昨年4月からコラムを連載させていただきましたが、いよいよ今回で最終回となりました。ワーク・ライフバランスに取り組む必要性や具体的な取組内容についてお話してまいりましたがいかがでしたでしょうか。
昨秋から世界的な不況が日本企業にも暗い影を落としています。そうした流れを受け、当初はワーク・ライフバランスに関する取り組みも終息してしまうのでは、と懸念した時期もありました。しかし、予想に反して今でも多くの企業から講演やコンサルティングのご依頼をいただいています。おそらく、ワーク・ライフバランスが企業にとって「福利厚生」「単なる人事施策」と位置づけられていた時期を抜け、限られた人材の能力をいかに引き上げていくか、時間当たりで出せる付加価値を大きくしていくか、といった企業経営の根幹にかかわるまさに「経営戦略」としてとらえる企業が増えてきた表れではないでしょうか。
苦しい経済状態の中、長時間労働が企業経営を圧迫している状況を脱するために「ワーク・ライフバランス」という考え方を取り入れている企業も多くあります。たとえば、若手一人ひとりの能力が伸びるような新たなマネジメントスキルを管理職が身につけたり、誰しもが明日突然会社を休む事態を抱えていることを考えて、日頃から情報共有を行ったり、プロセスの多い/煩雑な仕事を徹底的に洗い出し、機械化・効率化を進めていったり、多種多様な取り組みが見られます。
また、こうした状況だからこそ「人に投資する」という考え方で、今までは目の前にある仕事をただこなすだけだった時間に対して「教育」という要素を加え、若手・後輩の育成に力を注ぐ企業や、社外での積極的な自己研鑽を支援する企業もあります。
いずれの場合も、ワーク・ライフバランスを「自分には関係のないことだ」と他人事のようにとらえず、企業にとっても社員にとてもメリットのあること、いわば「WIN-WINな関係」をもたらすものと考えられるかが成功の鍵になります。
第1回でもお伝えしたように「ワーク・ライフバランス」にはまだ様々な誤解があります。
「『ライフ』を得るには『ワーク』をないがしろにせねばならない」、「ゆとりをもって働くことだ」・・・いずれも本当のワーク・ライフバランスとは異なります。ライフで得た人脈や経験、アイデアをワークで活かして高い成果を上げる、そんな好循環を生み出すことが今後の日本人にはさらに求められるでしょう。そうした働き方を実現するにはシビアな壁も多々立ちはだかっています。しかし、「明日は我が身」という主体性とポジティブさを持っていれば実現不可能ではない、と私は信じています。
ぜひこのコラムをご覧いただいた皆さまにもそれぞれのお立場・職場で、明日のワーク・ライフバランス実現に力をお貸しいただければ幸いです。(終)
小室淑恵こむろよしえ
株式会社ワークライフバランス代表取締役社長
ワーク・ライフバランスコンサルティングを900社以上に提供している。 クライアント企業では、労働時間の削減や有給取得率の向上だけでなく、業績が向上し、社員満足度の向上や、自己研鑽の増加、企業内出生率…
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