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コラム 環境・科学

2014年01月09日

エネルギーの現状と展望

 原発事故以降、日本のエネルギー事情は大きく変わりました。これからどのようにして電力を確保していくかは極めて大きな社会的関心事、政治課題になっています。今回はエネルギーの現状を見つめ、原子力発電や電力供給の将来を展望してみます。

■日本のエネルギー事情と政策
2011年に原発事故が起きましたが、事故前の2010年の日本のエネルギー事情は次の表に示す通りです。日本はエネルギーの96%を輸入に頼り、一次エネルギーの44%を発電に供していました。

[一次エネルギーの内訳 2010年]

石油 石炭 天然ガス 原子力 水力 その他
40% 25% 17% 13% 4% 1%

[電力の電源別の内訳 2010年]

火力 原子力 水力 再生可能エネルギー
59% 31% 9% 1%

 1970年代、日本は二度のオイルショックを経験しました。当時は一次エネルギーの75%を石油に依存していました。オイルショックを機に石油依存からの脱却を図り、天然ガス、原子力を積極的に利用し、一次エネルギーに占める石油の依存を40%まで下げました。
エネルギー安全保障とは、「国民生活、経済・社会活動、国防等に必要な量のエネルギーを、受容可能な価格で確保できること」です。日本は必要なエネルギーの確保のために、多額の税金を投入してエネルギー源の多様化、輸入先の多角化、外交的対策というような戦略を進めてきました。

 エネルギーのベストミックスという言葉がありますが、これは主に発電において、石油、石炭、天然ガス、原子力、再生可能エネルギーなど、それぞれ特徴を活かして最適なバランスで利用していくことを意味します。エネルギーのベストミックスを考える上で、経済性、安定供給性、環境性、安全性が重要な判断指標となります。
大きな事業所や、最近では家庭においても多様な形でエネルギーを利用するようになってきていますので、工場や住宅レベルにおいてもエネルギーのベストミックスという言葉が使われています。

■エネルギーを取り巻く環境変化

東日本大震災の原発事故による電力需給の逼迫、世界的な原油・LNG価格の高騰、円安による輸入エネルギー価格の上昇などにより、エネルギーを取り巻く環境が大きく変わりました。その他、家庭などの小口需要家における電力事業と都市ガス事業が自由化の方向になっています。
 日本では長年、自前のエネルギー確保や地球温暖化対策の観点から、電力に占める原子力発電の割合を40%に高めていくという政策を推進してきましたが、原発事故を経験した現在、エネルギー政策はゼロベースからの大幅な見直しを行なっています。今後は、再生可能エネルギーやガスの役割が一層大きくなる可能性があります。ただし、再生可能エネルギーはコスト高であるほか、既存の電力網に、大量に導入するために系統連系設備の早期整備などの課題が残っています。

 現在、全国50基の原子力発電の全てが稼働停止中です。安全性の観点から1/3相当の17基はこのまま廃炉になる可能性があります。原発事故以前は総電力の31%を原子力発電で賄っていましたが、現在は9割近くが火力発電となっています。このため年間3兆5千億円の燃料代が追加で必要となり、これらは電力料金に上乗せされています。

■エネルギーの自由化と電力料金
世界の潮流である自由貿易推進の観点からも自由化で外資の参入や投資も容易になりつつあり、エネルギーを取り巻く環境変化が、規制緩和や自由化を加速させています。このような状況の中で、2016年に電力の小売全面自由化を控え、2018年~2020年を目処に発送電部門の法的分離を行ない、競争的な市場環境が実現されようとしています。
北米やヨーロッパでは中小規模の電力会社が多数あり、国境を越えて電力を融通し合うなど、電力自由化が浸透しています。しかし、日本の場合は大規模電力会社に地域の独占的権利を与える代わりに安定的な電力供給義務を負わせてきたという歴史があります。また、東日本と西日本で周波数が異なるため、電力の融通がほとんどできない状況です。こういった中で、自由化を推進しても限界があり、与党内にも発送電分離への異論も根強くあります。
東京電力では原発事故以降、家庭用電気料金は3割近く上昇し、今後も上昇していく見込みです。要因は原発事故への賠償金、原発停止による代替電力の活用のほか、国際的なエネルギー価格の上昇、投機、円安、発電コストの高い再生可能エネルギーの利用などです。

 さて、原発事故を経験した現在、もはや原発は絶対安全とは言えなくなりました。一方、原発に代わって安定的に自前のエネルギーとして電力供給できる方法は残念ながら他に見当たりません。原発をどうするか、電力をどう確保するかは国民の生活や経済活動に直接影響を及ぼす事ですので、民主国家である日本は、国民による議論の中で民主主義的な手続きで決定されることになるでしょう。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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