日本企業の昇進(キャリアアップ)の前提として転勤や異動がそのプロセスになっているところも多く、またそれが若手にとって弊害となっています。20代後半から30代前半向け次世代リーダー研修では、自身のキャリアアップを考えると管理職を目指すことや、転勤して様々な経験を積むことは大事だと思っているが、一方でライフイベントのことを考えると、残業や急な異動や転勤があるのがちょっと・・・といった躊躇の声が上がってきます。転居を伴わなければ、異動することに対して決してネガティブなわけではないようですが、異動についてネガティブな印象もあるようです。講演や研修で上がってくるよくある声として
- 自身が意図しない急な異動に悩む。自身のキャリアを会社事情に左右される
または、異動願いを出し続けているのに、叶わない - 異動させられる際、自分はこの部署には必要ないのでは?と落ち込む
が挙げられます。
異動をより会社にとっても当人にとってもメリットを感じられるものにしていくにはどうしたらいいのでしょうか。
1.に関してもう少し細かい意見を拾ってみると、「折角今の部署での仕事にも慣れてきて、ここから自身も戦力として提案などをしていきたい、と思っていた矢先の異動命令。実績が積めないまま、浅い経験を点々とすることで将来が不安」「異動したいとずっと会社や上司に言い続けているのに、全く届かない。次に異動願いを出して叶わなそうだったら転職しようと動き始めている」
不安を感じ、組織にコミットできなくなっていき、やがて離職に繋がることも少なくありません。実際、会社に異動が叶わないのなら辞める、と辞表を出した途端に異動させてもらえた、なんて声も。異動を引き止めの手段に使う会社は実際にあり、私のところにキャリアカウンセリングに来られた方の中にも、異動願いを出しつつ、転職活動を平行して行っている方は増えています。「辞める、とまで言わないと異動させてもらえないんです」と。
では、2.に関してはどうでしょうか。これも細かい意見を紹介してみますと「あっちの部署の人手が足りないから、と言われた。人手が足りないのはわかるけど、うちの部署には自分は必要ないの?」「何の説明もなく異動。言われるままに異動したものの、今でもなんで自分が異動させられたのか、わだかまりの気持ちがずっと残っている」
そこで、ある企業の若手研修で、異動について皆さんどう感じている?という質問をしたら、異動=必要ない人材だから外に出す、といった印象を持つ人が非常に多く、それを聞いた管理職たちが驚いていたことがありました。というのは、管理職の人たち、特に50代以上は、異動には「昇進に繋がるジョブローテーション」と感じる人が多かったからです。(もちろん、異動先によって「左遷」とわかることもあった、とのご意見も)若手にとって、昇進に繋がるジョブローテーションと捉える人が少なくなって、印象として異動=左遷が強く残ってしまっているのかもしれません。(これってテレビの影響?なんて思ったりもしますが)
これからの世代の異動時には、大事なことはちゃんと説明することが必要なのではないでしょうか。1.も2.も共通して言えることが、説明を受けていない、という点です。異動の理由、異動先で何を期待されているのか、などです。以前は、社員が会社を辞めるということが前提にありませんでした。特に大手企業は定年退職までいるもの、と終身雇用が普通でした。そこに説明は必要なかったのかもしれません。今必要なのは本人の要望を聞くことと、説明です。
本人の要望については、残念なことにすぐには叶わないこともあります。その理由として、ポジションに空きがなく、すぐには難しいことと、本人の適性です。その点に関しては、伝え方を間違えずに話すことが重要ではないでしょうか。ずばり言っては本人のモチベーションが下がります。この時に大事なのは、適性の言葉の解釈を丁寧にすることです。なぜ今のあなたには難しいのかだけでなく、あなたならどう解決する?など、その部署における課題を投げかけ、その回答に対して今の経験では不足していることなど、そこから丁寧に説明するなどです。しかし、一方で周囲は適性がないと思っていたのに異動させてみたら見事に開花するなんてこともありました。逆に異動させてみたら本人が自分には向いていないことを理解した、なんてことも。実際にやらせてみることが必要なケースもあります。
また、メンバーシップ型組織では、会社都合による異動はあるものですが、最低限、本人の適性を見た上でアサインすることが大切でしょう。人手が足りないから、ではなく、向いている人をアサインすることを忘れないようにしたいものです。そして、異動の際の説明もこれまた丁寧に、です。それは本人の今後のモチベーションに大きく影響を与えるからです。折角次のステージで心機一転頑張るのであれば、前向きになれる説明をすることが重要ではないでしょうか。
人材不足の中、今、多くの企業が新しく人材採用することに苦戦しています。今在籍している人たちが前向きに活躍するために、何事にも丁寧な説明は欠かせません。何の説明もない、会社の事情だから、、上からの指示だから、は通用しないどころか、不信感に繋がっていきます。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
個人と企業からの依頼によるキャリアカウンセリングは、延べ17,000人以上の実績。学生からシニア層まで年齢や性別を問わず、自分らしいキャリアデザインをするための選択とアクションに向けたカウンセリングを…
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