3月3日と言えば、日本ではお雛祭りである。でも、降下を始めたANA機の眼下に広がってきたのは雪に覆われたヴァージニアの大地であった。機内の放送では気温はマイナス11℃、まるで極寒の地である。
さて、一年半ぶりのワシントン訪問だが、目的はある国際会議への出席である。米国のさる財団が世界から人を招き、COP15に向けての提言書を作るための会議である。その主催者曰く、「地球温暖化は予想を超えたスピードで進んでいる。残された時間は少ない。今こそ行動の時だ」として、COP15(ポスト京都―2013年以降の温暖化ガス削減のための国際的枠組みを作る会議。今年12月にコペンハーゲンで開催)の実のある成功のために、会議参加者や国際社会に一致して取り組むよう呼びかけるためのものである。
この会議に参加しての感想を2、3申し上げたい。第一は、このような会議の存在自体である。米国の財団はお金持ちだと言ってしまえばそれまでだが、この財団の財政支援があるとはいえ、世界から何の報酬も求めずに、各国の政府関係者、各分野の専門家、オピニオン・リーダー、NGOなどが2日間、地球を温暖化から救うにはどうすればよいのか、議論をするのである。勿論、参加者の意見が皆同じであるのではない。むしろ、違う意見、異なる国益をバックに発言するからこそ意味があるのだ。こんな会議を通じてこそ、お互いの立場をより良く理解することができるのである。それが尊いのである。
第二は、温暖化への危機感の高さである。この会議の議論の前提は、どうやって大気中の温暖化ガスの濃度を450ppm以下で安定させるかである。日本でも、温暖化対策は大きなテーマになってきた。もはや、避けて通れない。だが、国内での議論は、CO2を減らすには何をするか、そのコストはいくらか、といった議論が多い。忘れてならないのは、何のためのCO2削減か、どこに目標を置くのか、そういったことをしっかり共有することがすべての議論の前提になるのである。
第三は、地球的課題に取り組む国際連帯の精神である。日本にいると、国際的問題はいつも政府が行う仕事のような錯覚を覚えてしまう。勿論、その部分もあるが、多くの分野では、こういった民間レベルの絶え間ない交流があるからこそ、国家間の問題解決もうまく進むということに、日本人はもっと気がつく必要がる。非政府組織(いわゆるNGOとその他の民間組織)こそ、これからの国際問題解決には欠かせない存在なのである。
雪に覆われたワシントンの様々なモニュメントの中でも一際映えていたのがホワイトハウスであった。普段は芝生の緑とのコントラストが見事だが、売りの白さは、雪の純白の中でも全く見劣りしない。主が変われば、家までもがこんなに耀くものなのだろうか。
末吉竹二郎すえよしたけじろう
UNEP金融イニシアチブ特別顧問
東京大学を卒業後、1967年に三菱銀行(現 三菱UFJ銀行)に入行。1998年まで勤務した。日興アセットマネジメントに勤務中、UNEP金融イニシアチブ(FI)の運営委員メンバーに任命された。現在、アジ…
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