『職場の空気づくり』として、前回お伝えした「上司の心構え」ができたら、次はその思いを具体的にメンバーに伝えていかねばなりません。これが組織の『ビジョン』になります。ビジョンづくりに際し、リーダーは自分の頭を整理し、誰でもわかりやすい言葉、イメージしやすい言葉に落とし込む必要があります。JR東日本テクノハート テッセイさんの例をみると、次のような言葉です:
『新しいトータルサービスを目指して』
これは皆が進むべき方向を示す道しるべのようなものです。しっかり推敲し、わかりやすいものにしましょう。ビジョンはあえて抽象的なほうがよいです。なぜなら具体的すぎると、メンバーが「それってどういうことだ?」と自分で考えるスペースを奪ってしまうからです。ビジョン設定の目的は、組織の方向性を示すだけでなく、メンバー各自が、それについて自分の頭で考え始めるきっかけを与えているのです。この意義について、まだ言及した本は少ないように思われますが、組織改革を進めていく上では、欠かせないプロセスです。
組織改革でよく失敗するケースは、このプロセスをとらず、一方的にトップダウンでリーダーが会社のビジョンを伝え、各自に考えさせる時間をとっていません。これでは、各自が自分の思いを重ね、心に浸透していくことができないのです。社員の自主性を育むには、この段階から全員を巻き込き、「自分も考えたぞ」という当事者意識を醸成していくことが効果的です。
さて次にすべきは、日々の行動の指針となる「行動指針」の作成です。これはメンバーにつくってもらうのがよいかもしれません。トップから押しつけられたものより、自分たちで作り出したルールのほうが、人は守ろうとしますから。それでも、リーダーとして「これはしてほしい」「これだけはやめてほしい」という要望があるでしょう。それらは彼らが作ったルールの最後に「これも入れておきたいのだが、どうだろう?」とそっと入れ込むのがよいでしょう。ここで優先すべきは、彼らの自主性なのです。リーダーはすべて自分の思い通りにしたいと思うかもしれませんが、それは結局、恐怖政治でしかなく、メンバーが自主的に行動していることにはつながらないのです。
さあ、ビジョンや行動指針ができたら、それらを『見える化』しましょう。ポスターボードを制作して壁に掲げたり、名刺サイズのカードにして各自のお財布に入れてもらったり、またトイレや給湯室など、メンバーの目に触れるところにその言葉を顕在化させるのです。子供だましと思うかもしれませんが、実はこうした小さな積み重ねが、一人一人の意識に働きかけ、それがやがて『場の空気感』につながっていくのです。
次回は、「職場の空気のマネジメント~トップがとるべき行動」です。どうぞお楽しみに。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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