女性向けキャリアに関する企業研修や講演では、度々「自信がない」という声を耳にします。
周囲からすれば、全く問題なくできていると思われていることやスキルも、当の本人にとっては「まだまだ」と評価してしまうことも。例えば、新しい仕事へのチャレンジや管理職を目指すことを期待されている、という場面で「推薦してもらえることは嬉しいですが、なぜ私なのか……。自信がありません。自信が持てたらその時チャレンジします」とおっしゃる方も。
自信ってどうやってもてるのか。私はこの問題を毎回突き付けられます。さて、私自身も、実は自信なんてありません。人のことを言っている場合ではありません。でも、それでも行動に移せることができるのです。自信はないけれど、行動できる。自分でもなぜだろう?と自己分析したことがあります。そこで答えが見つかりました。「案外私は自己肯定感が高いのでは?」
自信はないけれど、行動できる人とできない人の違いを様々な人をカウンセリングや研修で観察していると、ひとつの違いがわかりました。それは「自己肯定感」です。自己肯定感が高い、というと、自信満々な人を思い浮かべる人も多いと思いますが、言葉の正確な意味を調べてみると、ありのままの自分を肯定していることで、「誰かの役に立っている」「自分は何ができる」ということではなく、どんな自分でも今も過去も受け入れて赦している状態のことだそうです。ちなみに許可するということではなく、「赦す」は、過去にしたり言ったりした失敗も受け入れていることです。
(参考:宮崎直子『鋼の自己肯定感 ~「最先端の研究結果×シリコンバレーの習慣」から開発された“二度と下がらない”方法』,かんき出版,2022年)
つまり、自信が持てない自分も受け入れている状態です。私は自信がないですが、おそらくそんな自分を受け入れているのだと思います。しかし、若いころはそうではありませんでした。転機となったのはキャリアカウンセラーの職業を目指したことです。この仕事を担うためには、まず自己理解が重要です。自分のことをきちんと受け入れないと人のサポートなんてできないからです。ですからカウンセラーは徹底的に自己と向き合わなくてはなりません。とてもいい経験でした。
自己有用感、自己効力感という言葉があります。まず、自己有用感ですが、「自分は誰かの役に立っている」「周囲に貢献できている」「もっと人の役に立ちたい」などです。これは外発的動機といって周囲の期待に応えようと頑張ったり、周りの役に立っていると幸せを感じたりする力です。ただ、この力は、自己肯定感が低い場合、周りから頼られなかったり、ありがとうなど感謝のフィードバックがなかったりするとたちまち落ち込みます。私は必要ないのではないか……という風に。ですので、一生懸命周囲の期待にこたえなくちゃ、と自己犠牲型になってしまうことがあるのです。もうひとつの自己効力感ですが、これも外発的動機です。「自分は〇〇ができる」「私は△大学出身である」「自分は部長である」「自分はお金がある」「目標がある」などです。持っているものや追いかけている夢があることで自信につながります。しかし、これも自己肯定感が低いと持っているものに頼ろうとします。例えば、ブランド品を持っていると自信が持てる、なんていうのもそうですし、自信が欲しいために一生懸命勉強したり資格取得したりします。この資格を手に入れたら私は自信がつくから。そんな風に思って資格取得したのに、まだ自信が持てなくて、次の勉強をはじめる、なんてことも。夢を語っているときも私には夢がある、と自信になります。でも、自己肯定感が低いと、一歩踏み出して失敗したら周りになんて言われるのだろうか、なんて不安になり、踏み出せないのです。
何事にも内発的動機となる自己肯定感がベースにあることで解決しそうです。
しかし、日本は内発的動機となる自己理解を深める機会が少なかったのかも知れません。学校時代も社会人になってからも常に自分との付き合いは続くのに。自分のことを理解し、受け入れないと自己肯定感は高まりません。弱い自分も自分である、と。一方で自己有用感、自己効力感が高まるような教育は行われています。人の役に立ちましょう、社会に貢献しましょう、いい大学に入りましょう、ビジョンを持ちましょう、と。
これからの社会、誰もが自律的に活躍するためにも、自己理解をし、自分を受け入れるための教育は欠かせません。そしてそれができてしまうと、私たちはきっと自分らしく、ラクに生きられることでしょう。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
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