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コラム 環境・科学

2014年06月10日

中小水力発電の特徴と展望

 中小水力発電は、固定価格買取制度の対象となる5つの再生可能エネルギーの一つです。日本においては、気候的にも地形的にも中小水力発電は有望なエネルギーです。今回は中小水力発電にふれてみます。

■中小水力発電
概ね3万kW以下の水力を中小水力発電と呼ばれます。通常、設置の際に土木工事を伴いませんが、小規模の土木工事を行う場合もあります。水力の理論上の出力は流水量と落差の積に比例します。中小水力発電は河川の水を貯めること無く、そのまま利用する発電方式が一般的であり、「流れ込み式」、または「水路式」の発電方式が採用されます。ただし、小規模の貯水池を利用して発電する場合もあります。
中小水力発電では渓流水、一般河川、農業用水、砂防ダム、上下水道、工場内水など、現在無駄に捨てられているエネルギーを有効利用できます。

■日本と世界の中小水力と現状と賦存量
 2008年おける国別の中小水力発電設備容量は、日本が世界一で約350万kW、2位の米国が約280万kW、3位のイタリアが約260kWです。
中小水力の世界の賦存量は150GW(=15000万kW)と推計されていますが、開発されているのは、その僅か5%に過ぎません。
 日本における中小水力の導入可能量は、河川部で約1400万kW、農業用水路で約30万kWと推算されています。

■水車の種類
 発電用の水車には様々なタイプがあります。場所により有効落差や使用水量は異なりますが、設置場所の条件に適した水車が利用されます。主な発電用の水車としてフランシス水車やプロペラ水車があります。
フランシス水車は適用可能な落差、水量の範囲が広く、小型機から大型機まで多く利用されています。プロペラ水車は低い落差に適した水車で、コストダウンのために流量調整機能はついていません。落差や流量ともに変化しないケースに適しています。
その他、クロスフロー水車、ベルトン水車、ポンプ逆転水車、ターゴインパルス水車などがあります。

■中小水力発電の特徴
風力発電の設備利用率(稼働率)が約20%、太陽光発電が約12%に比べると、昼夜・年間を通じて安定した発電ができる中小水力発電は、設備利用率が50~90%と高いという特長を有します。また、既存の電力系統と連系する場合に、中小水力発電は出力変動が少なく、系統安定、電力品質にあまり影響を与えない特長も有します。
中小水力発電は一般に経済性が高いですが、小規模の水力発電の場合は設置場所の条件に依存して経済性が異なります。

■中小水力発電の課題
 期待の大きい中小水力発電ですが、様々な理由で設備導入が思うように進んでいないのが現状です。
 河川水の利用は防災等の観点から河川法により制約を受けます。河川から取水する農業用水や工業用水も規制の対象になります。水力発電として利用するためには許可を取る、すなわち水利権を得る必要がありますが、簡単ではありません。
その他、中小水力発電には採算性と維持管理の2つの課題があります。現状では既存の電力より割高です。ただし、2012年からスタートした固定価格買取制度により発電した電気は高い価格で電力会社に購入してもらえます。
自然界の水を直接利用する中小水力発電は維持管理に経費がかかります。台風や豪雨で水が濁りますと機械を傷めますので、水量が多くても発電を止めなければなりません。平常時に水路を流れてくる木の枝や枯葉、もろもろのゴミが取水口に溜まりますので、頻繁に取り除く必要があります。ケースにより1日に2度のゴミ除去や作動確認を行う例もあります。

■規制緩和と支援策
 中小水力発電普及に向けた規制緩和策として、河川法許可手続きの簡素化、取水管理の柔軟化による効率的な運用、従属発電に関する登録制の導入、設備の保安規制の見直し、関連技術者の比較要件の見直しなどが検討もしくは実施されています。
 国による中小水力発電への補助制度として、新エネルギー等導入加速化支援補助事業、小水力等農業水利施設利活用促進事業、地方公共団体対策技術率先導入補助事業など、多数の支援、補助事業が実施されています。
ようやく2013年4月になって河川法が改正されて、出力が1000kW未満の小水力発電に対しては認可の手続きが大幅に簡素化されました。一般の事業者でも小水力発電を導入しやすい環境が整ってきました。

電力の将来について国民的議論が進められている中で、水力の魅力が今一度見直されて、中小水力発電の利用が一層促進されることを期待いたします。そのためには、法整備や行政の支援策の拡充が望まれます。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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