくさんです。なぜならば仕事の内容は若手の頃から大きく変化したわけではなく、一方でIT化が進み、仕事がシステム化されていく。従業員の一定の割合(法定雇用率)を障害者とするよう企業に義務づける法律が出来てから、企業によっては単調作業を彼らに任せるようになっています。例えば、封入作業や入力作業などです。これらは、いわゆるアシスタントの事務職が今まで任されていた仕事ですが、これらも手を離れていくのです。
そんな中、私が依頼を受ける一般職研修は、どの企業からも「今のままではなく、ワンステップ上の仕事を自分で見つけて実施できる人材になる」という共通したテーマをいただきます。
しかし一方で、受講者たちは「ワンステップ上の仕事って?もうこれ以上やることはないのに・・・」。との声も上がってきます。システム化されたことで、自分たちの仕事が減ってしまった場合、新しく価値を生み出す仕事を見つける必要があるのです。しかし、それが何なのか、わからないのです。
そこで、受講者のみなさんにお勧めしているのが、「本当に今の仕事との関わり方でいいのかを考えるため、他部署や上司など周囲が期待していることを考える」ということです。そして、考えてもわからなければその相手に直接聞いてみるのです。
実際、2日間研修を行うと、グループワークで他部署の人とたくさん会話して視野が広がり、「今の自分の仕事で満足していてはいけないんだ、もうやることはすべてやったと思っていたら、まだありそうだ」。と気づかれる方も多いです。
特に一般職は、決まった仕事、決まった人とのやりとりが中心となり、視野が狭くなりがちです。それは仕事柄しかたがないことかもしれません。そうならないよう、本人たちの努力も必要ですが、周囲の支援として研修で他部署の一般職との交流を図るほか、部署異動や他部署との交流の機会、同行させて相手の声を聞く機会などをあえて設けることをお勧めしたいと思います。
一度広がった視野は、狭くなることはありませんから。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
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