当初まったく理解されなかったダイバーシティ
「なぜ女性だけが対象なんですか?」
ダイバーシティ&インクルージョン、女性活躍推進、といった仕事をさせていただいて、10年強経ちますが、最初の頃は、「ダイバーシティの言葉の意味がわからない」という管理職含めた受講者の声が上がっていました。
そのため、丁寧にダイバーシティの意味とダイバーシティ推進の必要性をグローバルの事例紹介や経営課題であることの理由を織り交ぜながら説明することが大事でした。
組織内での上層部と現場の意識格差
最近では、企業の研修企画担当者の方も、「管理職たちは、ダイバーシティ推進の必要性、女性活躍の意味を様々な研修を受講してもらっているので、理解されているので、その点は省いて本題からスタートしてください。」と言われることが増えてきました。前提は十分理解しているので、また話されると、「またか!」とお腹いっぱいとのこと。
しかし、残念なことに、研修企画担当や人事、そしてトップの方が思っているほど、現場は理解できていません。
「これってやる意味あるんですか?会社が受けるようにって言っているが、どうも時間の無駄のような気がします。」つい先日もあるメーカーの管理職向けダイバーシティ研修をオンラインで実施した際、私宛のプライベートチャットに管理職の方より質問が来ました。
勿論、理解できている、やらなくちゃいけない、と本気で思っている人はいますが、必要ないのでは?と思っている人もまだまだいらっしゃるのが実態です。
女性活躍推進は永続的に実施するものではなく、ダイバーシティ推進の一歩目、通過点です、今まで性別で分かれていた役割を個それぞれの特性を生かして活躍してもらうために、まずはアシスタント的な役割を担うことが中心だった女性たちも男性と同等の経験を積んでいただく必要がある、とスライドで、そして口頭でお伝えしても、最後の感想で、「女性だけ研修をするのは逆に男性差別じゃない?」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
イメージできない景色に抵抗を感じる男性
特に感じるのが、女性よりも男性の抵抗感です。
案外女性は、すぐに納得し、楽しんで研修や講演に参加してくださいますし、自分たちは、男性のようなチャンスは与えられなかったこと、そして、男性の前だと男性組織に行動も発言も合わせてしまい、自分らしさが全然出せていないことに気づかれます。
一方、男性管理職の方の中には、「別に男女の違いなんてないでしょう。私は、みんな同じように接しています」とおっしゃる方も。しかし、残念なことに、その方の女性部下は、そうは思っていないケースが多いのです。そう、それは、女性が男性に合わせているから、男性は気づけないのです。
男性が悪いのか、というとそうではありません。まだ見たことのない、管理職の半数が女性、現場で女性が男性と同じ仕事内容で活躍し続けている、という景色がイメージできないのです。そして、中にはこんな方もいらっしゃいました。「なんだか、今までの私のやり方を会社が研修をとおして否定しているようで、嫌だなあ。自分たちは頑張ってきたのに、ここに来て急にルールを変えられる感じだ」と率直におっしゃられた50代の男性も。
現状を変えるにはとにかく続けるしかない
では、どうしたらいいのか、というと、続けるしかない、と思っています。ダイバーシティ推進の必要性について、何度も聞いた話かもしれませんが、目的は繰り返し共有してもいいと思っています。とにかくやり続けることによって、女性の活躍の場が広がっていきます。現に半年、1年と連続して女性リーダー育成をしていくと、女性たちは素晴らしく成長されます。確実に力をつけていっているのを感じます。その間に、ダイバーシティ推進の必要性を理解、行動される管理職も徐々に増えていきます。全員が一気に納得し、前を向くなんてことはありませんから。
何かを変える時は、地道さと丁寧さ、途中で止めないことが大事です。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
個人と企業からの依頼によるキャリアカウンセリングは、延べ17,000人以上の実績。学生からシニア層まで年齢や性別を問わず、自分らしいキャリアデザインをするための選択とアクションに向けたカウンセリングを…
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