コロナ禍の中で高騰した原油価格は徐々に下落していますが、現在80ドル/バレル前後と、まだまだ高値の状態です。石炭や天然ガスの価格も原油価格に連動して高値の状態です。
値上がりした電力料金や原油等のエネルギー価格は、企業経営に大きな負担をかけています。今回は企業の節電・省エネの取り組み方法についてふれます。
はじめに節電法について述べます。一般オフィスや事業所の事務棟などにおける電力消費は、主にOA機器、照明、そして空調の3分野に大別されます。それぞれの節電方法の例は次の通りです。
OA機器等の節電方法
- 省電力モードに設定する
- こまめに電源オフに努める。昼休みは業務に支障のない範囲で電源オフにする
- パソコンは、節電・待機モードに切り替わるように設定し直す
- プリンターやコピー機は、予熱機能や節電機能を活用する
- パソコンは台数が多く、またプリンターは1台あたりの電気使用量が大きいため、これらの確実な節電の実行が大きな効果を生みます
- オフィス等においては、節電管理者を決めて、継続的に効果的な節電実施が望まれる
照明の節電方法
- 離席する際は、こまめに消灯する
- 昼休みや勤務時間前の照明は、原則として全部消灯を実施する
- オフィス内は、パーティション、ロッカー等の配置点検を行い、採光の改善を図る
- キャビネ上や廊下等の照明は、支障のない程度に間引きする
- 時間外勤務を行う場合は、必要な箇所のみの部分消灯を実施する
- 最終退出者は、全体の消灯確認を行う
- 照明器具、ランプを年に1~2回清掃する
- 照明器具にプルスイッチを取り付けて、個別に消灯できるようにする
- 照明が必要な場合には、できるだけスタンドライトを利用する
- 机の配置・作業スペース見直しにより、既設照明を最大限利用する
- 同一水準照度を要求される業務の席配置を接近またはグループ化する
- 高い照度を必要とする業務は窓際近くに配置し、窓側の照明を消灯する
空調設備の節電方法
- 設定温度を変えて、適正な温度管理を行う
- 空調運転時間の短縮を行う
- 外気取入れ量の適正化を図る
- 空調室外機の設置を改善し効率化を図る
- 空調機の点検・清掃を行い、空調効率を維持する
- ブラインドを活用して、夏場の遮光、冬場の採光を図る
- 高効率空調機を導入して、高い節電・省エネ効果をあげる
工場の節電・省エネ対策
工場は様々で電気やエネルギーの利用形態も個々に異なります。従って、節電・省エネ法として一概なことは言えませんが、共通的な対策法の例を以下に示します。
- 工場での節電方法の前に、従業員の意識改革が重要です
- 計画と電気の見える化を行う
- 空調設備は1度変化させるだけで10%の節電効果があると言われています
- 照明は節電効果が高いLEDにする
- 工場の稼働時間の見直し、節電・省エネ効果を上げる
- デマンドコントローラーで監視して、節電・省エネを図る
- 外からの熱を遮断し、空調効果を上げる
- 排水処理施設の稼働を夜間にシフトするなど、安価な夜間電力を利用する
- 可能であれば、曝気槽のブロワの間欠運転を行う
- コンプレッサーの圧力設定を適切にする
- 太陽光発電を導入し、電気料金の削減を図る
- 再生可能エネルギーの有効利用のために蓄電装置を導入する
- 電気契約プランを見直し、電気料金の削減を図る
メリットの多い省エネルギー診断
製造業等において本格的に省エネルギーに取り組む場合は、事前に省エネルギー診断を受けることが望まれます。省エネルギー診断は、工場等全体の電気および熱のエネルギーの使用状況や設備の運転状況を調査して、その調査結果に基づき効果的な省エネ対策を提案するものです。
企業は省エネルギー診断を受けることによって、設備・機器の最適な使い方、メンテナンス方法の改善による省エネ温度、照度など設定値の適正化、高効率機器への更新、排熱等エネルギーロスの改善、有効利用、太陽光発電など再エネ設備導入提案などを受けることが出来ます。
国や公的機関、自治体等で無料や一部補助などで省エネ診断を支援しています。省エネ関連の補助金に省エネ診断がセットになっている場合もあります。もちろん、補助金などに頼らず民間のエンジニアリング会社などに、有料で診断を依頼することもできます。
節電・省エネ、補助金等の活用術
国、公的機関および自治体等において、企業の節電・省エネ対策に様々な支援が実施されています。その支援は多岐にわたり、補助金の支給、助成金の支給、融資金の支給、税の優遇措置などです。
国の省庁では、経済産業省、国土交通省、農林水産省、環境省で実施されているエネルギー温暖化対策、脱炭素対策、省エネ推進、再生可能エネルギーの推進などを目的としているものの中には、節電や省エネルギーを推進するものが多く含まれています。
補助金等を活用する場合に留意するべきことは次の通りです。国や自治体等の補助金は原則として年度単位で実施されます。従って、年度の初めに募集し、予算が埋まり次第に募集終了のケースが多いです。まれに、募集に準備期間が必要な場合もあり、募集が夏以降になるケースもあります。前年度の例などを事前によく調べておき、4月、5月頃の年度初めに素早く応募することが望まれます。もちろん、通年で募集している補助金もあります。
なお、補助金は要件が満たされていると誰もが受けることができ、助成金は審査の結果、競争的に選ばれた申請に対して助成される、というような説明もあります。ただ、この仕訳はあまり厳密に実施されているわけではありません。また、補助金、助成金は、必ずしも節電・省エネに必要なすべての費用が出される訳ではありません。一部の補助もしくは助成という場合が多いです。
さて、補助金用の予算獲得に、同じ名目、内容で何年も続けることは一般にありません。しかし、重要な補助金や助成金は、数年ごとに名称や内容の一部を変えて継続して実施されるケースが多いです。数年ごとに、社会の変化に対応して補助金や助成金の内容が変わっていきます。
国、地方自治体、公的機関等から、現在数多くの補助金、助成金が出されています。インターネットで検索することができますので、補助金や助成金を受けたい場合は調べてみて下さい。
節電・省エネはカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの推進にもつながります。企業においては各種の補助金や助成金をうまく活用し、一層の節電・省エネを達成して下さい。そして、企業活動のコストダウンを図るとともに、現在の厳しい経済環境を乗り越えて企業の新たな発展を期待致します。
進藤勇治しんどうゆうじ
産業評論家
経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…
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