さて、前回までは「空気」のマネジメントでしたが、今回から人のマネジメントに入ります。人のマネジメントと聞いて、多くの人は「部下をうまく管理するにはどうすればよいか」と考えるでしょう。しかし、「管理する」という意識が強すぎると、人はまったく育たなくなります。なぜなら、それは本人の自主性を奪っているからです。上司がいくら的確で正しい指示を出し続けても、それは「現場を活かすマネジメント」ではありません。なぜなら、優秀な上司がいなくなれば、そんな組織はとたんに機能不全に陥るからです。
仕事を任せることには、いくつか意味があります:
新幹線劇場の名で一躍有名となった、株式会社JR東日本テクノハートTESSEI。そこで清掃チームの基盤をつくりあげた矢部輝夫さんは、自分が全員を教育し、自らの考えを700名もの従業員に伝えるのは時間もかかるし難しいと考え、コメットスーパーバイザーというサブリーダーを14名任命し、その人たちを通じて自分の考えを伝えてもらうようにしました。その役割を任されたサブリーダーたちは、自分のことを認めてくれたと感じ、やる気が上がります。そして、トップの理念を自分なりに噛み砕き、部下たちに伝えようと考えます。この考える過程が、仕事を「自分ごと」に変えるプロセスとなります。そして、こういう人が増えることでチーム力がアップするのです。また、現場のスタッフからしてみれば、遠い存在のトップから言われるより、短かなサブリーダーから言われたほうがわかりやすいことがあります(もちろん、激励の言葉などはトップが直接伝えたほうが効果的なこともありますので、使い分けが必要ですが)。こうして任せるという行為により、だんだん一人一人に自覚や責任感が伝わっていくのです。
『オルガナイズ・スモール』という言葉があります。「現場力」で知られる遠藤功さんが提唱する「強い現場の7つの条件」のひとつです。ぶら下がり人間をなくし主体性・責任感を持つ人を育てるには、組織を小さく分けよ、ということですが、研修を多くやらせていただく私も、このことは痛感しています。100人に向かってひとつのテーマを語りかけ、考えてもらうより、3-4人のチームに分け、それについて考えてもらうほうが、断然皆さんの参加度が違います。それは考える主導権を意図的に皆さんに渡しているからです。
リーダーの皆さん。一度に100人を管理しようとせず、まず集団を小さく分け、サブリーダーを任命し、そこに仕事を任せていきましょう。自分の理想と違う意見が出てきても、頭ごなしに否定せず、メンバーの自主性と自分の思いとのバランスをうまくとりながら、物事を決めていきましょう。「任せる」とは、現場を活かすためにとても重要なキーワードなのです。
※参考資料:
『現場力を鍛える 「強い現場」をつくる7つの条件』 遠藤功著 東洋経済新報社
『奇跡の職場』 矢部輝夫著 あさ出版
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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