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コラム 環境・科学

2014年12月10日

火山災害について

 日本には110の火山がありますが、最近、日本の火山活動が活発になったように感じられます。本年、9月には御嶽山の噴火がありました。今回は火山災害について考えてみます。

■御嶽山の噴火災害
 本年、9月27日の11時52分に長野と岐阜の県境に位置する御嶽山(標高3067m)が噴火しました。紅葉のシーズンで天気の良い土曜日の正午ごろでしたので、山頂付近に多くの登山者がおり、これまで確認されたところでは56名の犠牲者が出る痛ましい噴火災害となりました。
 過去に噴火の記録がないために御嶽山は長らく死火山と思われていました。1979年に御嶽山は水蒸気爆発による噴火が起こり、有史以来初の噴火が記録されました。それ以降、死火山、休火山、活火山の用語の使用が見直され、現在では死火山、休火山という言葉は使われなくなりました。
 今回の噴火は突然のよう思われますが、厳密には予兆が観測されていました。噴火前の9月10日に火山性地震(微動)を52回観測、翌11日には85回観測されましたが、その後は1日に20回以下の小康状態が続き、27日の噴火となりました。10日、11日の時点で何らかの警戒策がとれなかったものかという点は今後の大きな検討課題と思います。

■火山噴火
 火山の噴火は地下の高温マグマの活動により生じます。噴火はマグマの成分や量、火山の地形など様々な要因により多くの形態があります。今回の御嶽山の噴火は、地下で高温のマグマに地中の水が急激に熱せられて大量の水蒸気が発生することによる水蒸気爆発でした。
 マグマの活動は複雑なことから、噴火には地震のような周期性はみられません。しかし、噴火の前に火山性地震や山体膨張などの前兆現象が観測されることから、噴火直前の予知はある程度可能です。
なお、地震では周期性がみられますが顕著な前兆現象は少なく、噴火予知に比べると地震予知は難しいです。

■富士山
 箱根山や愛鷹山も含め富士山の周辺一帯は数百万年前から活発な火山活動をしています。富士山は最近、10万年で急速に大きくなったと考えられています。
 現在の富士山は約5000年前から新しい活動時期に入っています。古文書などの記録によれば富士山の噴火は781年以後、16回記録されています。特に平安時代に噴火が多く、800年から1083年までの間に10回程度記録されています。その後、1083年から1511年の噴火まで400年以上も噴火の記録はありません。さらに200年後の1707年に起きた宝永大噴火以降は、現在まで300年以上噴火はありません。富士山はいつ噴火しても不思議ではないと指摘する人もいます。

■噴火と地震の連動性
 静岡県沖から高知県沖に至る太平洋側に南海トラフと呼ばれる深い海溝が存在します。この海溝付近で、海溝型の大地震が過去の記録から90年~150年程度の間隔で発生しています。この地域の地震は、東より東海地震、東南海地震、南海地震と呼ばれ、これらの地震は数時間から長くて数年間の間に連動して起こることが知られています。
 1854年に発生した安政の大地震から既に160年が経っています。地震調査委員会では2013年1月1日時点で、南海トラフでマグニチュード8~9クラスの地震が30年以内に発生する確率は60%~70%としています。
巨大地震と火山噴火の連動性も認められます。南海トラフ大地震の前後には内陸型の地震や火山噴火がしばしば発生しています。
 富士山を例にとりますと、864年の貞観大噴火の5年後に東北地方に貞観大地震が、1707年の宝永大地震の2か月後に宝永大噴火が発生しています。なお、869年の貞観大地震は2011年の東日本大地震に匹敵する地震であり、東北地方で起こる海溝型の大型地震は約1,000年の周期で発生していると考えられています。

■巨大噴火(破局噴火)
 地下のマグマが一気に地上に噴出して壊滅的な大災害を起こす噴火は、巨大噴火とか破局噴火と呼ばれます。日本では7,000年~10,000年に1回程度の頻度で巨大噴火が起きています。
鬼界海底火山の巨大噴火によって当時、南九州で栄えていた縄文文化が壊滅しました。また、阿蘇山では分かっているだけでも過去に4回大きな巨大噴火を起こしています。約2万5千年前に九州南部で発生した姶良大噴火により現在の鹿児島湾が形成されました。
 巨大噴火の周期スケールは一般の地震と異なりますので、予兆などが無い限り対策を考えたり予知を行うことは現実的ではありません。しかし、7,300年前に鹿児島県南方沖の海底火山(鬼界カルデラ)で起きた巨大噴火を最後に、日本では現在まで巨大噴火は起きていません。日本の巨大噴火の周期が7,000年~10,000年であることを考えますと、近い将来に日本で巨大噴火が発生しても不思議ではありません。そのときに発生する被害の大きさは想像を絶するものです。

 近年日本では三宅島、雲仙普賢岳、御嶽山の噴火災害に見られるように火山活動が活発になっています。平安時代に富士山噴火や大地震が頻発したように、日本は今、火山や地震の活動期に入ったのではないかと指摘する人もいます。東海地震や関東大地震は明日に発生しても不思議ではない時期に入っています。
これから日本においては、地球温暖化によって頻発する洪水や土砂災害への対策とともに、火山や地震災害への対策にも十分に取り組んでいくことが必要です。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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