目次
国連のSDGs活動は世界中で推進されています。今回は、SDGsの海外での動向例としまして、活動が高く評価されているフィンランド、スウェーデン、デンマークの事例を紹介します。また、日本では官民あげてSDGsに取組んでいますが、ヨーロッパ諸国に比べて必ずしも高い評価を受けているわけではありません。日本のSDGs活動を一層発展させ、世界から高く評価されるための今後の課題についても触れます。
世界各国のSDGs達成度合いの評価
SDGsが開始されてから毎年国連から持続可能な開発レポート(Sustainable Development Report)が出され、世界各国のSDGs達成度合いが発表されています。2021年発表の各国のSDGsランキングは表1の通りです。
表1 2021年のSDGs達成度ランキング (国連資料)
ランキングの20位までは日本を除くとすべてヨーロッパの国々です。特に上位の3ヶ国は北欧の国々です。SDGsの海外の動向例として、フィンランド、スウェーデン、デンマークの取り組み状況を次に紹介いたします。
フィンランドのSDGs事例
フィンランドでは国連でSDGsが採択されるよりもずっと前から、行政が中心となって持続可能な社会構築への取り組みを進めていました。現在では社会的にもSDGsの考え方がかなり浸透してきています。
SDGs活動例としまして、フィンランドでは国内の有名な観光地で許容範囲を超えた観光、すなわちオーバーツーリズムが解決課題となっていますが、その対応策としてレスポンシブルツーリズムが進められています。観光地の文化や自然、経済に好影響を与えることが目標です。国と企業が連携して、豊かな自然を守るための取り組みが実施されています。
スウェーデンのSDGs事例
スウェーデンも国が主体となり持続可能な社会の推進を長年行ってきました。現在では企業のSDGsに向けた意識が高まっているのが特徴です。
たとえば、世界的に有名な家具量販店であるスウェーデンのイケアは、SDGsの実現に力を入れていることでよく知られています。製品の60%以上に再生可能な素材が利用されているほか、エネルギー利用効率の高い家電製品を販売するなど、環境を意識した製品作りをすることで循環型の社会を目指しています。
また、スウェーデンでは100種類あるゴミの分別を実施しています。その結果、年間200万トンにのぼる家庭ゴミのうち、およそ99%はリサイクルに利用されていると言われています。
デンマークのSDGs事例
デンマークで注目される取り組みに「UN17 Village」というプロジェクトがあります。これは、サステイナブルに視点をあてた村づくりのような取り組みです。
コペンハーゲンの新都市地区Orestadの約35000平方メートルの敷地に400の新しい住宅を建築し、5つのブロックに約800人が暮らせる村を2023年に完成させる計画です。次のような事の実現を目指しています。
- 建材はすべて建設廃棄物をリサイクル処理したものが使用
- 各屋上に太陽光発電を設置することですべての電力を賄う
- 雨水を年間150万リットル集めて再利用
- 100%再生可能エネルギーを使用する計画
- 廃棄物はすべて資源として再利用
日本のSDGsの評価
表1に示される通り、ランキング上位にはSDGsへの取り組みが活発な北欧諸国が多くランキングしています。過去の国連のレポートによれば、2017年に日本のSDGs達成度は世界で11位の評価を受けました。日本の過去の最高の順位です。
日本は2016年からアジア主要国の中では1位をキープしているものの、世界各国全体のランキングでは年々に後退しています。2021年は前年度から順位を落とした18位になっています。
日本に対するこれまでの評価をみてみますと、日本のSDGsに対する取り組みの中でも低評価となっている目標は主に次の5つです。
日本の低評価の5つの目標
- 目標5:ジェンダー平等を実現しよう
- 目標13:気候変動に具体的な対策を
- 目標14:海の豊かさを守ろう
- 目標15:陸の豊かさを守ろう
- 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
目標13「気候変動に具体的な対策を」で低評価の理由は、日本では人口一人当たりの二酸化炭素排出量が多いからです。工業立国の日本では経済産業活動のために化石燃料の消費は多くなります。
なお、日本のSDGsの17の目標別の評価では、目標4「質の高い教育をみんなに」と目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」で高い評価を受けています。
パートナーシップの深い意味を理解する
日本のSDGs取組みにおける目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」においては、日本は常に低評価です。日本ではSDGsのパートナーシップとは、たとえば近隣住民の方々と一緒に、または協力会社と一緒に何かを行うというような意味で捉えられている場合が多いです。しかし、SDGsの本来の意味はそうではありません。SDGsのパートナーシップとは、グローバルパートナーシップのことであり、日本語でもっと分かりやすく表現すれば途上国支援のことです。日本のSDGsの評価が低い理由の一つが途上国支援の取り組みが少ないということです。
経済団体や国が企業等にパートナーシップの本当の意味を伝えきれていないきらいがあります。SDGsにおけるパートナーシップの意味を理解するためには、歴史的、地理的、文化的な知識と、それらによる深い洞察が必要です。
ヨーロッパの列強の国々は世界中に植民地を持っていました。歴史的に旧植民地の国々とは主に経済を通したつながりが現在も多く残っています。このような事からヨーロッパの国々は途上国に対する様々な支援に熱心です。
ISOの認証制度やSDGsの考え方は、極めてヨーロッパ的な発想に基づくものです。こういうことも含めてSDGsを正しく理解して、世界に高く評価されるような日本のSDGsの取り組みを期待いたします。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…
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