第8回「Z世代の人たちは仕事をしないのか~続編~」
前回、Z世代の若者について書きましたが、インタビューしたH君はとても優秀で典型的なZ世代の人とはイメージが少し違いました。その一方でほかの仕事の関係で保育園の先生方とお話する機会があり、この話題を振ってみたところ、まさにそれ!と思わせるような事例がありましたので、今回はそれについての考察です。
以下はその聞き取った内容です。
頼んだのに忘れてしまう…
“入社1年目の女性保育士ですが、仕事に対してまったく責任感がなく、何度言っても覚えてくれません。あるとき、保護者向けのお便りを決まった曜日に配布しなければいけないのですが、それを忘れたことがありました。しかし、その若い保育士さんは、忘れたことも報告すらせず、また忘れたことについてもまったく反省の色もなくケロッとしているのです…”(ある保育園のベテラン看護師さん)
こうした事例、実は決して珍しいケースでもないようなのです。ほかの保育士さんに聞くと「そう、前にも言ったのになあ…ってことよくある」と。私たちの感覚ですと、それをしなかったらどうなるか、親御さんにも迷惑がかかるし、絶対に忘れてはいけないと責任をもってするはずだ、と思うのですが、どうやらそうではないのです。
Z世代の子たちが全員そうとは言いません。ただそういう子がちらほらいるというのは確かなのです。こうした子たちには想像力が欠けているようです。つまり、「これをしなかったらどうなるか」という部分ですね。確かに最近若者の「闇バイト」の犯罪事例などをみても「これをしたらどうなるか」の想像力が無さすぎる。つまり先を予測する能力です。
メタ認知力がないのかも
先日子供の習い事で配られるお便りに「メタ認知力」のことが書いてありました。メタ認知力とは、自分がしていることを客観的にとらえる力のことで、いま自分は何ができていないか、目標に到達するにはどうすればいいのかを考えられる力のことを言います。このメタ認知力は、10-12歳ほどの時期に成長するといいます。そしてそれは親との会話「今日学校でどんなことがあった?」「それでどう思った」という中で育まれる、ということでした。
思うに、先の事例にあてはまるような子は、幼少期にこうした時間があまりなかったのではないか。家に帰っても親は忙しく、インターネットでYouTubeばかり見ていたりしたことがひとつの原因にはなっていないか、と勝手に想像してしまいます。
原因はいずれにしろ、どうしたらこうした子を指導できるのでしょうか。叱ってもダメだし、優しく言っても伝わらない。悩ましいですよね。するとあるベテランの先生から意外な一言が。
「私は、一度言ったことができなかったときは、“あれ、ごめんね。私言わなかったかなあ。言ったつもりだったのに…。ほんとはこうしてほしかったんだ”って言います」と。
つまり、たとえ自分が言っていても、言っていないかのようにふるまって非を自分のものにして「ごめんね」と言う。そして再度お願いすると。
うーん、この対応は想定外でした!でもここまですれば、相手は責められないし、またチャンスをもらえるので、気持ち的には楽なのかもしれません。こちらの気持ちはなんだか悶々としてしまいますが、相手に動いてもらうには達観するしかないのかもしれません…。
今回の事例を振り返ると、Z世代への対応の一つのヒントは「自分が思うよりさらに向こうへ降りていく」ことなのかなと感じます。ベテラン保育士さんの「自分に非があったように振る舞う」というお話は、私にとってだいぶ想像の向こう側でした。ということは、きっといま悩んでいる管理職の皆さんにとっても同じなのでは?(笑)やはり彼らの世代とうまく付き合っていくには、自身の想像の枠を超えることが必要なのかと思った次第です。
【まとめ:Z世代の人たちは仕事をしないのか?~続編~】
- 何度言っても覚えてくれない→決して珍しいケースではない
- 原因のひとつに「メタ認知力」が未発達も考えられる
- 相手を責めず自分の非にしてチャンスを再度与える
- 自分の想像よりもさらに向こう側へいく
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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