第10回「働きやすい会社とは」
前回、いまの若者には忠誠心はなく、むしろ「働きやすい」からこの会社にいる、という説を述べました。今回は、その「働きやすさ」とは何かについて書いていきます。
企業を選ぶ観点は時代により変わります。昭和の時代は「給料の良さ、仕事のやりがい、福利厚生」などがポイントでしたが、いまは何といっても「働きやすさ」です。ではその働きやすさとは具体的にどんなことを言うのか。5つのポイントにまとめてみました。
1.給料
これはまず前提条件ですね。ここはある程度の水準を提示する必要があります。もっともいまの若い人は、お金だけがすべての選択基準ではないので、べらぼうに高くする必要はありません。ほかにも企業の社会的責任や勤務体系、職場の人間関係など選ぶ基準はいくつもあるのです。
2.心理的安全性
この会社では、上司と違う意見を言っても、否定されたり、変な目で見られたりすることはないという安心感が得られるかどうか、ここも選ぶ側にとっては大きな要素です。これはただ口でそれを言うだけではなく、きちんとそれをルール化し、制度設計もして、万一それに反する事案が発生した場合はちゃんと組織として対処できるところを見せる必要があります。最近よくニュースで、市役所などで行政の長が権力を盾にとって暴言を吐く音声などがよく取沙汰されますが、あれはまったく心理的安全性が担保されていない証拠ですね。
3.キャリアアップ
この会社で働くことで、どんなスキルや経験が身につくのか。若い人たちは自分の損得をとてもシビアに考えており、タイパ、コスパが悪ければスパッと辞めていきます。昔のようにずっとこの会社で…と思っている人はほんのわずかです。大谷翔平の移籍の際にはちゃんとした育成プランがあるはずですが、同じように「あなたがここで働くと、こんな環境の中でこういう力が身につく」というメリットを、今以上にはっきりと提示していく必要があるでしょう。
4.自由な働き方
働く時間を個人の都合によって変えられる、また働く場所も可能な限り選べる(自宅、避暑地からなど)、また長期の休みが取れる、子供の学校行事や急な病気、親の介護などにも柔軟に対応できる、大学に入りなおしたり、海外留学しても復帰できるなど、いままでになかったような制度設計が求められてくるでしょう。それにはノウハウや顧客情報が人にたまるのではなく組織に残り、それをデータとして全員で共有できるしくみや、1つの仕事を複数で担当するジョブシェアリング制度なども導入していかなければなりません。
5.正当な評価
年功序列にのっとり長くいるだけで何も仕事をしない人がのさばっている会社では、若い人が評価されずどんどんといなくなります。ここも制度を見直し、個人の能力に応じてお金がもらえるようなしくみにすれば、若い人も頑張りがいがあるというものです。またつねに上司は自分を見てくれているという安心感は承認欲求の満足にもつながります。
いかがでしたでしょうか。昔はそれこそ「お金、仕事のやりがい」などが企業選択の第一理由だったことを考えるとまさに隔世の感があります。会社そのものが今後も持続可能な組織であり続けるためには、いまの時代の価値観、若い人の価値観に合わせて変わっていかねばなりませんし、それができない企業は人が入ってこない=存続できないということになり兼ねません。ぜひ皆さんの会社も、いまの時代に合わせて「働きやすい」かどうかを調べてみてください。
【まとめ:働きやすさの5つのポイント】
- お給料・・・ある程度の水準を満たしているか(これがすべてではない)
- 心理的安全性・・・上司に対し反対意見を言えるか。思ったことを言えるか
- キャリアアップ・・・自分が望むスキルや経験が身につくか
- 自由な働き方・・・時間や場所にとらわれずに柔軟に働くことができるか
- 正当な評価・・・やったことをフェアに評価してもらえるか
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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