日本の農業は後退しており危機的状態にあると言われており、抜本的な農業改革が必要です。今回は日本農業が抱える様々な課題を考え、その将来を展望します。
また、農業はコロナに強く、農業はコロナから社会を救うと期待もされています。これらの点についても触れてみます
改革が進む日本農業
大規模農業にくらべて小規模農業は生産効率が低くなります。企業が農業に参入して大規模農業が進められることが期待されます。かつては、農地法などにより大規模農業の参入が困難でありましたが、規制も徐々に取り除かれております。
2009年には農地法改正によって、リース方式による参入が全面自由化され、農業経営を行う一般法人は、2003年に10法人であったのに対して2018年には3286法人になりました。
農業に参入する企業の規模は様々でありますが、成功する企業もあれば、成功せずに撤退する企業もあります。大企業が農業参入する主な理由は、企業のCSR、雇用の場の確保、ビジネス化にむけた先行投資というような場合が多いです。農業は一朝一夕で事業が進められるものではありません。企業が農業参入に成功するためには、営農のノウハウや農業人材の確保がカギと言われています。
六次産業と農業
農業の活性化のために、農業従事者が農産物を原材料とした加工食品の製造・販売や観光農園のような地域資源を生かしたサービスなどの事業へ進出することが行政により支援されています。
第二次産業や第三次産業にまで踏み込み、農産物の付加価値を高めることで、所得向上や雇用創出につなげることが推進されています。
農業経営などが多角化するだけでなく、商工業の事業者と連携する動きもあります。2008年に農商工等連携促進法が、2010年に六次産業化法が制定され、2011年に農林漁業成長産業化支援機構が設立されました。
農業者所得補償のあり方
日本より大規模農業が多い米国やEU諸国では、所得補償として農家への直接支払いが中心です。対して日本では価格維持による所得補償が主流ですが、その場合は消費者の負担が大きくなります。日本では高い米価が維持され、消費者のお米離れの一因にもなっています。所得補償を価格維持から直接支払いに変える場合は、消費者よりも多くの納税を行っている企業の負担が増加します。食料品の価格が安くなり消費者にはメリットですが、企業は負担が多くなります。大枠では企業も含めた国民の負担は変わりませんが、税制改革が必要となります。
価格維持の方法としては、日本では農産物の内外の価格差を主に関税により農業保護を行っています。ただ、近年は自由貿易の推進による関税撤廃・軽減の圧力が農産物輸出から常にあります。農家への直接支払いによる保護政策を中心的に行う場合は農協の役割も変わってくることになるでしょう。
農業労働力不足の対策
農業就業人口は平成22年に約260万人が、平成31年には約168万人に大きく減少しています。一方、耕作放棄地や休耕田が増加しています。労働力確保のために、日本において農業に雇用される外国人労働者数は2011年の1.6万人から2019年には3.6万人に増加しています。技能実習制度による外人労働力確保から、在留資格「特定技能」による確保も可になっています。現在では、コロナ禍により、他産業で雇い止めとなった実習生の受入れも可能になっています。
食料自給率について
日本の食料自給率は年々低下しています。通常食料自給率はカロリーベースで算出されますが、自給率が40%の場合、何が40%なのか直ぐには理解しがたい数値です。たとえば、国民が健康を維持する上で必要なカロリーの自給率で計算するとかして提示すれば、国民には分かりやすいのではいかと思われます。
コロナ禍で国際経済は停滞しております。コロナ禍の初期では、自動車産業などでは海外での部品の製造が滞り、日本国内の生産を一時中止する事態も発生しました。世界的にも農産物を含めた輸出入が一時的にストップした事例も少なからずありました。
日本は米国や豪州から肉、小麦、大豆などを輸入しておりますが、コロナ禍によりこれらの農産物の生産に影響が生じるかどうかは、現時点では不明です。今回のコロナ禍により、食料確保については安定した国内生産の重要性が国民に再認識の機会となる可能性があります。
農業はコロナに強い、コロナから社会を救う
本来農業は都市部の災害に対して重要な役割を果たしています。都市農地は、火災時は延焼防止、地震時には避難所・仮設住宅の建設用地になるなど多様な役割を果たします。
新型コロナ感染症は、基本的には大都市の問題であります。農業の現場からクラスター発生などは聞かれません。農作物、畜産物などを介してのコロナ感染の報告例もありません。
コロナ禍によって観光旅行者が激減した結果、観光地の旅館などの宿泊施設で働く方々の仕事がなくなる例が多くみられました。そのような場合、農協の仲介により地元の農家で働くということも多数報告されています。不況で職場を失った海外からの労働者が農家で働くという事例もあります。農業はコロナによって離職せざるをえない人々の採用という重要な役割を果たしております。
以上の事から、農業はコロナに強いということが言え、農業がコロナから社会を救うということが大いに期待されます。また、コロナ禍の厳しい状況の中において、日本の農業を守る意味を国民が再認識し、官民あげて日本農業の更なる発展のために改革が進むことを期待致します。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…
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