さて、「人」のマネジメントの最終回は「反発分子をどう扱うか」です。どの組織にも、「ちょっと扱いにくいやつ」「言ったことに必ず反対するやつ」というのがいるものです。
この人物をどう扱うかによって、現場のマネジメントが180度変わってきます。まずはその人物をマイナス要因ととらえず、組織を変える重要人物と思いましょう(そうすれば少しは気が楽ですよね!)。
反発している、ということは、裏を返せば、周りに流されずちゃんと自分の主義主張があるのです。使いようによっては力を発揮するタイプなのです。
身内の話で恐縮ですが、今は亡き父が生前、大手百貨店の社長に就任したときのこと。父は生え抜きではなく、グループ会社からいきなりトップに座ったので、就任当初は誰一人として味方はおらず四面楚歌の状態だったようです。
そのとき、父はAさんというある人物に目をつけた。Aさんは、婦人服のバイヤーだったのですが、社内では変わり者で、上司には事あるごとにたてつき、はたから見れば出世街道から外れた人物でした。あるときなど、Aさんは、自分のやり方にそぐわないと、長年取引していた超大手の衣料品メーカーを切ることも辞さなかったそうです。そんな噂を聞きつけた父は「こいつはおもしろい」と彼に改革の大役を任命し、取締役に抜擢。Aさんは見事、百貨店改革の重要人物として生まれ変わり、リーダーシップを発揮したそうです。この話を思い出すたび、反発分子のエネルギーの方向を変えさえることの大切さを感じます。
また、組織内に悪い空気をまき散らす諸悪の根源のような人がいます。クライアントの悪口、愚痴、ネガティブ発言など不満のオンパレード…これでは周りの士気も下がってしまいますよね。直接忠告するとへそを曲げたり、扱いにくい存在です。
こうした人に一番効くのは、部署全体でそうした空気を許さない、マイナスの発言が浮いてしまうようなしくみをつくることです。たとえば、毎日、プラスの出来事を報告しあい、皆で認め、たたえるミーティングをして、スタッフの視点をプラスに強化する。また上司が部署のプラスのスローガンを壁に掲げ、プラスのムードを大切にしていることを見える化する。部内でマイナスの発言を言った人は箱に罰金100円を入れ、月末の飲み会の足しにする、など。周りのメンバーにも、本人のマイナス発言はできるだけスルーするように伝えておきましょう。一人マイナスがいても、三人がプラスの力があれば、マイナスの空気を打ち消すことができるはずです。
どうしてもマイナスの態度が改善されない場合は、個別面談をしましょう。そのときも伝え方に工夫が要ります。頭ごなしに叱責せず、よいところ2つ、悪いところ1つ、くらいのバランスで「君はとても周りに影響力があるので、今度○○をやってほしい。また、ぜひ我が部が大切にしているスローガンを守ってはくれないか」と伝えてみてください。
反発分子がいない組織など稀です。そのベクトルの向きを変えるのも大切なマネジメントの仕事のひとつなのです。
さて、次回から「制度」のマネジメントのお話になります。初回のテーマは「パフォーマンスを管理する」。どうぞお楽しみに。
川村透かわむらとおる
川村透事務所 代表
「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…
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