さて、今回は読者から寄せられたチームに関するお悩みのなかから、一つを選び、それについて考えてみます。
『わが社の営業は顧客開拓から商品提案、その後の案件管理まですべてひとりで行います。フルコミッションではありませんが、個人商店的な仕事になり、営業数名と事務サポートで顧客の属性ごとに分けてチームを作っていますが、どうしても「チーム」という意識が薄く、困っています。逆に、自分さえ目標を達成すればそれでいい、他の営業に自分の手の内を知られたり、顧客をとられたくないという意識が強く、チームとして1+1=2以上の成果を出せず、困っています。 (30代女性 Mさん 企画営業)』
よくあるケースですね。仕事の属性上、形だけ「チーム」になっていますが、中身はチームの体をなしていないケース。原因としてはいくつか考えられます:
1:リーダーがしっかりとチームの行動基準を伝えていない
2:メンバー同士の人間関係が希薄
3:助け合うことにメリットを感じていない
これらはどのように解決していけばよいのでしょうか。以下、その原因と対応策をまとめてみました。
1:リーダーがしっかりとチームの行動基準を伝えていない
リーダーの多くは、メンバーに「チームとしてどう行動してほしいか」という哲学を伝えていません。ミーティングでも話すのは数字や結果に関することや仕事上の問題、あるいは個人の評価の面談だけで、「チームで働く上で、何を守ってほしいか」という規範について話すリーダーはわずかです。またメンバーの機嫌を害するのを懸念して、そうした話をためらっている人もいます。
私の知っている会社では、毎月社長が自ら、「基礎研修」と題して、現場のアルバイトを含めた社員を集め、全国を回って、自分の考え方や仕事に対する姿勢、守ってほしい行動規範などを伝えています。それがしっかりと伝わり文化になっています。一見、仕事の成果には直結しないように見えますが、こうした時間がメンバーの間に規律を生み、それがチームの文化となっていくのです。
2:メンバー同士の人間関係が希薄
そもそも、メンバー同士が仕事を超えてお互いを理解しているでしょうか。もちろん最近の人たちは、プライベートな時間をとても大切にします。しかし、就業中のちょっとした5分、ランチタイム、あるいは半年に一回のチーム飲み会など、リーダーが工夫してメンバー同士がコミュニケーションをとる場を作ることはできます。人はお互いをよく知らないままでは、共有しよう、協働しようという気にはならないのです。
3:助け合うことにメリットを感じていない
助け合いが見られないチームでは、「人のことより自分の利益」という価値観がまかり通っています。それを変革するには、実利の部分と空気の部分の調整が必要です。まず実利ですが、これはずばり人事評価制度です。チームの成果が個人にも反映される評価尺度を取り入れましょう。連帯責任ではやる気は出ませんが、連帯ボーナスにすれば、自分にも戻ってくる話なので、やりがいはあるはずです。また空気についてですが、「メンバーを助けることがこのチームでは奨励される」という空気感を作り出すことです。仲間を助ける行動を毎週みんなの前で表彰する「ヒーローオブザウィーク」のような制度、また pay forward(自分から他人が喜ぶことを始め、それが伝染していくという考え方)を一人一人が実践することなど、このチームにおいては「助け合う」ことが当たりまえで、それをしない人は違和感を覚える、くらいの雰囲気を作り出せばよいですね。
Mさんのチームでは、リーダーがしっかりと行動基準を伝えていますか?メンバー同士の人間関係は作られていますか?また助け合うことが奨励されるしくみや文化はありますか?これらをヒントに、再度チームづくりに取り組んでみてください。ご質問をいただき、ありがとうございました。
次回は「目標を達成するためのチームづくり~まとめ編」です。一年間「チーム」について考えてきましたが、このテーマは次回が最終回。どうそお楽しみに。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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