2025年、世界の動きを予測すると、組織も個人も様々な変化に対応していくことになりそうです。
最近、この変化を受け入れ、それをチャンスにとらえる組織や個人が勝ち抜いていける、会社も変わっていく必要がある、それを変えていくのは社員の力だ、という話を年初にトップメッセージとして発信されているのを耳にします。
昨年、今年、とトップの方たちが発する共通のキーワードがありました。
Change、Chance、Challengeです。いわゆる4つのC(※)の内容です。
さて、皆さんは、このキーワードを聞いて、やってやるぞ!と意欲満々になりますか?おそらく、なる人とならない人に分かれるのではないか、と思います。特に日本は変化よりも伝統を重んじていくことを大切にしてきた国民性であるようで、例えばGiu‖ano and Nunn(2021)論文によると、「過去の気候の不安定さと現在の人々が思う伝統維持の重要性は、負の相関を示しているそうで、世代ごとに異なる環境を 経験した国に住んでいる人ほど、現在、伝統を維持することをあまり重要に思わない傾向がある。逆に環境が似通っていた社会ほど固定的になる傾向があることが示されている」とのこと。(論文抜粋)
日本は言わずと知れた、島国です。同一性の高い国で、ルールを守り、乱さない、伝統を重んじる、耐える、我慢する、ということを美徳とされ、ベースになっていることでしょう。そんな国民に対してチェンジ!チャンスだ!チャレンジしよう!!と言っても、正直響かないことがあります。
もちろん、これらを伝えることが、ダメということではなく、トップメッセージとしては、これからの2025年以降を乗り越えて成長していくためには、組織も個人も大切であることは誰でも理解していますので、伝え続けていかなくてはならない、大事な言葉です。
理解していることを社員が本気で行動にうつせるようになるには、どうしたらいいのでしょうか。
私はEQやビッグファイブという診断ツールを使って、人それぞれの行動特性、性格特性をはかり、アドバイスをするのですが、感覚として、上層部の人であるほど変化をチャンスだと思い、チャレンジしたいという気持ちにスイッチが入ります。社員に対してもその感覚を同じように求めるのですが、残念ながらそう簡単にはいきません。上層部の行動特性は、行動量が多い、つまり、課題をみつけたら解決するためのアクションを必ずする人が多く、もしできなかったらどうしよう、と不安になって立ち止まる前に体が動いています。そういった行動特性は、性格に起因し、もとから不安傾向が低い人が上層部には多い印象です。一方、社員はその逆の人が多い様子です。上層部は、なんでみんな動かないんだ!変わろうとしないんだ!ともどかしく思っているのですが、それは同じではないから、です。
変化しろ、と言われるほど恐れ、チャンスがあっても手を挙げづらい、そんな社員たちはダメなのでしょうか。そんなことはありませんよね。しかし実際、役員クラスの人で「うちの社員は不満ばかり言ってやる気がない、行動しようとしない!」とマイナス評価をされる方にお会いすることがあります。果たして不満ばかり言う人は、やる気がないのでしょうか。私が個別に社員と話をする限り、チャレンジして失敗したらどうしようと思っていたり、変化についていくのが怖いと考えていたりする。つまり、やる気がないのではなく、自信がない傾向が見られます。
このGAPを埋めるにはどうしたらいいのでしょうか。
最近、大手企業を中心にCHRO(Chief Human Resource Officer)という役割を置くようになりました。ご存じかもしれませんが、CHROとは、企業における最高人事責任者のことで、人材を戦略的にマネジメントし、人的資本経営をけん引するのがその役割です。従来の人事担当とは異なり、CHROには経営戦略に深く関与し、組織全体の目標達成に貢献することが求められ、採用、育成、評価、報酬といった人事戦略の立案・実行だけでなく、組織文化の構築、従業員のエンゲージメント向上、ダイバーシティー&インクルージョン推進など、幅広い役割を担っているのが特徴です。(日経ビジネス電子版2025年1月10日参照)
今までの人事部は、経営層に近いようで近くない、現場に近いようで近くない、といった位置付けだった企業も少なくありません。CHROは経営幹部の一員、経営層と横並びです。経営層の意向を把握し、対等に議論する存在です。
このCHROを担う人に必要なスキルは、EQ力です。EQ力とは、感情知能指数で、組織の中で活用するためには、自身や相手の感情の変化やなぜそのような感情になっているのかを理解し、それを組織にとっても本人にとってもより良い形で成果につなげていけるスキルです。
上層部と現場では、意識の差がありますが、それを埋めるCHROは、両方の状況、気持ちを理解し、組織としての成果を出すことができる人ではないでしょうか。社員を評価する前に、相手の心の中を理解し、受容する、感情スキルが高いことが大事であるといえます。
CHROの存在が効果を出しはじめている組織例はいくつかあります。しかしまだまだ試行錯誤中。誰もができる役割ではありません。ロールモデルが増えていくことを願っています。
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※「4つのC」とは、Change(チェンジ)、Chance(チャンス)、Challenge(チャレンジ)、Communication(コミュニケーション)のこと。
藤井佐和子ふじいさわこ
キャリアアドバイザー
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