第11回「部下と会わずに部下を育てる~2030年の人材育成」
時は2030年2月のある月曜日、朝の10時。あなたは自宅のリビング兼ワークスペースの前のパソコンに向かっています。これからチームの週のスタートミーティングです。あなたはとあるイベント企画会社の営業部マネージャー。チームメンバーは10人、うち昨年入社した新入社員は3人です。
新入社員とは入社以来、一度も顔を合わせたことはありません。でも大丈夫。会社には自分の考え方やパーソナリティをまとめた動画「マイプロファイル」ライブラリがあり、新人はそこからあなたの動画を選び、あなたの人となりや趣味、家族などを知っています。
4月入社時、部での新人歓迎会もオンラインでした。手書きのメッセージと共に高級レストランの冷凍イタリアンプレートを事前にメンバーに宅配しておき、各自宅でそれを温めて、食事しながらのオンライン会食。自己紹介などもし、同期同士の会話も盛り上がりました。
昔はわざわざ会場に集まっていた新人研修もいまはすべてオンラインが基本です。新人には「フレッシャーズオンライン101」という動画コンテンツが用意されていて、「ビジネスマナー」「商品知識」「ロールプレイ講座」などの内容を各自視聴し、準備ができたら上司とのインタビューテストをオンラインで受け、それに通ればOKという段取りです。昭和の時代は、OJTといって現場で上司が仕事の合間に手取り足取り教えていたようですが、教える人によってばらつきもありました。知識を伝達するという意味では、全員が同じコンテンツを見たほうが内容も均一化されますし、確実に伝わります。
新人ですから、仕事に悩んだり、壁にぶつかったりすることもあるでしょう。そんなときには、各人に割り当てられている「オンラインメンター」に連絡をとり、いつでもオンラインもしくはチャットで相談することができます。これにより仕事への不安が放置されることはなくなっています。
同期同士のヨコのつながりは、週一回「オンラインコミュニティ」が開催されています。これは毎回同期が持ち回りでホスト役を務め、ここでは上司は入らず、同期同士が気軽に情報交換や雑談ができる場となっています。ここで飲み会や遊びの約束が決まることもあるようです。
日々の業務遂行での上司と部下のコミュニケーションも基本オンラインです。月曜朝にスタートミーティングをし、水曜夕方にマイルストーンミーティングで進捗確認、そして金曜の17時に成果確認ミーティング。この枠組みで1週間が動き、部下とのコミュニケーションをとっています。部下は通勤というストレスから解放され、自分の時間を有効に活用できています。
いまや上司と部下が直接顔を合わせるのは年に1,2回。これが新しい時代の上司と部下のワークスタイルかもしれません。
まとめ
いかがでしょうか。これは仮定のストーリーでしたが、こうしてみると全然あり得る話のように思えてきます。いったい「育成」とは何なのでしょうか。それは、部下が業務遂行に必要なスキルを身につけることです。それにはリアルで会わなければできないというのはもはや昭和の妄想です。
たとえばスキーを例にとってみます。スキー講習はこれまでは雪の上で直接という形でしたが、最近は動画コンテンツがたくさんあり、知りたい知識やイメージはほぼ得ることができます。自分の滑りをとった動画を送れば、それについてアドバイスを受けることもできます。そう考えると、たとえばビジネスにおける営業というスキルも、基本は動画で学び、自分がやってみてうまくいかないところをオンラインで質問する、また場が許せば録画や録音をして、それを先輩に見聞きしてもらって修正するというやり方も十分あり得るのではないでしょうか。
2030年には、「育成をリアルでやるなんて!いつの話?」と驚かれる時代が来るかもしません。「そうはいってもやっぱり対面でしなければ……」なんて思っているそこのあなた。上に描いたストーリーが絵にかいた餅ではなくなるときが、間違いなく近づいているかもしれませんよ(笑)
さて次回は、「非接触社会での人の育て方~まとめ編」をお送りします。どうぞお楽しみに。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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