人が動く事例については、前編と後編に分けてお送りしていきます。まず前編は東京にある株式会社フュービックという会社をご紹介します。もとは自動車販売業からスタートしたこの会社。現在はマッサージ、ストレッチなどのリラクゼーション事業が急速に伸びていて、7つのブランド、80店舗近くを関東・関西で展開している企業です。
こちらの会社では「基礎研修」と称して、アルバイトから役員まで、また異なる業種のスタッフが一同に会する研修が定期的に行われています。半年に一度、全員が出ることになっており、店長以上は何度も参加する人もいます。
この研修、社長が直接話し、ほぼ毎月行われています。私も一度、見学させていただいたのですが、都内のとあるオフィスビルのワンフロアに、100名近くが朝の9時から夜7時ころまで缶詰になって行われます。
その内容にびっくり。普通こういった研修は、会社の理念や社訓や売上目標を一方的に押し付けられ、一方通行で重苦しい雰囲気ですが、ここで社長が話す内容は「人間関係、やりがい、お金」など、社会人として基本的なことばかり。最後のほうで少しだけ、会社として期待するサービスなどの話もありますが、それ以外、会社の理念の話はほとんどありません。また講義だけでなく、ときにチームで行うゲームなどをしながら、チームワークの大切さなどを体感してもらうワークや、小グループでの話し合いなども。
ちなみに社長はまだ40代前半で若いのですが、社員も20代前半~30代と若い。しかし驚くのは、どの会社でも手を焼いている若い世代の人たちがみな、しっかりイキイキと働いているのです。なぜ、それが可能なのか。
私が思うポイントは2つ。1つはこの「基礎研修」というしくみ。社長自らマイクを握り、自分の生い立ちからプライベートなこと、そして考え方をとうとうと伝えています。これを通して、社員は社長の人格を理解し、この人にならついていけそうだなという安心感を得るのだと思います。大企業になればなるほど、業務や理念には共感しても社長の人格には共感できないという例を多く目にしますが、この会社ではそのギャップはありません。この「社長の人格への共感」は、社員の底力につながりますよね。
そしてもうひとつは、自己実現への期待感。ここは決して給料がずば抜けて高かったり、労働条件が恵まれているわけではないのに、基礎研修やスキル研修も充実。また勤続年数に関係ない昇格のチャンスや新店舗オープン時には店長を立候補で決める制度など、頑張る人には道が開かれています。またスポーツトレーナーへの道や、幹部へのキャリアパスもはっきりしています。
こうした「自己実現」のしくみをはっきりと提示することで、「自分もここで成長できるかも」という欲求を刺激できているのですね。派手ではありませんが、基本に忠実なしくみが人を動かすよい事例です。
次回は、ソーシャルネットワークを活用した超最先端のしくみをご紹介します。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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