思うように成果がでない、提案が通らないなど、仕事でうまくいかないことは誰にでもあります。キャリアカウンセリングでのご相談では、頑張っているのに空回りしてしまう方たちの悔しそうな声をたくさん聞いてきました。自らカウンセリングを受けたいとおっしゃる方は大抵、やる気を持っているご様子です。さて、相談を受ける際、私は様々な角度からその理由を探っていくのですが、うまくいかない理由は、大きく2つだとわかりました。
ひとつは経験不足です。そしてもうひとつは知識(知恵)不足です。
それぞれの「不足」を埋めるためのアクションは異なりますし、両方大事です。特に若手であるほど、経験不足は否めませんが、知識を学ぶことで埋められることがあります。そんなやる気のある若手が経験不足でつぶれないために、経験が少ないなかでも、どのような知識やモノの見方ができれば成果につながりやすくなるのか、をアドバイスするようにしています。
一方で、経験はあるはずのベテランなのに、成果が出せずに行き詰ってしまう方もいらっしゃいます。若手の頃からやる気をもってガシガシ働いてきたのに、中堅クラスになったときに躓いてしまうケースです。
私は現在、いくつかの企業のリーダー候補者研修を担当しています。半年から1年ほどかけて皆さんには取り組んでいただくのですが、講義ではインプット、実践でアウトプットをしながら過ごしていただきます。講義以外の活動では、チームで自社や関わる業界の課題を解決する、というテーマで動いてもらいます。
リーダー候補の方たちなので、経験はそれなりにあり、差はありませんし、やる気だってあります(自信の差はありますが)。経験があるということは、行動力もあるように感じます。しかし、受講者同士の差は「知識」です。自社や関わる業界の課題を解決するためには、目の前の問題の解決だけでなく、将来や取り巻く環境にも目を向ける必要があります。
実際、視野や視座に課題がある受講者はたくさんいます。例えば、「うちの会社はこんなことが問題なんです!だから会社は〇〇をしないといけないんです!」という提言。その発言をもとにリーダーとして必要な経営目線を身に着けてもらうためのセッションを行います。
なぜそれが問題だと思ったの?
なぜそれをしないといけないと思ったの?
この、「なぜ」の理由を聞くと、その人の知識がわかります。そこで、なぜ?を経営目線で考えられるように、会社を取り巻く環境、他社について、会社が目指す未来について、社会問題についてなど、これらの情報を持っているか確認していくと、足りない情報が見えてきます。そこに気づいたら、調べる、勉強することで知識が手に入ります。手に入れた知識から開けた視界で、もう一度自分があげた問題や課題(テーマ)を見つめなおしてもらうと、違う景色が見えてきます。一度見えた景色は、もとには戻りづらくなります。
リーダー候補研修では、本人たちの設定した問題やテーマについて、質問したり、ここは知っている?と考えてもらったり、教えたりを繰り返していくと、だんだんその人の発言が変化していきます。それは面白いくらいの変化です。
リーダーの見えている世界が狭いか広いかは、本人だけでなく、彼らが今後率いていくチームの成果、成長にとって非常に大事です。
経験から感じた問題点に知識をつけた上で提言や、解決をしようとすると、巻き込める対象者が変わっていきます。権限を持った上位者と目線合わせができるので、その人たちが納得すると、協力や採択をしてくれ、決定事項も増えていきます。
やる気をいい形で発揮してもらうためには、若手もベテランも経験を積むだけでなく、知識(知恵)をつけることだと、研修を通して感じています。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
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